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アーケル君の従魔とこの後の予定

「俺の仲間になるか?」

 静まりかえったその場に、アーケル君の声が響く。

「はい、貴方に従います」

 答えたリンクスの声は可愛らしい声だったから、この子も雌みたいだ。

「よし、お前の名前は、パルフェ、だよ。これからよろしくな。俺、テイマーになって間が無いから、自分の紋章をまだ持ってないんだよ。だから紋章を刻むの、もうちょっと待ってくれよな」

 申し訳なさそうなアーケル君の言葉に、パルフェと名付けられたリンクスは目を細めて大きな音で喉を鳴らし始めた。

「分かりました。では紋章を刻んでくれるのを楽しみに待つ事にしますね」

 嬉しそうにそう言って、抱きついて来たアーケル君の頬を舐める。

「うひゃあ! 待って待って! 今の何? マジで頬の肉、持っていかれた〜〜! って、あれ? 血が出てないぞ? ええ〜〜? どうなってんだ?」

 頬を押さえて悲鳴を上げるアーケル君に、俺達は全員揃って吹き出したのだった。




 結局、アーケル君は過剰重力と呼ばれる超強力な術で、リンクスの戦意を見事に一発で喪失させてしまい、そのまま確保してテイムしてしまったのだ。

 いやあ、優秀優秀。ハンプールの街へ戻ったら、早速紋章を刻んでもらわないとな。

 まだ従魔達との会話は、ほとんどアーケル君が一方的に話しかけてるだけで、会話の応酬になっていないのは、多分紋章が無いせいだろう。クーヘンも、紋章をもらった後は会話がスムーズに出来るようになったって言ってたもんな。



「いやあ、お見事。それにしても凄い術だったよ。従魔達に逃げろって言った意味がよく分かったよな」

 拍手しながら俺がそう呟くと、側にいたハスフェルとギイも真顔で頷いた。

「確かにあれはヤバい」

「そうだな。確かにあれは色々と駄目だ」

 彼らだけでなく、オンハルトの爺さんとランドルさんも真顔で頷いてるので、皆考える事は同じだったみたいだ。

 多分、従魔達も何かヤバい術だって分かってたんだろう。声がかかった瞬間に、それまで押さえ込んでたリンクスを放置して、本気で血相変えて逃げてたもんな。

 苦笑いしながら振り返った俺は、ニニと並んでこっちを見ているカッツェに駆け寄る。

「ニニと仲良くしてくれよな。さてと、これで目標のリンクスはテイム出来たけど、あとはどうする?」

 昼食はしっかり食ったし、まだ終了するには早い時間だ。

「ふむ、どうするかな」

 腕を組んだハスフェルが、何か言いたげに俺を見る。

「何? 俺はもう大満足だよ。このまま別荘へ戻って、祭りまでのんびりしても良いかと思ってるぐらいだけどなあ」

 何しろ、黄緑色のスライムに巨大なグリーンフォックスだけじゃなく、ニニのお婿さん候補の雄のリンクスまでテイム出来たんだから。俺的には、もうこのまま帰って風呂に入りたいくらいだ。

「ええ、そんなあ。せっかくここまで来たんですから、ここでもっとテイムしたいです〜〜!」

 俺の願いも虚しく、アーケル君の叫びにリナさんまでが笑顔で手を挙げてる。

「あの、出来れば鳥の従魔が欲しいです。ここではなくても良いので探してもよろしいでしょうか?」

 さすがは魔獣使い、鳥の従魔の有用性を理解してる。

「ああ、確かに翼を持つ子は、最低でも一羽は絶対に欲しいですよね」

 ランドルさんもそう呟いて頷いてる。

「そうだな、戦力的にはグリーンフォックスとリンクスがいれば大丈夫だろうから、あとテイムするとしたら、確かに翼を持つ従魔だな」

 ハスフェルの言葉に、俺は帰って風呂に入るのを諦めた。

「じゃあどうする? このまま進むと奥地で日が暮れるぞ。まあ、これだけの従魔達がいれば、以前みたいに中で夜明かししても大丈夫だろうけどさ」

 周りを見回しながらそう言った俺に、リナさん一家が血相を変える。

「いやいや、何を仰るんですか。いくら何でも、境界線の奥地で夜明かしは洒落になりませんよ」

 必死になって揃って顔の前で手を振る三人に、笑ったランドルさんが従魔達を示した。

「大丈夫ですよ。以前来た時も奥地で夜明かしした事があります」

「ええ、いくら何でも危険でしょうに……」

 戸惑うリナさんに、俺は笑ってセーブルを撫でた。

「ご心配なく。巨大化したセーブルがいれば、他の魔獣やジェムモンスターは、セーブルを警戒して近寄って来ませんよ。奥地でテントを張る時は、肉食系の従魔達に最大級に巨大化してもらって、円陣を組んでもらい、その中で俺達はテントを張って寝るんですよ。まあ、もちろん装備はそのままで寝ますけどね」

 胸元の胸当てを突っつきながらそう言ってやると、納得したのかリナさんは自分の従魔になったリンクスのルルちゃんを振り返った。

「どう? 夜もここにいても大丈夫か?」

 すると、聞かれたルルちゃんは笑ったみたいに目を細めて大きく喉を鳴らした。

「確かにあの巨大なグリズリーがいれば、他のジェムモンスターや魔獣をはじめ、危険な野生動物は間違いなく警戒して近寄って来ないでしょうね。良いと思いますよ。ここなら強い鳥もいますから、是非捕まえてください」

「上手くいくかどうかは分からないけど、頑張ってみるから手伝ってくれる?」

 手を伸ばしてルルちゃんの額をゆっくりと撫でる。

「もちろん、確保してあげますよ」

 甘えるみたいにそう言ってリナさんに頭を擦り付ける。

「おお、ラブラブじゃん」

 笑った俺の言葉に、我に返ったらしいリナさんが真っ赤になり、また皆で笑い合った。



「ふむ、じゃあとにかく移動しよう。ここはリンクスの狩場だから、夜になると間違いなくリンクスが現れるぞ。だが、リンクスは普通のジェムモンスターと違って個体数がそもそも少ない。一気に三匹も確保したんだから、もうこれ以上は無駄な接触は避けるべきだろうからな」

「ああそっか。減ったらすぐに復活するジェムモンスターと違って、普通の生き物の延長線上にいる魔獣は、そう簡単には増えない訳か」

 納得した俺の言葉に、カッツェが周りを見回しながら頷く。

「そうですね。この辺りでは、私が一番大きく強いリンクスでしたが、あと二匹、さすらっている大きな雄がいます。あとは森の奥側に雌の群れが複数いますよ。確かに三匹も減れば、このあと勢力図に大きな変化が現れるでしょうね」

「せっかくの広いテリトリーを離れる事になってごめんよ」

 手を伸ばして撫でてやると、カッツェは嬉しそうにまた喉を鳴らしながら目を細めた。

「知らない土地を見るのも、楽しそうで良いじゃないですか。ご主人と一緒に、知らない世界へ出ていくのを楽しみにしていますからね」

「そうだな。俺も楽しみだよ」

 笑ってそう言い、もう一度撫でてやってからマックスに飛び乗った俺達は、ひとまず場所を変える事にしたのだった。

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