メタルスライムと仲間達
「はあい、よろしくお願いしま〜す。ご主人! わあい、名前もらった〜〜!」
シアンと名付けた青銅色のメタルスライムは、大喜びで跳ね飛んで仲間のスライム達のところへ転がって行った。おしくらまんじゅうが始まっているけど、あれがスライム達の挨拶らしいので好きにさせておく。
「それじゃあこっちも頼むよ」
ハスフェルの声に振り返ると、ハスフェルだけで無く、ギイとオンハルトの爺さんもそれぞれ自分の分をしっかり確保していた。
「おう、じゃあ順番にな」
笑った俺はそう言ってまずはハスフェルの掴んでいる子を受け取った。
ハスフェルが捕まえたのは、俺と同じ青銅色のブロンズスライムの亜種。この子はプラムと名付けられた。
ギイが捕まえたのは、金色と言うにはやや赤っぽい赤銅色の子。
何故だかすっごく見覚えのある色で、不思議に思って考えた俺は気付いた瞬間吹き出したよ。そう、これは新品の十円玉の色だ。って事は、これがブロンズスライムだな。
この子はウォールナットと名付けられた。
オンハルトの爺さんが捕まえたのは、銀色の定番アイアンスライム。この子はローレルと名付けられた。
「よし、以上だな。それであっちはどうなったのかな?」
オンハルトの爺さんに名付けと紋章を刻んだ子を渡した俺は、大きく深呼吸をしてから振り返って見ると、ちょうどリナさんがアルデアさんの分を捕まえて渡していたところだった。
どうやらこっちも無事にそれぞれ確保出来たみたいだ。
それ以外のスライムは、従魔達がサクッとジェムにしてくれていた。
転がるジェムの中に、また数個だけあのラメっぽいジェムがあったよ。とは言え、まあほとんどが普通の透明か透明ピンクの定番スライムなので、転がっているのは最近では俺達は殆ど使わないごく小さなジェムだ。
スライム達がせっせと落ちているジェムを一通り集めてくれている間に、俺はハスフェル達を振り返った。
「なあ、このスライムのジェムはどうする? 貴重なラメ入りのジェムは欲しいんじゃあないか? ジェムコレクター」
からかうようにそう言ってやると、目を輝かせたハスフェルが振り返り、リナさん達もこっちを見た。
「これは後で山分けでいいのでは? でも、ラメ入りのジェムは珍しいのでクーヘンの店とバッカスの店に出来れば少しでもいいから分けてやりたいですね」
ランドルさんの言葉にリナさん達も頷く。
「じゃあ、ここでのジェムは一旦ケンさんが預かってください。街へ戻ってから整理して山分けしましょう」
リナさんの提案に皆も同意してくれたので、ここでのジェムは一旦俺が全部まとめて預かる事にしたよ。
「それじゃあここで集めたジェムは、俺の分とは別に管理しておいてくれるか。後で皆で山分けするからさ」
「了解です。じゃあ皆にも言ってくるね〜〜!」
足元のアクアにこっそりそうお願いすると、伸び上がったアクアは何度か飛び跳ねてそう答えてから、他のスライム達のところへ転がって行った。
またおしくらまんじゅうが始まったので、どうやら拾ったジェムを誰かのところにまとめているみたいだ。
いやあ、本当にスライムって優秀だね。
「さてと、無事に本日分のテイムは終わったみたいだな。じゃあどうする? もうここでこのまま夜明かしするか?」
まだ明るいが、もう今日のテイム数は上限に達してしまったので、これ以上のテイムはもう出来ない。
「どうするかなあ。だが、休憩程度ならいざ知らず、さすがにここにテントを張るのはちょっと無理があるだろう。見晴らしが悪すぎる」
辺りを見回したギイの言葉にハスフェル達も頷いている。
そう言えば昨日もこんな事言われて移動したよな。
確かに、スライムの茂みから何かが飛び出してくる危険はある。ってか、あそこから一斉にスライムが飛び出して来たら、全部は従魔達でも止めるのは不可能だろう。テントがめちゃめちゃにされる光景が簡単に予想出来てちょっと遠い目になる俺だった。寝ていてステゴザウルスの尻尾が突っ込んでくるのも嫌だけど、寝ていて野生のスライムの群れに突っ込まれるのも同じくらい嫌です!
って事でまた移動しようとしたら、従魔達が茂みを見ながら何やら言いたげだ。
「ん? どうかしたか?」
「ご主人、まだ時間があるならもう少しスライム狩りをしない?」
ニニが言うには、要するに思いっきり暴れたいらしい。
さっきまで思いっきり暴れてたんじゃないのかと思ったら、一応テイムする俺達に気を遣って遠慮しながら暴れていたらしく、かなりフラストレーションが溜まっているみたいだ。
「じゃあ俺達は参加しないから、好きなだけ暴れてくれていいぞ。おおい、ちょっと待ってくれ。従魔達がもうひと暴れしたいらしい」
従魔達に乗ろうとしていたハスフェル達を振り返って大声でそう言うと、それぞれの従魔達と話をしたあと、揃って吹き出した。
「よし、行ってこい!」
笑ったハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも笑ってそれぞれの従魔から飛び降りる。ランドルさんとリナさん達も笑いながら従魔から飛び降り、嬉々として先を争うようにしてスライムの茂みへ突っ込んで行く従魔達を見て、俺達は大爆笑になったのだった。
結局、全部で五回、全面クリアするまでスライム退治をしてすっかり満足した従魔達に乗り、俺達は近くの草原に移動したよ。
ここなら見晴らしがいいので見張も容易だし大丈夫らしい。
「それじゃあまずはテントを建てるか」
それぞれ収納袋からテント道具を取り出して早く組み立て始める。
だけどここでスライム達が大活躍したよ。
合間を縫って、ランドルさんやリナさん達のスライム達にも、俺達のスライムが色々と教えたらしい。もちろんあくまでもお手伝いレベルだけだけどね。収納とか浄化の能力は無いし、時間経過の能力も論外。そのあたりは弁えているスライム達は、テントの張り方や濡れた服の水分を取る方法なんかを教えてるみたいだ。
我先にとお手伝いを始めるスライム達に、リナさん達もランドルさんも、驚きと喜びの悲鳴を上げていたのだった。