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ただひたすらに肉を食う!

 シルヴァ達にお供えした後、空のお皿を持ってステップを踏みつつ待ち構えていたシャムエル様にお肉を先に好きなだけ取ってもらい、おにぎりも丸ごと一つお皿に乗せてやった俺は、改めて手を合わせてから残った自分の分を食べ始めた。



「何この肉、めちゃめちゃ美味いんだけど」

 そして一口食べるなり、そう呟いて目を見開いたのだった。

 だって、例えばこのハイランドチキンのもも肉のぶつ切り。単に塩とスパイスを振って焼いてあるだけなのに、とにかくジューシーさが半端ない。もうプルップルのふわふわ。

 いつも食べてるのも十分過ぎるくらいに美味しいと思ってたけど、これはそれと同じ肉とは思えないくらいにとにかくとんでもなく美味しいのだ。



「って事は、もしかして……こっちのグラスランドブラウンブルの肉も……?」

 そう呟いて、大振りのサイコロステーキ状態の肉を一つ箸で摘んで口に入れる。

 そしてまた、あまりの美味しさに悶絶する事になったよ。

「何これ、俺の記憶にある最高級国産牛の霜降り肉よりはるかに柔らかくて美味いぞ。いつも焼いてる肉と同じなのに、どうしてこんなに違うんだ?」

 見ると、無言で肉に齧り付いているシャムエル様の尻尾も大興奮状態になってて、いつもの三倍くらいに膨らんでいるので、シャムエル様もこの美味しさに感動している模様。



「何が違うんだ? やっぱり焼き方か?」

 もう一口ハイランドチキンの肉を口に入れてしみじみと味わい、小さくそう呟いて振り返った。

 そこには、早くもおかわりを求めて列を作っているスタッフさん達に、笑顔で焼いた肉を盛り付けている魔女の婆さんことマンマがいる。

「やっぱり焼き方なのかなあ? 後でこっそり聞いてみようっと」

 密かに感心しつつ、俺は黙々といつも以上に美味しい絶品肉を味わって食べた。



 絶対多いと思ったけど、あっという間に山盛りにあったお肉は空になった。焼きおにぎりはまだもう少し残っているけど、とにかく肉が欲しい。

 空になった肉用のお皿を手に、俺は当然マンマの列にもう一度並んだ。

 そして、並んでいる間にマンマの様子をじっくりと観察した。そして、恐らくだけど俺の焼き方との大きな違いを発見した。

「ああ、どうやってるか分かった気がする。絶対あれだな。ううん、だけどどうやればフライパンで再現出来るかなあ?」

 マンマの手元を見つめながら小さく呟く。

 要するに、強火と弱火を一枚の鉄板の中で使い分けていたのだ。

 マンマが使っている焼き台は、ちょっとしたテーブルなんかよりも大きな鉄板が乗せられていて、例の業務用の火力の強いコンロが鉄板の真ん中あたりを強火で熱している。

 マンマはまず、その真ん中部分で生の肉を広げて表面を一気に焼いている。焦げ目がついたら中心から離れた横へ避けて広げ、また真ん中には次の生肉を乗せてる。

 中心から離れた箇所は、いわば弱火になっているわけで、次の肉に焦げ目がつく頃にはじっくりと真ん中まで余熱で火が通ってる。最後にもう一度真ん中に近い箇所で表面を一気に焼いてそのままお皿に取り分けてる。

 強火、弱火、最後にもう一回強火。

 俺が提供した、ハイランドチキンのもも肉と、グラスランドブラウンブルの肉を交代しながらひたすらリズム良く焼いているのだ。

 お年を召していてもさすがはプロ。

 所詮は素人料理の俺とは肉を焼く手つきが違う。

 肉に塩を振る動作にすらリズムがあって、全くと言っていいほど全ての動きに無駄が無い。



 感心して密かに見惚れていると、いつの間にか俺の順番になってた。

「ほれ、早駆け祭りの英雄殿。何ぼさっと突っ立ってるんだい?」

 からかうようなマンマの声に我に返った俺は、慌てて持っていたお皿を差し出した。

「ああ、失礼しました! お願いします!」

「ほらよ、疲れてるんならしっかり食いな」

 お皿を受け取ったマンマはあの魔女の笑い顔と共にそう言い、またしても豪快に焼き立てのお肉各種を山盛りに盛り付けてくれた。しかも今回は大きなウインナーまであったんだけど、これまた皮が弾けてめっちゃ美味しそうだ。

「ありがとうございます!」

 受け取る時に元気よくそう言い、空になったお皿を持ってステップを踏んでいるシャムエル様の元へ早足で戻った。

「はいどうぞ。ウインナーは一本だけだから半分こな」

 収納してあったカトラリーを取り出し、ウインナーを半分に切って大きい方をシャムエル様のお皿に入れてやる。ウインナーからあふれる肉汁に、俺は思わず唾を飲み込む。

「うわあい。このお肉って、ケンが提供したいつものお肉だよね。何だかすっごく美味しい気がするんだけど、気のせいかなあ?」

「いや、気のせいじゃないと思うぞ。それは俺も同じ事を思ってる」

 大真面目にそう言って頷き、俺も半分に切ったウインナーに齧り付いた。

「ふおお〜〜〜〜! これまた美味しいのきました〜〜〜!」

「めっちゃジューシー! 肉汁たっぷりで、美味い!」

 揃ってウインナーを齧った俺達は、もう二人して感動に打ち震えていたよ。

 いやあ、師匠の時にも思ったけど、やっぱりプロってすげえ。

 満面の笑みで頷き合った俺とシャムエル様は、その後はもうひたすら黙々と食べまくり、絶品な焼き加減の美味しい肉を味わい尽くしたのだった。



 いやあ、やっぱり祭りの最後はこうでなくちゃね。

 打ち上げ最高!

 肉は正義だね!

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