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スライムトランポリンは大好評!

「はい、危険ですから走らないでくださ〜い!」

「ご利用を希望するスライムトランポリンの列にお並びくださ〜い!」

「スライムトランポリンにお並びの際には、前の方との距離をできるだけ詰めてお並びくださ〜い!」

「奥のスライムトランポリンは比較的並んでいる人が少ないですよ〜〜ここで立ち止まらずに、そのまま奥へお願いしま〜す!」

「小さいお子様用のミニサイズの列はこちらになっておりま〜す。大型のスライムトランポリンの列とお間違いのないようにお願いしま〜す!」



 ものすごい勢いで公園に雪崩れ込んで来た冒険者達は、手慣れたスタッフさん達の案内であっという間にあちこちに散らばっていなくなってしまった。

 若干の時間差をおいて走って追いついてきた一般の人達が、これまたスタッフさんに止められてあちこちに並びに行ったよ。

 いつの間にかギルドのスタッフさんの数はさらに増えていて、クーヘンの店の大行列を整列させていた移動式のロープ付きポールが導入されていて、それぞれのスライムトランポリンの横に出来た大行列を手際よく整列し直ししてくれていた。

 あまりのものすごい人混みに、何も出来ずに驚きのあまり呆然と立ち尽くすだけの俺達と違い、商人ギルドと農協から急遽派遣されて来てくれた増員のスタッフさん達の働きっぷりは、もうさすがというより他なかったよ。いや、まじでギルドってすごい。



 そして、スライムトランポリンは、もうこれ以上ないってくらいの大盛況だったよ。



 大人も子供も関係なしに、乗った人達全員が大喜びで歓声を上げて大はしゃぎしている。ポヨンポヨンと大きく跳ね飛ぶ度に聞こえる喜びの悲鳴と歓声。

 大はしゃぎしている賑やかな女性や子供の、キャーキャーとしか聞こえない嬉しそうな悲鳴。そして野郎どものむさ苦しくも図太い低い声の悲鳴。それなのにはしゃいでるのが分かるって、それはそれで面白いぞ。



 結局、今回は出来るだけ多くの人に利用してもらう事を最優先した結果、利用時間は最終的に五分になった。

 ギルドに大量に用意されていた五分の砂時計をそれぞれのスライムトランポリンの担当者さんに渡しておき、砂時計の砂が落ちる度に、トランポリンに乗っていた人達を総入れ替えしてもらっている。

 今のところ特に大きな問題や混乱もなく、ほとんどの人が長い行列にも素直に並んでくれているみたいで、俺は密かに胸を撫で下ろしていた。



 そして予想以上に大好評だったのが、ミニトランポリンだった。



 最初は俺が思っていた通りに、小さな子供連れのお父さんやお母さんが並んで子供だけが遊んでくれていたんだけど、そのうちに小柄な女性や十代の子供達が一人で並び始めたのだ。

 しかも小さなお子さん連れの家族の方が、チケットは買ってあるから一緒に乗りたいと言うのでスライム二匹から三匹のトランポリンに誘導したら、大喜びされてあっという間に口コミで評判になり、子供連れのファミリー層がミニトランポリンコーナーに一気に押し寄せてきた。

 まあ、いくら事前に安全だと言われていても、小さな子供さんや小柄な女性なんかは、ガタイのデカい冒険者達と一緒に乗って遊ぶのは怖いって言う気持ちも分かる。

 こっちのミニトランポリンは、弾む高さも大きい方よりはかなり低いし動きもゆっくりだから、大人にはつまらないかと思っていたんだけど、逆に言えば自分一人、または自分と子供達だけでのんびり楽しめるんだから、そりゃあ子供の安全面や心の平安を考えたらこっちに並ぶ人もいるよな。

 他にはちょっと予想外だったんだけど、一人用のミニトランポリンは怖がりな男性達にも好評だったみたいだ。

 あれか。大回転するような猛スピードのジェットコースターは怖いけど、大回転も急激な落下もない、初心者や子供向けの簡単コースターならまだ乗れるだろうっていう心理と同じだな。



