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熟成肉は大好評でした!

「うああ、美味しすぎる。これが野生肉(ジビエ)の熟成肉か〜」

「全くだな、これは美味い。肉が蕩けるようだ」

「本当にこれは美味しい。それなのに、肉の旨味はこれ以上ないくらいにしっかりあるんだからね」

 感極まったようなアーケル君の呟きに続いて、アルデアさんとリナさんも揃って頷きながらしみじみと呟く。

 どうやら三人とも、グラスランドブラウンブルの熟成肉の美味しさに目覚めたらしい。

 ちなみにさっきまでは、ハイランドチキンとグラスランドチキンの美味しさに三人揃って悶絶してました。

「口にあったようで俺も嬉しいよ。まだまだたっぷりあるから遠慮なく食ってくれていいぞ」

 俺の言葉に目を輝かせるアーケル君を見て、慌てるアルデアさんとリナさん。

「大丈夫ですって。実を言うとこの肉は、一切元手はかかってないんですよ。これはどれも従魔達が自主的に狩って来てくれたものなんですよ。正直言うと食い切れないくらいにまだまだあるので、頑張って減らすのを手伝ってください」

 揃って拍手したあと、リナさんは半分ほどに減ったステーキを見ながら首を傾げた。

「従魔達が狩って来る。それも凄いですね。ケンさんが狩って来るように命令したんですか?」

 改まって聞かれて、苦笑いして首を振る。

「最初はハイランドチキンを美味しいから食えって言って、マックスとニニが持って帰って来てくれたんですよ。それで美味しいなら嬉しいからって、そのまま収納して持って帰ってギルドで捌いてもらいました。食べてみたらそりゃあ本当に美味くて、俺達が大喜びしたんですよね。そうしたら気を良くしたみたいで、次々に狩った獲物をお土産に持って帰って来てくれるようになっちゃったんですよ。そんな大物、自分では捌いたり出来ないんで、そこはギルドでお願いしてます、この肉を熟成するのも、ギルドでお願いしてやってもらったんですよね」

 納得したように頷き、リナさんが優しい目をしてテントの隅で好きに転がって寛いでる従魔達を見る。

「ルルも、確かに獲物を持って帰って来てくれる事が何度もあったね。そうそう、今思い出した。一度だけグラスランドチキンを捕まえて、丸ごと咥えて持ってきた事があったよ。あの時のルルの得意そうな顔と言ったら」

 当時を思い出したのだろう、小さく笑っている。

「しかも当時持っていた収納袋では、グラスランドチキン丸ごと一匹は大きすぎて入らなくてね。結局ルルが咥えたまま街まで持って帰ったんだよ。そうしたらもう街中大騒ぎになっちゃったんだよ。魔獣使いが貴重なグラスランドチキンを狩って来たって。それで、当時のギルドマスターに必死で頼み込まれて、そのまま丸ごと買い上げられて、当時街で権力を一手に握っていた横暴な貴族へのご機嫌取りのための献上品になってしまったんだよ。それで結局、一欠片も私の口には入らなくて悔しい思いをしたんだっけ。まさか今になってグラスランドチキンだけじゃなくて、ハイランドチキンやグラスランドブラウンブルの熟成肉まで食べられるとはねえ」

 リナさんが笑ってそんな話をしながら、残りの肉を切って口に入れた。

「ああ、本当に美味しい」

 目を細めてそう呟いたリナさんは、また従魔達を振り返った。

「美味しいお肉をありがとうね。おかげで私達までご一緒させてもらえたよ」

 リナさんの声に顔を上げたニニや従魔達が揃ってドヤ顔になるのを見て、俺は堪えきれずに吹き出したのだった。




 それにしても、俺達は普通に食ってるけどグラスランドチキンやハイランドチキンは確かに貴重だってギルドでも聞いたな。しかも、貴族に丸ごと献上されるくらいに珍しいんだ。

「へえ、これってそんなに珍しいんだ。でも、俺のところでは普通にメニューに出ますからね。ああ、じゃあ俺達って貴族が食ってるのと同じ物を食ってるわけか。ううん、なんかちょっと偉くなった気分だぞ」

 俺の呟きに、リナさん達が笑いながら頷き、揃ってサムズアップしてくれた。

 俺も笑ってサムズアップを返しながら、残りの熟成肉をしっかり味わって平らげたよ。

 豪華デザートを出す予定だって言ってあったからか、ハスフェル達も食事中のお酒は控えめにしていたみたいだ。いつもよりも空瓶の数が少ない。




「ごちそうさまでした。もうどれもすっげえ美味かったです!」

 リナさん達に続いて、お皿を返しながら目を輝かせるアーケル君の言葉にお皿を受け取る俺も思わず笑顔になる。

「はい、お粗末様でした。だいたいいつもこんな感じだからさ、旅の間の食事はまあそれなりに期待してくれていいよ。ああ、もしも口に合わないのがあったら、それも遠慮せずに教えてくれよな。無理して食べなくて良いからな」

「いやあ、とんでもなく辛い料理とか、ゲテモノ系はちょっと遠慮したいけど、それ以外は大抵平気です! 特に好き嫌いもありません!」

 真顔のアーケル君の答えに、俺も笑って頷く。

「激辛系や、ゲテモノ系は俺も嫌だよ。じゃあ大丈夫そうだな」

「はい、よろしくお願いします! 肉を焼くくらいなら手伝えるので、いつでも言ってください!」

「おう、その時はよろしくな、頼りにしてるよ」

 笑って手を叩き合って、席へ戻るアーケル君を見送った。



 さてと、あとはデザートだな。どのデコレーションケーキを出してやろうかねえ?

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