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皆でカレー作り

「ここなら見晴らしも良いし、まだ安全だろうさ」

 ギイの案内で到着した場所は、言っていた通りの高台になった場所で、比較的背の低い草が生い茂る場所だった。

「ああ、ここなら確かに良さそうだ。じゃあ、スライム達に草刈りを頼むとするか」

 ハスフェルの言葉に、あちこちからスライム達が集まって来て、もしゃもしゃと草刈りを始めてくれた。

「ああ、そうか。テントを張る時も、スライム達に頼めば場所の確保は容易ですね」

 あっという間に平らになる地面を見て、アルデアさんが感心したように頷いている。

「親父もスライムが欲しくなった?」

 からかうようなアーケル君の言葉に、アルデアさんは笑って頷いた。

「それならそんなにたくさんはいらないから、一匹だけテイムしてくれるか。テントを張る時に手伝って貰えると有難いよ」

「了解だ。じゃあここを出たらテイムしてやるよ」

「ええ、スライムならここにもいるのに」

 テントの準備をしながらアルデアさんとアーケル君の会話を何となく聞いていた俺は、肩に座ったシャムエル様の呟きに顔を上げた。

「へえ、ここって普通よりも強いジェムモンスターがいる場所なんだろう? そんなところに弱いスライムがいるんだ」

「そりゃあいるよ、ここにしかいないスライムがね!」

 ドヤ顔でそう言ったシャムエル様は、いきなり慌てたように口を押さえた。

「いや、何でもありません。今のはちょっと……」

「残念ながら、よく聞こえる耳なもんで聞こえちゃったぞ。へえ、ここにしかいないスライムがいるんだって?」

 にんまりと笑った俺に、慌てたシャムエル様がくるっと回って背中を向ける。

「何のことかわかりませ〜〜ん」

 いつもの倍くらいになった尻尾を振り回しながら、そんなことを言って誤魔化している。

「相変わらず、尻尾は嘘をつかないねえ」

 もふもふな尻尾を捕まえて、指先で揉んでやる。

「ん? 素直に白状した方が楽になると思うけどなあ」

 テントの支柱の位置を決めて左手一本で立たせると、待ち構えていたスライム達が、あっという間にテントを張ってくれる。新入りの黄緑色のライムも、他の子達に教えてもらってせっせとロープを引っ張って押さえている。

「ほらほら、白状しろよ」

 別にもう支えていなくてもいいんだけど、何となく支柱を持ったまま右手でシャムエル様の尻尾をもふる。

「うう、じゃあ夕食はカレー! 各種カツ付き! それからデザートも! それなら後で、とっておき情報を教えてあげるよ!」

 何故かドヤ顔のシャムエル様にそう言われて、支柱から手を離した俺は両手でシャムエル様を捕まえて顔の近くへ持っていく。

「明日にしようかと思ってたんだけど、何、カレーが食いたいのか?」

「だって、すっごく美味しかったもん。それに皆からもリクエストもらってるんでしょう?」

 ちょっと上目遣いでそう言われてしまったら、もう拒否する選択肢は消えたね。

「まあ、まだ早い時間だから皆でやれば出来るか」

 笑った俺は、シャムエル様をマックスの頭の上に乗せた。

「じゃあ、まずは準備するから待っててくれよな」

 そう言ってもう一度さりげなく尻尾をモフってから、俺はテントの垂れ幕を全部あげて外に出た。

「おおい、今夜はカレーにしようと思うからさ。手が空いたら手伝ってくれるか」

 ハスフェル達とランドルさんの嬉しそうな返事が聞こえ、リナさん一家が建てかけのテントから顔を出した。

「カレー? カレースープですか?」

 リナさんの質問にハスフェル達が揃って笑顔で振り返る。

「いや、カレースープなんかよりずっと美味しいですよ。じゃあテントを建てたらケンのテントに集合してください」

 いそいそと俺のテントに集まる彼らを見て、リナさん達は首を傾げつつ大急ぎで手分けしてテント作りを再開した。




「お待たせしました。何をお手伝いすれば良いですか?」

 リナさん達が揃って俺のテントに入って来る。

 中には大きな机と椅子が並び、コンロや鍋がずらりと並んでいる。

「じゃあカレールウ作りにギイとランドルさんとリナさん。オンハルトの爺さんはこっちでグラスランドブラウンブルの角切り肉を焼いてくれるか。ハスフェルはこっちで玉ねぎを炒めてくれ。アーケル君とアルデアさんは、こっちのコンロでグラスランドチキンとハイランドチキンの胸肉を焼いてくれ。味付けは塩胡椒のみでたっぷりのバターだけで焼くぞ。今回はこれもトッピングに使うからな」

 説明をしながら、それぞれにスライム達に切ってもらった材料を渡して準備開始だ。

 俺は大鍋を用意して、サクラににんじんやジャガイモを切ってもらって、師匠特製のブーケガルニと一緒に干し肉から取ったスープを入れて準備を始めた。



「本当は、明日の方が美味しいんだけどなあ」

 焼いた肉と炒めた玉ねぎを追加した大鍋は、さっきからグツグツと賑やかな音を立てている。

 時々出てくる泡の塊を取り除きながら、俺は小さな声で呟いた。

「でも、別に食べられないわけじゃあないでしょう?」

 既に食う気満々のシャムエル様にそう言われて、俺は苦笑いしながら頷いた。

「そりゃあもちろん食えるよ。当日のカレーは、ちょっと軽い感じなんだよな。まあ、それも美味しいって」

「はい、カレールウの完成だよ」

 もうすっかりカレールウ作りの達人になったギイが、笑いながら出来上がったカレールウをまとめて持って来てくれる。

「おう、じゃあここに入れてくれるか」

 大鍋に作ってもらったカレールウを数回に分けて入れ、さらに煮込んでいく。

「じゃあその間にトッピングの準備だな。そっちはどうですか?」

 アルデアさんも、アーケル君に教えてもらって、せっせとグラスランドチキンの胸肉を焼いてくれている。

「言われた通りに、焼けた分からここに置いて……あれ、お皿に乗せて置いてあったのに?」

 指差した机の上には何も無くて慌てるアーケル君。

「ああ、冷めない方がいいかと思って俺が収納したよ」

 ハスフェルが手を上げてそう言い、大きな皿に山盛りになった、綺麗な焦げ目のついたグラスランドチキンとハイランドチキンを取り出した。

「おお、いい感じじゃん。じゃあこっちにくれるか。それから、これがサラダとご飯。サラダのお皿はこれを使ってくれ」

 適当にサラダの材料も取り出し、机の上に並べておく。

 ハスフェル達が、リナさん達に説明しながらそれぞれお皿に自分の分のサラダを取っていく。

「じゃあ今回はトンカツとビーフカツを出しておくか。各種チキンは焼いたのがあればいいな」

 トンカツとビーフカツを適当な大きさに切って、これもお皿に並べておく。焼いてもらったチキン各種は、大きめのぶつ切りにしてこれも山盛りに並べておく。

 飲み物は、冷えた麦茶と屋台で買った各種ジュース。酒が飲みたい奴は自己責任でどうぞ。俺は麦茶でいいよ。

 これにて夕食の準備完了。あとは好きに食え。



 出来上がった大量のカレーを見て、子供みたいに目を輝かせる一同を見て、ちょっとドヤ顔になった俺だったよ。

 やっぱり、キャンプにはカレーだよな。

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