ピンクジャンパーの営巣地に到着!
「到着〜!」
大声でそう言った俺は、マックスの背から草地へ一気に飛び降りた。
到着したそこは、見覚えのある段差のある土手になっていて、斜面には巣穴があちこちに見える。以前来たのと同じ地脈の吹き出し口の一つで、ここが目的のピンクジャンパーの営巣地だ。
「どうする。お前らは狩りに行ってきてくれても良いぞ」
「私はピンクジャンパー狩りがしたいで〜す!」
マックスの首元を叩いてやりながらそう言ってやると、ニニが嬉しそうにそう言い、それを聞いた猫族軍団が嬉々として集まって来る。どうやらセーブルもこっちに参加するみたいだ。
草食チームは、ランドルさんの従魔のピンクジャンパーのクレープと一緒に、皆揃って少し離れた草地へ食事に向かったので、どうやら狩りには不参加らしい。まあどう考えても戦力過剰だから気にしなくて良いぞ。
上空を旋回しているお空部隊は巨大化しているので、どうやらピンクジャンパー狩りに参加する気みたいだ。
って事で、まずはマックスとシリウスが狼達と一緒に狩りに出かける事になった。ランドルさんの従魔の狼達も一緒だ。犬科の子達は集団で狩りをするので、マックスは仲間が増えて嬉しそうだったよ。
楽しそうに集団で走り去るマックス達を見送り、俺はニニを振り返った。
「それじゃあセルパンに、また追い出しを頼んでいいかな」
ニニの首輪から普通のヘビサイズになったセルパンがするりと降りてくる。もう、この大きさでも怖く無いよ。
そのまま腕に巻き付かせて撫でてやり巣穴に入れてやろうとした時、突然アーケル君が手を挙げた。
「待ってください! 質問です!」
「お、おう。どうした」
セルパンを入れかけていた俺は、驚いて振り返る。
「これってどういう状況なんでしょうか。このまま巣穴に蛇を入れたら、巣穴の中にいるピンクジャンパーが全部飛び出して来ると思いますけど、そのまま戦って良いんですか? テイムするなら取り押さえないと駄目なんですよね?」
そう言ったアーケル君が、アルデアさんと揃って不思議そうに俺を見ている。
リナさんはどうやら俺達がやろうとしてる事が分かっていたらしく、説明しようとした俺に目配せをして、苦笑いしながらアーケル君の肩を叩いた。
「戦って良いんだよ。ピンクジャンパー如き、お前なら準備運動にもならんだろうけどな」
驚くアーケル君に、リナさんは自分の剣を抜いて見せる。
「まずは巣穴から飛び出して来るピンクジャンパーと戦うんだよ。全部出切ってしまえば、最後に繋ぎの子が出て来るから、テイムするならそれを捕まえるのが簡単だ。ピンクジャンパーはとにかくあちこち跳ね回るから、戦ってる最中にのんびりテイムなんかしてられるかってね」
「ああ、成る程。じゃあまずは遠慮無く戦って良いって事?」
頷くリナさんを見て、アーケル君は嬉しそうに頷いた。
「分かったよ。それじゃあケンさんは下がって見ていてください。俺の自慢の風の術をお見せします!」
胸を張るアーケル君を見て、俺は今回は戦うのを諦めた。
いや、俺は別に無理して戦いたい訳じゃあないので、邪魔者は下がって後ろで見学させてもらうよ。
そしてちょっと面白い事に気がついたよ。リナさんの言葉遣いが時々変わってる。
多分、アルデアさんと話してる時や部屋で寛いでる時みたいな、女性らしい話し方が普段の話し方なんだろうけど、初めて会った頃や一番最初に一緒にホテルハンプールで食事をした時なんかは、今と同じでちょっと男っぽい少々乱暴な話し方をしてたんだよ。
無意識なのか、意識して使い分けてるのかは分からないけど、どうやら冒険者としてのリナさんはなかなか豪快な男っぽい性格らしい。
見かけは美少女なのに、あの言葉遣い。ううん、これがギャップ萌えってやつですか?
なんだかおかしくなって、俺は笑いを堪えるのに苦労していた。
「ええと、それじゃあお前らは危ないから向こうの方の巣穴へ行ってくれるか?」
ランドルさんの従魔達が加わってパワーアップした猫族軍団に、俺は奥にあるいくつも並んだ巣穴を指さす。
「そうね。術を使うのなら邪魔しちゃあいけないから。私達はあっちへ行くわね」
ニニがそう言って土手の奥側にある巣穴へ向かって行った。他の子達も嬉々としてニニの後を追って行った。
巣穴の数は向こうの方が多いから、あれだけあれば猫族軍団も少しは楽しめるだろう。
ランドルさんはやる気満々でリナさん達から少し離れた巣穴の前に陣取ってるし、ハスフェル達は今回は見学するつもりらしく、三人とも下がって俺達を眺めているだけだ。
「全員配置についたな。じゃあ入れるぞ」
大きな声でそう言ってから、腕に巻き付けていたセルパンを改めて撫でてやる。
「それじゃあ追い出しよろしく」
「了解よ」
得意気にそう言うと、セルパンはスルスルと巣穴の中へ入って行った。
俺はそのままハスフェル達のそばまで急いで走って行く。
「何だ、お前は不参加か?」
からかうようなハスフェルの言葉に、俺は笑って胸を張った。
「どう見ても、ここはリナさん達に任せるべき場面だろうが。俺は今回は、余計な口出しはしない事にしようと思ってさ」
「そうだな。確かにその通りだ」
笑ったギイの呟きに、俺達は揃って頷いたのだった。
そんな話をしていると、巣穴から突然緑色の塊が噴き出してくるのが見えて、全員が声を上げて一斉に飛びかかっていくのが見えた。
さあ、戦闘開始だ! 皆、頑張れ〜!