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スライム集め開始!

「スッライムちゃ〜ん、待っててね〜。きっみをテイム、しってあっげる〜」

 すっかりやる気になってるアーケル君が、セーブルの背中に跨って走らせながら調子っぱずれの適当音程で即興の歌を歌い始める。

 黙って聞いていたら、なんだかじわじわおかしくなってきて、俺はもう途中から笑いを堪えるのを放棄したね。

 リナさん達も最初は呆れたみたいに知らん顔していたんだが、あまりにも楽しそうなアーケル君に感化されたみたいで、途中からはもう皆してずっと笑っていたよ。



「あの茂みがお待ちかねのスライムの巣がある場所だ。クリアーとピンクは定番だから間違いなくテイム出来るぞ。それ以外に何色がいるかは、まあ行ってみてのお楽しみだな」

 ハスフェルが指差す場所は、いかにもスライム達が潜んでいそうな腰までの高さの雑草が生い茂る場所だ。

「スライムって、襲われたら面倒だから見つけ次第燃やしてたけど、テイムしようと思ったら確保しなきゃ駄目なんですよね。だけど、迂闊にスライムに触れたら取り込まれて窒息しちまうのに、どうやって確保するんですか?」

 確かにその通りなので、マックスの背から降りた俺は腰の剣を指差した。

「俺はこんな風に剣を持って、この面でスライムを叩き落としてるよ。こんな感じにね」

 そう言って、腰の剣を抜いてバットで素振りするみたいに振って見せる。

「ああなるほど。それで吹っ飛ばして抵抗を封じてテイムするんですね」

 素振りをしてから掴む振りをするアーケル君に笑って頷くと、リナさんもニニの背から飛び降りてから笑って頷いた。

「ああ、確かにそれは良い方法ですね。私は風の術で弾き飛ばして地面に叩きつけてましたから、最初は力加減が分からなくて、ジェムにした事がありますよ」

「相変わらず、母さんは乱暴だなあ」

 息子に真顔で言われるリナさん。まあ確かに、ピンクジャンパーの扱いはかなり雑だったけどね。

「どうする? 先にやる?」

 アーケル君の問いに、リナさんは真剣な顔で頷いた。

「じゃあ一緒でも構わないだろう。私はピンクのクリアーの子を捕まえるから、あなたは好きなのを選ぶといい」

「おう、じゃあこっちでするよ」

 少し離れた箇所にアーケル君が立ち、それぞれに剣を抜く。

 足元から小石を拾ったアーケル君が、それを勢いよく茂みに向かって投げ込んだ。

 一直線に茂みに突っ込む小石。

 一瞬の沈黙の後、ワラワラと茂みからスライムたちが逃げ出してきた。



「ピンク見つけた!」

 リナさんの声と同時に、短剣が振り下ろされスライムが吹っ飛ぶ。



「クリアー発見!」

 アーケル君の叫ぶ声と同時に、これまた短剣が振られて吹っ飛ばされるスライム。



 どちらも茂みを飛び越えてその奥の土手の斜面にぶち当たった。

 ぶち当たった勢いで大皿サイズに伸びたスライムは、しばらく土手に張り付いていたが、そのままズルズルと滑り落ちていった。

 急ぎ足で駆け寄る二人は、それぞれに自分が弾き飛ばしたスライムを引っ掴んで持ち上げた。

「俺の仲間になれ!」

「私の仲間になれ!」

「「はい、あなたに従いま〜す!」」

 二人の声が同時に聞こえて、これまた沈黙の後に同時に返事が聞こえた。

 一瞬の輝きの後に、それぞれ大きくなるスライム。



「お前の名前はネロだよ。よろしくな。ネロ」

「わあい、名前もらった〜! よろしくです、ご主人!」

 嬉しそうなスライムの声に、アーケル君も嬉しそうに笑う。



「あなたの名前は、キルシュ。よろしく」

「うわぁい、名前貰った! よろしくです〜ご主人」

 これまた嬉しそうに伸び上がるピンクのスライムに、リナさんも笑顔になる。



「うわあ、この手触り、ちょっとクセになりそうだ」

「きゃあ〜助けて〜」

 笑いながら両手でスライムをおにぎりにしているアーケル君と、無抵抗で揉まれているスライム。どっちも、何だか楽しそうなので放っておくことにしたよ。



「で、あとは……うわあ、何だよこれ!」

 俺は二人をずっと見ていたから、逃げ出したスライムにはノーガードだったんだけど、気がついたらあちこちに小さなジェムが大量に転がっていて驚いてハスフェル達を振り返る。

「ああ、ランドルさんまでテイムしてる〜〜!」

 そして、ランドルさんの腕にはピンクのスライムが乗っかっていたのだ。どうやらランドルさんもテイムしてたみたいだ。

「いやあ、こっちに向かって来たもんだから、つい捕まえてしまったんですよね。せっかくですから、色付きの子は俺もテイムします」

 嬉しそうなランドルさんの言葉に俺は思わず吹き出したよ。そうだった、ランドルさんもレインボースライムを集めるって宣言してたっけ。

「で、この惨状は誰がやったんだ」

 苦笑いしながら足元の小さなジェムを拾って眺める。

 もう最近ではほとんど使う事も無い、小さなジェムだ。

「いやあ、跳ね飛んで来るもんだからどうしようか考えてたら、猫族軍団が大喜びで飛びかかってあっという間に叩き潰してしまったんだよ。でもおかげで分かったぞ。ここには緑と黄緑の二色がいるみたいだ」

 笑うギイの言葉に、俺は茂みを覗き込む。

「ええと、まだいる?」

 揃って頷く彼らを見て、俺はリナさん達を振り返った。

「了解だ。ここはあと緑と黄緑がいるみたいだけど、どうする?」

「もちろん両方捕まえます!」

 嬉々とした二人の返事が返ってくる。まあ、予想はしてたよ。



「どうだ? この後行く予定のグリーンフォックスまで入れたら、アーケル君は六匹になるけど、大丈夫かな?」

 小さな声でシャムエル様に確認してみる。テイムのし過ぎは絶対に駄目だもんな。

「アーケル君も潜在能力はかなり高そうだからね。十匹くらいまでは二人とも余裕で大丈夫だね」

 頬をぷっくらさせながらそう答えてくれるシャムエル様。ああ、その頬を俺につつかせてくれ〜〜!

 脳内で叫んだ俺は、ちょっと落ち着かせるために深呼吸をしてからもう一度二人を振り返る。

「それじゃあ、二回目に行くか。俺も黄緑は捕まえてないから、一匹だけ参加させてもらうよ」

 そう言って彼らから少し離れた場所に立つ俺を見て、ハスフェルとギイが走ってくる。

「なあそれなら黄緑のをテイムしてくれるか。捕まえるのは自分でやるから」

「なるほど、お前らも全色制覇に名乗りを上げるわけだな」

「当たり前だろうが。こんな楽しそうなのに参加しないわけがあるか!」

 揃って真顔で断言されてしまい、もう笑うしかない俺だったよ。

「よし、じゃあ自分で捕まえてくれたらテイムするよ。目指せ全色制覇だな」

 笑った俺の言葉に、ハスフェル達も嬉しそうに頷き、揃って短剣を構えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『エルフ』だから即興でも歌が上手い…という、想像&思い込みが砕け散るの巻!(爆笑) [気になる点] 7色より多い色数だと12色? 残りは赤紫や青緑と… 今後のスライムちゃんたちの名付けが…
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