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お疲れ様でした!

「お疲れ様。すごい人気ですね!」

 聞き慣れた声に見張り台として使ってる踏み台の下を見下ろすと、リナさんとアルデアさん、それからアーケル君が揃って笑顔で手を振っていた。

「ああ、お疲れ様。お陰様で思った以上の大好評みたいですね。あれ、従魔達はお留守番かい?」

 彼らの周りに従魔達がいないのを見てそう尋ねる。

「うん、この人混みだと、ちょっとお邪魔かと思って神殿の厩舎で留守番してもらってる。午前中に来た時は、皆さん忙しそうだったから声をかけなかったんだけど、せっかく差し入れを持って来たんだから、一応言っとこうと思ってさ」

「あれ、そうなんだ。ありがとうな」

「本部に行った時にエルさんから聞いたけど、すごい差し入れの量だったんだってね。きっと俺たちが差し入れたのなんて、埋もれて気づかれてないと思うけどさ」

 おかしそうにそう言って笑う三人を見て、俺は収納してあったエルさんから貰った差し入れリストをこっそり取り出して見た。

「ああ、お菓子を差し入れてくれてたんだ。そっちは終わってから皆でもらおうと思って、まだ全然食べてないんだ」

 その言葉に驚く三人に、俺は手にしたリストを見せて笑った。

「エルさんから、誰が何を差し入れてくれたかってリストを貰ってたんだよ。確かにこれが無かったら、誰が何をくれていたのかなんて、俺にはさっぱり分からなかったと思うけどさ」

 納得したらしく、三人が同時に笑いつつも揃って何度も頷いていたよ。




「何か手伝えることがあれば手伝うけど? 休憩はちゃんと取ってる?」

 アーケル君に続いて、リナさんもこっちを見上げながら揃って頷いてる。

「うん、ありがとうな。大丈夫だよ。俺はご覧の通り見張ってるだけだし、ハスフェル達は交代で休憩取ってもらってるからさ」

 笑った俺の言葉を聞いて、手を振った三人はそのまま近くのスライムトランポリンに並んだ。

 自分のスライムがいるんだから、いつでも出来るのにと思ったけど、見ているとアーケル君は楽しそうに周りの人達と話をしてるし、リナさん達もずっと笑顔だ。

 確かに、これは自分達だけでは絶対に出来ない事だよな。

 せっかくの年に一度のお祭りなんだから、この、賑やかな場の雰囲気を楽しむのも祭りの醍醐味なんだって。

 順番が来て、隣に並んだ子供達と一緒にスライムトランポリンに飛び込んだアーケル君とリナさんの賑やかな笑い声がここまで聞こえて来て、俺まで一緒に笑っちゃったよ。

 楽しそうで何よりだよ。




 結局アーケル君達は、俺が見てるだけでも三箇所のスライムトランポリンを順番に周り、最後は俺のすぐそばにあるミニトランポリンコーナーに来て、こちらも順番に三匹、二匹、一匹と乗ってはその度に大喜びではしゃいでいた。

「おいおい、一体何枚チケット買ったんだよ」

 呆れてそう呟きつつ、ようやく少し減ってきた公園の人達を見回す。

 屋台で何か買って家路を急ぐ人もいれば、まだまだやる気満々で別の列に並びに行く人もいる。

 明らかに街の人達とは体格が違う冒険者の野郎共もあちこちに見かけるので、あいつらもまだまだ遊ぶ気満々みたいだ。

 それに比べて小さい子供連れの親子は明らかに昼間よりも減って来てもうほとんど見かけなくなってる。

 まあ、子供の体力を考えたら、そろそろお帰りの時間なのだろう。

 だけど、中にはまだ乗りたいとスライムトランポリンの横で座り込んで大声で泣き叫びながら駄々をこねる子供もいて、保護者と思しき大人が側で疲れ切って座り込んでる。こちらも中々に大変そうだ。頑張れ。

「異世界でも、人のやってる事なんて基本的には同じなんだなあ」

 不意にそう思って小さく呟いたら何だかおかしくなって、俺は笑いそうになるのを必死で堪えてたよ。

 そんな感じでこっそり人間観察も楽しみつつ、人が少し減ってきて平和になった会場の見張りを続けていた。



「ただいまをもちまして、チケットの販売は終了いたしました。払い戻しはありませんので、まだチケットをお持ちの方はお早めのご利用をお願いいたします」

 例の早駆け祭りの時にも使っていた拡声器みたいなので、エルさんがチケット販売の終了を知らせる。

 あちこちからブーイングや残念がる声と共に、拍手と笑い声も聞こえてた。

 それを聞いて慌てたように列に並ぶ人達もいてちょっと笑っちゃったね。

 まあ、払い戻し無しって言われたら、余ったチケット持ってたら必死で並ぶよな。時間は有限だぞ。頑張れ。




 その後、夕刻の鐘を合図にスライムトランポリンの受付終了のアナウンスが流れて、会場は残念がる声や悲鳴と共に拍手に包まれたのだった。

 一応ギリギリ時間内に並んでもらった人には、何とかスライムトランポリンを楽しんでもらい、ようやく最後のグループが終了した時には、もう西の空は真っ赤に染まっていた。

「終わった〜〜〜〜! お疲れ様でした〜〜〜!」

 両手を上げて見張り台の上で叫んだ俺の大声に、周りの人達の笑う声と共に、またやってくれって声が掛かって俺も笑顔で手を振り返した。



 立って見張りをしていただけで、特に走り回ったりした訳じゃあないんだけど、結構疲れてる自覚はあったので、大きく伸びをして腕を回して強張った体を解す。

「お疲れ様。皆、楽しそうだったね」

 不意に現れたシャムエル様の声に、俺は腕を下ろして右肩を見る。

「おう、何とか大きな事故も問題も無く終わったみたいだな。全然見なかったけど、何処へ行ってたんだ?」

 何気なく聞いたんだけど、何故かシャムエル様に呆れたような目で見られた。

「これは収穫祭だって覚えてる? 私はずっと神殿の祭壇にいて、祈りを捧げてくれる人達を見たり、供えてくれた収穫物に祝福を与えたりしてたんだからね。もうヘトヘトだよ。夕食は肉をリクエストします!」

 何故かドヤ顔でそう言われて、そういえばこれって収穫祭の出し物だったなあ、なんて、のんびり考えてる俺だったよ。

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