早朝のもふもふタイム!
「ふわあ、そろそろ眠くなってきたな」
大きな欠伸が出たのでそう呟き、ベッドに横になっていたニニにもたれかかるようにして転がる。
「そうですね。すっかり遅くなってしまいましたね。じゃあもう休みましょう」
笑ったベリーの声が聞こえて、返事をしようとしたらもう一度欠伸が出たよ。
マックスがいつものようにニニの横に転がり俺をサンドしてくれる。ラパンとコニーが巨大化して俺の背中側に、フランマとタロンが先を争うようにして俺の腕の中に二匹揃って潜り込んでくる。
グリーンフォックスのフラッフィーは出遅れて入る場所が無くなってしまい、ベッドの周りをくるくると動き回ったあと、少し考えて俺の足元に巨大化して丸くなった。おお、裸足になってる足の裏にまで最高のもふもふいただきました〜〜!
「じゃあ、カッツェは私と一緒にこっちで寝ましょうね」
いかにも仕方がないといった風に笑ってそう言い、ベリーがカッツェを撫でているけど俺には分かるぞ。もふもふ大好きなベリーがめっちゃ嬉しそうにしてるのをさ。
ソレイユとフォールは、猫サイズのまま俺の顔の左右に陣取って丸くなる。それ以外のベッドチームに入れなかったティグやセーブルを始めとする他の子達は、ベリーやカッツェと一緒にベッドの横でみんなで仲良くくっつき合って一塊の団子になってる。
見えないけど俺には分かる。絶対ベリーは笑み崩れてるってな。
部屋で寝る時はスライムベッドはお役御免なので、スライム達は好き勝手に部屋の床に転がっている。
「おやすみ」
「はい、おやすみなさい。じゃあ消しますね」
いつものもふもふに埋もれてそう呟くと、笑ったベリーの声が聞こえた直後に部屋のランプの火が一斉に消える。
「ありがとな……」
お礼を行ったらまた大きな欠伸が出て、そのまま俺は気持ち良く眠りの海へ沈んでいった。
我ながら、いつも感心するくらいの早さの墜落睡眠だね。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
ショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「ふああい、起きます、起きます」
翌朝、いつものモーニングコールチーム総出で起こされた俺は、何とかそう答えてもふもふなニニの腹から起き出して座った。
「ええ、一度で起きちゃいましたね。残念、せっかく二度目のモーニングコールを譲ってもらったのに」
残念そうなカッツェの声が聞こえて、俺が慌てて振り返ると、ベッドの縁に留まったお空部隊と仲良く並んでベッドサイドに控えるカッツェがいて、俺は慌てて起きてるアピールをしたよ。
「起きたって! ほら!」
笑いながらそう言ってベッドから降りると、甘えたようにカッツェが擦り寄って来る。
「せっかくの初仕事をふいにしちゃって悪かったな」
内心ホッとしつつそう言って撫でてやると、いきなり伸び上がったカッツェが俺の頬を思い切り舐めたのだ。
べろ〜〜〜〜ん!
ニニより巨大なザリザリの舌に舐められて、俺は悲鳴を上げてベッドに転がる。
吹き出す声が聞こえたのはベリーとシャムエル様だよな。
「待て待て、お前の舌で舐められたら俺の頬の肉がもげるから駄目だって!」
笑いながらカッツェの頭を捕まえてそう言ってやる。
「ちゃんと加減してますよ。だからご心配なく」
そう言って、今度は俺のむき出しになっていた腕を舐める。
また悲鳴を上げる俺を見て、ニニや他の猫サイズになってる猫族軍団達までが大喜びで俺に飛びかかってきた。
「ぎゃあ〜〜〜〜〜! 誰か助けて〜〜〜〜!」
この状況をもしも他の人が見たら、絶対、俺が本気でこいつらに襲われてると思うよな。
顔だけに留まらず、腕や足など剥き出しになってる部分を好き勝手に舐められて、割と本気の悲鳴を上げた俺は、逃げるように身を捩って転がった。
当然、そうなるとそのままベッドから転がり落ちる。
「ご主人確保〜〜〜!」
しかし、ベッドの下には待ち構えていたスライムベッドがポヨンと俺を受け止めてくれた。
「からの〜〜返却〜〜〜!」
「うわあ、返すなよ!」
反動で一回ポヨンと跳ねてまた落ちた俺は、安堵したのも束の間、何故かそのまま勢い良く飛ばされてそのままベッドに逆戻りした。
また吹き出すベリーとシャムエル様の声が聞こえる。ついでにシャムエル様と一緒に吹き出してるカリディアの声も聞こえたぞ。覚えてろよお前ら!
