テイムラッシュ再び……でも加減しような
「いやあ、なかなか壮観な眺めになったぞ」
オンハルトの爺さんのスライムをテイムしてやった俺は、そう呟いて堪えきれずに笑い出した。
どうやら今回は当たりの回だったらしく、出現したメタルスライムが定番の銀色と酸化鉄の赤茶色の子以外は、何と全てオリハルコンとミスリルだったみたいだ。
「すっげえ。いきなり超レアオンリーの出現回に当たるとか、どこの神様の御加護だよ……あ、創造神様の御加護なんだから当然なのかな?」
小さく呟いて笑った俺は、マックスの頭の上に座ってドヤ顔でこっちを見ていたシャムエル様に、とりあえず手を合わせてこっそり拝んでおいたよ。
ありがたやありがたや。今後ともどうぞよしなに。
って事で一度のテイムで、俺は自力で確保したゲルプの他に、マックスが捕まえてくれた、グリューンと名付けたミスリルスライムと、フォールが確保してくれたジルバーンと名付けた定番銀色のアイアンスライムの合計三匹をテイム出来た。
ちなみに当然ハスフェル達もそれぞれ自力で一匹ずつ確保した後、従魔達が捕まえていた子達を分け合い、こちらも無事に全員定番のアイアンスライム二色とミスリルとオリハルコンカラーの子達をそれぞれテイム出来た。
全員分を俺がテイムしても良かったんだけど、一応一日十匹程度と制限をかけている以上、あまりたくさんテイムするのも良くなかろうって事で相談の結果、俺はもうちょっとくらい大丈夫だと言ってハスフェルとギイの分は俺が、オンハルトの爺さんの分をリナさんが、アルデアさんの分をアーケル君が、ランドルさんは自分の分とクーヘンの分をそれぞれテイムする事にしたのだ。
皆、それぞれの名前には相当苦労していたみたいで、ハスフェル達はどうやら協定を結んで三人で考えたらしく、それぞれ樹木の名前をつけていたし、リナさんとアーケル君は花や草の名前、そしてランドルさんはお菓子の材料や素材の名前をつけていた。まあそうなるよな。まとめてつけるのって大変だったものなあ……。
「じゃあ、もう一日のテイム上限数に近づいちゃったからここまでにするか。どうする? 俺はもうちょっとくらい大丈夫だから、本日最後って事で、あと一回くらい捕まえてみるか?」
役目は果たしたとばかりにくつろぐ従魔達を見て俺は少し考えてからハスフェル達を振り返った。
「ふむそうだな。アーケルは、今朝イーグレットを二匹テイムして、今ここで自分の分とアルデアの分を併せるとすでに十匹目だ。大丈夫か?」
言われて指折り数えていたアーケル君は、慌てたように俺を見た。
「うわあ、本当だ。ちょっと調子に乗ったかも ええと、どうでしょう。もうやめたほうがいいですかね?」
アーケル君にそう聞かれて、俺はちょっと考えて念話でシャムエル様に確認した。
『なあどう思う。もう今日はやめさせたほうが良いよな?』
マックスの頭の上で尻尾の手入れをしていたシャムエル様は、いきなり消えて次の瞬間アーケル君の頭の上に現れた。
「ふむ、これはなかなか優秀だねえ。あと五匹くらいはまだ余裕だよ。ちなみにあの彼女と、あっちの彼もそれくらいはまだ余裕だね。でもギリギリまで無理させるのは、あまり感心しないよ」
笑いながらアーケル君の頭上で大きく手で丸印を作りながらそう言うシャムエル様に小さく頷き、俺はアーケル君を振り返った。
「ええと、息が苦しかったり、心臓がいつも以上にドキドキしてるなんてことは無い?」
目を瞬いて少し考えたあと、大きく深呼吸をしたアーケル君は笑顔で首を振る。
「大丈夫です。全くいつも通りです」
「それなら、あと一匹か二匹くらいは大丈夫そうだな。でも、もう今日はそこでやめておくべきだな。いくら珍しいからって言っても、命をかけるほどの事じゃあないだろう?」
「わかりました。それならあと一回のテイムは自分の分だけにします。母さん、それなら次は親父の分を一緒にテイムしてやってくれよ」
頷いたアーケル君は、そう言ってリナさんを見た。
彼女は、今朝は自分の分のイーグレットしかテイムしていないから、確かにまだアーケル君よりは余裕がある。
「そうだね。じゃあ次は私がテイムするよ」
そう言ったリナさんとアーケル君は笑顔で頷き合い、揃ってランドルさんを振り返った。
「ランドルさんはどうですか? まだ大丈夫ですか?」
「ああ、今のところまだ俺も余裕がありそうだ。じゃあ俺もあと一匹とクーヘンの分を確保したらもうやめておくよ」
って事で話がまとまったので、俺は足元を見回して少し離れた場所に落ちていた小石を引き寄せて拾った。
またしてもアーケル君の目がまん丸になってる。
「それじゃあ行きますよ〜〜!」
小石を掲げて大声でそう言うと、皆が一斉に構える。
従魔達は今回は俺達の様子を見て捕まえられなさそうなら確保してくれるらしい。まああいつらの動体視力なら、俺たちが捕まえたかどうかを確認してから動いても余裕なんだろう。
信頼してそこは任せておく。
「違う色の子来い!」
そう叫んで茂みに力一杯石を投げ込む。
またしてもしばしの沈黙の後にまたスライム達が一斉に飛び出して来た。
こう言う時、普通以上によく見える目はありがたいと思う。
こっちに向かって跳ね飛んできた見た事の無いメタルスライムを見つけて、俺はまた瞬時に取り出したミスリルの槍の柄でそいつを思いっきりぶん殴った。
カキーン!
またしてもホームラン級の当たりで勢いよく吹っ飛ぶメタルスライム。
慌てて追いかけて行くと、また他のスライム達が確保して連れて来てくれた。
それはどう見ても青銅色。いわゆる緑青の色だ。
「って事は、こいつはブロンズ亜種だな。じゃあ青って意味でシアンにしよう」
小さく笑った俺は、そいつをスライム達から受け取ってにっこり笑うと声に力を込めて話しかけた。
「俺の仲間になるか?」ってね。