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神様からのお告げ

「おお、なんだか凄い事になってるぞ」

 上空を見上げた俺は、巨大化して飛び交うお空部隊に追い回されて、パニックになって逃げ惑う真っ白な鳥の群を目で追っていた。

「あ、やった!」

 背中からファルコが両足で襲いかかり、一瞬でジェムにする。

 こちら目掛けてポーンと落ちてきた大きなジェムは、跳ね飛んだスライムが上手に確保してくれている。

 どうやら、直接狩りをしているのはファルコだけみたいで、他の子達は巨大化して周辺を飛び回り、イーグレットが長老の木から離れないように牽制しているみたいだ。

 ギャーギャーと悲鳴を上げるかのように鳴きながら逃げ惑い、ファルコの爪で次々にジェムになっていく白鷺もといイーグレット達。

「いやあ、さすがは猛禽類ですね。インコ達とは攻撃力の桁が違いますよ」

 感心したようなランドルさんの呟きに、俺も上空を見上げたまま頷く。

 しばらく見ていると、明らかにイーグレット達の数が減ってきた。

 そこでお空部隊が一気に行動に出た。残った中でも大きな個体に狙いを定め、一斉に襲いかかったのだ。

 と言っても、インコとオウム達だからファルコのような攻撃では無く、頭上から垂直に降下して地上に無理やり追いやるといった感じだ。

 嫌がるように逃げてはまた降ろされ、羽ばたこうとして背中や翼、また尻尾の毛を突かれる。

 とうとう失速したイーグレットが俺達の目の前に落っこちてきた。

 何とか羽ばたいて地面に叩きつけられずに無事に着地出来た瞬間、ランドルさんが両手を広げて襲いかかった。

 長い嘴を手袋をした左手で引っ掴み、鋭い嘴をまず封じる。

 そのまま体を抱え込むみたいにして覆い被さり、細くて長い両足を大きな右手で引っ掴んだのだ。

 嫌がるように必死で暴れるイーグレットだが、嘴と両足を確保され、しかもランドルさんの体を密着されているせいで翼を広げて羽ばたく事も出来ない。

 しばらくもがいていたが、諦めたようで急に大人しくなる。

 ランドルさんが手を離してイーグレットをテイムするのを俺達は真剣な顔で見つめていた。



 さあ、ここから神様軍団の芝居の始まりだよ。



「お前の名前はクリームだ。よろしくな、クリーム」

 手を伸ばして胸元にランドルさんが紋章を刻む。

「ありがとうございます。名前を貰えて嬉しいです」

 甘えるみたいにランドルさんの手に頭を擦り付けるイーグレット。どうやらこの子も雌だったようで、可愛らしい声をしている。しかもかなり大きい。もう一度光ってオウム達と同じくらいの大きさになる。

「普段はこれくらいのサイズでいますね。空を飛ぶ時はいつでも言ってください」

 自慢げに長い首を上げてそう言った時、上空が不意に曇って影が俺達を覆う。

「何だ?」

「さっきまで快晴だったのに」

 ハスフェルとギイが態とらしくそう言って顔を見合わせる。

「ふむ、急だがひと雨来るのか?」

 オンハルトの爺さんも、そう言って不思議そうにしている。



 そろそろ日が傾き始める時間だが、まだ暗くなるにはかなり早い。



「うわあ〜〜!」

 その時、クリームを撫でていたランドルさんが何気なく上空を見上げた途端、らしからぬ悲鳴を上げて地面に転がった。

 視線は上空に向けたままだが、どうやら本気で腰が抜けてるみたいで立ち上がる事も出来ずに地面に手をついている。投げ出された足は大丈夫か心配になるくらいにブルブル震えている。

「ええ〜〜!」

 アーケル君のものすごい本気の悲鳴が響き渡る。

 そこでようやく俺達も背後の空を振り返った。



 そして態とらしくこう叫んだのだ。

「ええ、ド、ドラゴンがいる〜〜〜!!」……ってね。

 若干、台詞が棒読みだったのは許してくれ。俺に演技力なんて求めちゃ駄目だって。






「おいおい、一体どういう事だ?」

「どうしてこんな所に創造神様がご降臨なさるんだよ」

「全くだ、いやそれにしても見事なお姿だな」

 いまいち驚いていない台詞のハスフェルとギイとオンハルトの爺さん。

 まあそうだよな。君達、創造神様の友達だもんな。



 それに比べて、こちらは驚きすぎて完全に腰を抜かしたまま地面に座り込んで固まってるランドルさん。リナさん一家もポカンと口を開けたまま、これまた上空を見上げて固まっている。

 しばしの沈黙の後、いきなりランドルさんのテイムしたイーグレットのクリームが、羽ばたいてリナさん達の目の前へ飛んで行った。

 面白いくらいに揃ってビクってなった後、これまた揃って地面に跪くリナさん達。



『草原エルフとこのような所で会うとはな』



 神様バージョンのシャムエル様の声が、目の前のクリームの少し開いた口から聞こえてくる。

 それを見たランドルさんの口から、奇妙な呻き声が聞こえた。

「そ、創造神様にお目にかかれるとは、我ら生涯の喜びにございます!」

 跪いたまま頭をこれ以上ないくらいに下げたもんだから、ほとんど地面に這いつくばるみたいになってるリナさん一家を代表して、アルデアさんが大きな声で叫ぶ。

 いや、頭下げてたら全然姿が見えないじゃん。ってツッコミは胸の中だけにしておいたよ。

 今下手なこと言ったら、本気で竜巻か過剰重力攻撃されそうだ。



『ようやくイーグレットを狩ってくれたと思うておったら、何だ、其方達は狩りに参加しなかったのか』



 当のイーグレットの口からそんな言葉が聞こえるって、よく考えたらなかなかにシュールな光景だよ。

 だけどリナさん達は違ったみたいで、シャムエル様の言葉に驚いたように顔を上げ、自分達のすぐ側まで来ているイーグレットに気付いて、また慌てて這いつくばる。



『長老の木のイーグレットは、我から其方達への贈り物だったのだがな』



「で、では、狩った方がよろしいのですか?」

 頭を上げずにアルデアさんがそう尋ねる。



『ジェムモンスターからジェムや素材を取るのは、人の子が生きていく上で必要な事だ。無駄にせず大事に使うと良い』



 そう言って、惚れ惚れするくらいに低くて良い声で笑ったシャムエル様の使いのクリームは、そこで突然解放された。

「ウキュ〜〜?」

 何とも言えない声で鳴いた後、慌てたように羽ばたいてランドルさんの側まで逃げるみたいにすっ飛んでいった。

「お、お前……」

 地面に座り込んだまま、呆然と戻って来たクリームに手を伸ばすランドルさん。

「ねえご主人、何が何だか分からないの。私って今何をしてたの?」

 パニックになったクリームの声が聞こえて納得する。シャムエル様に一時的に支配されて声を届ける役目を担ったクリームには、その時の記憶は無いみたいだ。

「いや、何って言うか……」

 呆然とそう呟いたランドルさんが上空を見上げたが、そこには傾き始めた太陽が輝いているだけで、雲一つ無い空には、鳥の一羽も飛んでいなかったのだった。

「ドラゴンが消えた……」

 呆然と呟いたランドルさんの言葉に、リナさん一家も弾かれたように顔を上げ、何もない空を見上げてまた揃って固まってしまった。

 彼らの予想以上の反応に、事情が分かってる俺達は、もう笑いそうになるのを必死で堪えていたのだった。

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