「おかえり〜〜!」
大喜びのニニの声と共に、もふもふの体に受け止められる俺。
そしてそのままもう一度始まる猫族軍団達の第二弾ペロペロザリザリ攻撃。
結局、そのままもう一回ベッドから転がり落ちてまた受け止められたよ。そして俺が必死に訴えたおかげで、二度目のベッドへの返却は阻止されたのだった。
「ふああ。朝から何でこんなにハードになってるんだよって。そっか、まだ外は暗いな」
大きく伸びをして体を解した俺は、まだ薄暗い外を見てそう呟く。
『おおい、そろそろ起きてくれよ』
その時、ハスフェルからの念話が届いて顔を洗いに水場へ向かっていた俺は思わず足を止めた。
『おう、おはよう。今起きたところだ。顔洗ってすぐ準備するよ』
『了解だ。エルからの伝言で、向こうに朝食を用意してくれているらしいから、食べずに来てくれていいとの事だ。せっかくだから、たまには人が作った飯を食うのもよかろう?』
笑ったハスフェルの言葉に嬉しくなる。
『了解。じゃあ大急ぎで準備するよ』
笑ったハスフェルの気配が途切れる。
「飯はギルドが用意してくれるんだってさ。じゃあ準備したらそのまますぐに出かけるとするか」
水場へ行き、いつものように豪快にバシャバシャと顔を洗う。
跳ね飛んできたサクラが一瞬で綺麗にしてくれ、そのまま捕まえて二段目の水槽に放り込んでやる。
次々に跳ね飛んで来るスライム達を受け止めては水槽に放り込んでやり、いつものスライム噴水を始めたところで、俺は走って部屋へ逃げた。
大喜びでマックスと狼達がお空部隊と一緒にスライム噴水で水浴びをしているのを横目で見つつ、大急ぎで身支度を整える。
「おおい、スライム達。そろそろ時間だから行くぞ〜!」
準備完了してもまだ水場で大騒ぎをしていたので苦笑いしながらそう呼びかけると、あっという間に綺麗に片付けて全員部屋に戻って来た。
ううん、言葉が通じるって素晴らしいなあ。
「ご苦労さん。それじゃあ、ニニ達は部屋で留守番していてくれるか。庭には出てもいいけど、それ以外は行かないようにな」
「はあい、じゃあお留守番してるわね」
ニニが残念そうにそう言って俺に頬擦りしてくる。
「ベリーやカリディア達はどうする?」
ニニとマックスを交代で撫でながら振り返ると、何故かカッツェを撫でていたベリーが笑顔で振り返った。
「ひとまずここで留守番しています。後で、会場の様子をこっそり見学に行かせてもらいます」
「私達もここで一緒にお留守番してま〜す」
フランマとカリディアの声に、笑って頷く。
「そっか、じゃあこいつらの事よろしくな」
そう言って手を離すと、スライム達には鞄の中とベルトの小物入れの中に適当に分けて入ってもらう。
「それじゃあ行くとするか」
「いってらっしゃ〜〜い!」
鞄を持ってそう呟き、従魔達に見送られて部屋を後にした。
さて、いよいよお祭り当日だよ。
スライムトランポリンには、どれくらいの人が来てくれるんだろうな?