 ひっきりなしに聞こえてくる大はしゃぎする声と楽しそうな笑い声。そして、時折響き渡る野郎の図太い地を這うような悲鳴や歓声。

 それを聞いて行列している人達がこれまた大爆笑になり、調子に乗ったスライム達がさらに大張り切りして跳ね飛ぶ高さを急に上げたりするものだから、時には本気の悲鳴が聞こえたりもしていた。




 あっという間に時間が過ぎていき、気が付けばもう昼の時間をとっくに過ぎていたよ。

「ううん腹が減ってきたけど、俺が下がったら万一何かあった時に通訳がいなくなるよな」

 周りを見回しながら、俺は困ったようにそう呟く。

 木札のやりとりと利用時間の管理などのお客さんとの対応は、完璧にギルドのスタッフさん達がやってくれるんだけど、時折引っかかりそうな装飾品を身につけた人や、どう見ても人に当たったら絶対危ないだろうって言いたくなるような尖った鋲を打った防具を身につけた冒険者なんかがいたりするので、受付スタッフさん以外にも人手は必要なんだよな。

 それから困った事に、たまに好奇心からなんだろうけど、こっそり隠し持ったナイフや尖ったキリみたいなのでスライムを突こうとする人もいたりして、そんな時にはスライムの助けを呼ぶ声を聞いて俺が即座に対応し、場合によってはハスフェルやギイに緊急出動をお願いしているのだ。

 今のところそんな感じの面白半分の愉快犯が数名いて、当然全員が現行犯でハスフェル達に摘み出されている程度で、それ以外には大きな事故も問題も起きていない。よしよし。




「大好評みたいだね。はい、君宛てのご指名の差し入れだよ」

 掛けられた声に振り返ると大きな平たい蓋付きの木箱を抱えたエルさんが、笑いながらこっちへ来るところだった。

「ええ? 俺宛ての差し入れですか?」

 驚いて箱を見ると、蓋を開いて見せてくれた木箱の中にはぎっしりと様々な種類のおにぎりが並んでいたのだ。

「これは君宛てにって、パン屋のヘーゾーの店からの差し入れだよ」

 一瞬何処の店の事だか分からなかったけど、おにぎりの差し入れなのにパン屋と聞いて思い出した。

 リナさん達と狩りに出かける前の買い出しの時に偶然立ち寄った、ご飯も売ってたカデリー出身のパン屋さんか。確かに、収穫祭でもおにぎりの屋台を出すって言ってたよな。

「ああ、ありがとうございます。ちょうどそろそろ腹が減ったと思っていたところなんですよ」

「そりゃあそうだろうさ。朝から立ちっぱなしだものね。まだまだ大量に届いてるから、本部のテントまで来てくれるかい」

 笑って言われた言葉に目を見開く。

 絶対、パッと見ただけでもあの一箱に百個以上は確実にありそうなのに、それが何箱もあるって? それは、いくらなんでも貰いすぎだよ。

「ええと、じゃあこんなに食えませんから、どうぞ皆様で分けてください」

「ところが、届いてるのはこれだけじゃあ無いんだよね。あちこちの屋台からも、君宛ての差し入れが大量に届いているんだよ。ギルドが手配してる昼食分もそれとは別に届いているから、置く場所も無くなってきていて困ってるんだ。君は大量の収納の能力持ちなんだろう? こっちへ来てとにかく君宛ての差し入れを収納してくれるかい」

 完全に面白がってる口調でそう言われてしまい、驚いた俺は、近くにいたハスフェルに一旦ミニトランポリンの監視をお願いして、エルさんと一緒に大急ぎで本部のテントまで走って戻って行ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 思わず吹き出して、その後全員で大爆笑ってパターン多いね
[良い点] 更新ありがとうございます! ミニトランポリン大成功~!! いくら乗る気満々でも、直前でビビって泣くチミッ子が多いですからね… 2~3匹のスライムちゃんトランポリンなら、私でも楽しめそう♪…
[気になる点] そんな皆が楽しんでいるスライムトランポリン、なのにスライム達を面白半分で傷付けようとする馬鹿が…(# ゜Д゜) これでスライム達がバラけたりしたら、スライムトランポリンで遊んでいる人達…
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