オリハルコンとミスリルカラー!
「それじゃあ、スライムテイムを始めるから、守りはよろしくな」
まずは周囲を囲んでくれている従魔達に声をかける。
「任せてね。それならこっちへ逃げて来たスライムにメタルカラーの子がいれば、捕まえてあげるわ。それ以外はやっつけちゃって良いのよね?」
得意気なニニの言葉に俺は思わず笑ってニニの首に抱きついた。
「ああそうか。従魔達にも手伝ってもらったら、俺達だけで集めるよりももっと早くテイム出来るかもな」
「それは良いですね。是非お願いしましょう」
俺の声が聞こえたらしい、こちらも笑顔のランドルさんの言葉に、俺も笑って頷いてニニから手を離し、こっちに注目している従魔達を見回した。
「それじゃあ、俺達も頑張るけど、もし逃げて来たスライムの中にメタルカラーの子がいれば一旦確保してもらえるか。もちろん無理はしなくて良いからな」
「了解、じゃあ頑張ってね」
ニニが俺の体に思いっきり頬擦りしてから囲みに戻った。
「じゃあご主人、スライムの確保なら我々でも手伝えますよ!」
ラパンの言葉に、スライム達までが勢揃いしてこっちを見ている。
「おう、じゃあ他の皆も一緒に集めてもらえるか。無理はしなくて良いからな」
俺の言葉に返事をして一斉に周囲に散る草食チームとスライム達。
「そうか、スライムが相手ならお前達も参加出来るわけか」
近くでやる気満々なサクラとアクアを手を伸ばして撫でてやってから、置いてあった小石を立ったまま引き寄せて拾う。
うん、これもっと練習しよう。大きな物とかももっと簡単に引き寄せられたら色々と出来る事が増えそうだ。
バイゼンでの冬籠りの間の、する事リストに脳内で書き足しておいたよ。
「では今度こそ行くぞ。皆よろしいですか?」
小石を手の平に乗せて振り返ると、元気な返事があちこちから聞こえてきた。皆やる気満々だよ。
「では、メタルスライム出てこい!」
そう叫んで、俺は手にしていた小石を茂みに向かって力一杯投げ込んだ。
一瞬静かだった茂みが、またしても爆発した。
「何か来た〜〜!」
こっちへ飛び跳ねてきた銀色っぽい子を俺は一瞬で取り出したミスリルの槍の柄で思いっきりぶん殴った。
カキーン!
豪快に金属バットで硬球を打った時みたいな音がしたよ。そしてやっぱり痺れる俺の手。
「いやあ、今のはホームラン級だったぞ」
痛みに苦笑いしてそう呟き、槍を一瞬で収納してからスライムが吹っ飛んでいった方へ走っていく。
「はい、この子だよ〜〜」
スライム達が、茂みの中から気絶したらしいメタルスライムを見つけて連れて来てくれた。
やや黄色っぽい銀色をしていた。
「ああ、黄色っぽい銀色ってもしかして〜〜!」
目を輝かせてスライム達から黄色っぽい銀色のスライムを受け取る。
「俺の仲間になるか?」
ワクワクしながら力を込めてそう言うと、一瞬震えたあとに可愛い声で返事をした。
「はあい、よろしく願いしま〜す!」
ぴかっと光って一気に巨大化したので、慌てて手を離して地面に下ろしてやる。
「おお、これまたデカいなあ、よしよし」
そう言って笑い、右手の手袋を外す。
「紋章はどこにつける?」
足元に勢揃いしているスライム達を見て、ビヨンと伸び上がる。
「一緒のところにお願いしま〜す!」
予想通りの答えに笑った俺は、大きくなった黄色っぽい銀色のメタルスライムの額に沿って手を当てて軽く押さえた。
「お前の名前はゲルプだよ。よろしくなゲルプ」
ドイツ語で黄色って意味だ。一応メタルカラーは色の名前に由来してつけるつもりだけど、まあ、ネタがなくなればまた考えよう。
「わあい名前もらった〜〜!」
ソフトボールサイズになったゲルプは、嬉しそうにそう叫んで、ポヨンと跳ねて俺の腕に飛び乗って来た。
「ここから外へ連れて行ってくれるの?」
嬉しそうな声に、俺も笑顔になる。
「もちろんだよ。よろしくな」
笑って両手でおにぎりにしてやる。
「わあい、モミモミ〜〜!」
握る力に合わせて伸びたり縮んだりするゲルプはめちゃめちゃ可愛い。
笑み崩れそうになるのを必死で我慢しつつ、指の隙間からしっかりと色を確認する。
間違いない。こいつはオリハルコンカラーだ。
「ふおお〜! いきなりすごい子が来たね!」
いつの間にか右肩に座っていたシャムエル様の声に、俺は手を開いて揉んでいたゲルプを見せる。
「もしかして、こいつがオリハルコンスライム?」
うんうんと頷くのを見て、俺はガッツポーズを取る。
「よっしゃ〜〜!レアっ子来た〜〜!」
「へえ、変わった色をテイムしたんですね」
アーケル君の声に、笑顔で振り返る。
彼の手の中にいたのは、どう見てもミスリルカラーのメタルスライムだったよ。
「あれ、その色ってもしかして……」
嬉しそうにしているアーケル君を見て、俺は横目でシャムエル様をチラ見した。
「なあ、あれってもしかしなくてもミスリルだよな?」
「へえ、これはまた凄いね。超貴重なカラーがこんなにも出るなんてさ」
俺が口を開こうとした時、ハスフェルの呼ぶ声が聞こえた。
「おおい、早いところこっちをお願いするよ。しかもなんだか大変な事になってるぞ」
笑った彼の声に驚いて振り返ると、何と全員メタルカラーのスライムを確保していたのだ。さすがは神様、動体視力が半端ねえっす。
しかも、ドヤ顔の従魔達の足元にも、踏みつけられてぺたんこになったメタルカラーのスライムが複数確保されていたのだ。
それ以外は全部足元にジェムになって転がっているのだが、よく見ると普通は完全に透明なジェムの筈なのに、時折ラメっぽいというかレインボーぽい輝きが現れているジェムが転がっているのに気づいて、俺は手を伸ばしてそのラメカラーのジェムを拾った。
手にしてみると、ラメの色は太陽の光を反射してキラキラと輝いててめっちゃ綺麗だ。
「これってもしかして、メタルカラーのスライムのジェムか?」
「ごめんなさい。何匹かは勢いで狩っちゃったんだけど、まずかった?」
申し訳なさそうなニニの言葉に、背後ではジャガー達が気まずそうに目を逸らしている。
それを見て吹き出した俺は、笑ってニニの首に抱きついた。
「いや、これまた珍しいジェムが手に入ったみたいだと思ってさ。構わないよ、ありがとうな。じゃあ、まずは皆が捕まえたスライムをテイムしてくるから、もうちょっとだけ捕まえていてくれるか」
しっかりと抱きしめてから手を離し、まずはハスフェルが捕まえたミスリルカラーの子をテイムする為に受け取ったのだった。