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テイムの仕方とテイマー希望者

 リナさんに、まずはピンクジャンパーを一匹テイムさせる事が当面の目標に決定したところで、俺達は従魔に乗って移動を開始した。

 ピンクジャンパーと聞いて俄然やる気を出すリナさんと、その後ろをセーブルに乗って走りながら先程から無言のままのアーケル君。



 皆何となく言葉も無いままに走り続け、間も無くピンクジャンパーの生息地へ到着するという頃に、アーケル君を乗せたセーブルが俺のすぐ横へ近寄って来た。

「ご主人、アーケル君が何やら質問したいみたいですよ。さっきからずっとぶつぶつと独り言を呟いてるんです。どうやったらご主人から話を聞けるかって悩んでいましたよ」

 面白がるみたいなセーブルの言葉に、俺は密かに笑いを堪えつつ驚いたふりをしてアーケル君を振り返った。

「質問って何だい?」

 彼の質問は予想出来たが、あえて知らんふりでそう言ってやる。

「ええ、いや、質問ってか、その……」

 何故だか慌てるアーケル君を見て、もう我慢出来ずに小さく吹き出す。

「いや、そのセーブルがさ、君が俺に何か質問があるって言ってるんだけど、俺で分かる事なら教えるよ?」

「ええ? 何でそんな事? ああそっか。ケンさんは従魔と話が出来るのか……」

 大きなため息と共にそう呟いたアーケル君は、意を決したかのように顔を上げて俺を見た。それはそれは真剣な顔でね。

「では、お言葉に甘えて質問させてください。テイムって具体的にどうやるんですか。その……俺にも出来ますか?」

 真剣なその言葉に、少し考える。



『なあシャムエル様、アーケル君にはテイマーの才能があるって言ってたよな?』

 マックスの頭に座って寛いでるシャムエル様に念話で尋ねる。

『そうだね。間違いなくテイマーの才能はあるよ。だけど言ったみたいに、何かが彼の才能が開花するのを塞いでるんだよね』

 振り返って困ったようにそう言うシャムエル様を見て、俺は決めた。

 才能が開花するかどうかは分からないけど、アーケル君もテイマーの卵として扱ってやるってね。



「もしかして、テイマーになりたい?」

 真剣な顔で頷くアーケル君に、俺は満足気に頷く。

「そっか、じゃあまずはアーケル君も何か一匹テイムしてみるかい?」

「やってみたいです。でも、その、実際にどうやってテイムするんですか? 昨夜の話では取り押さえてテイムするって言ってましたけど?」

 一瞬、何を聞いているのか分からなくて考えたが、理解して思わず笑っちゃったよ。

「そっか、肝心のテイムのやり方を言ってなかったな」

 笑いを堪えてそう言い、一つ深呼吸をしてから改めてアーケル君を見つめた。

「まず、言ったように目的のジェムモンスターや魔獣を確保する。つまり抵抗出来ない状態にするわけだ。俺が従魔達から聞いたところ、魔獣使いやテイマーに確保されると、その時に意識が鮮明になって覚悟するんだって。今からこの人に従うんだなって。つまり、それまではただ生きるだけの存在だった個体にそう理解するだけの知識が備わる訳だ。なので、その状態になった時に頭を押さえて言ってやればいい。俺の従魔になれって」

「ええ、たったそれだけですか?」

 驚くアーケル君に俺は笑って大きく頷く。

「ただし、これには個体差があってそう簡単じゃあない場合もある。以前、ランドルさんとも話した事があったんだけど、テイムする時って物理的な確保だけじゃなくて、人とジェムモンスターの間に間違いなく精神的な力対決の部分があるんだよな。それほど強く無いジェムモンスターだったら、言ったように叩きのめして確保して仕舞えばほぼ間違いなくテイム出来るんだけど、ある程度以上の強い奴になると、物理的に確保されて俺の従魔になれって言われた時に、精神的な部分で最後の抵抗を試みるんだ。お前如きが俺をテイム出来るのかってね」



 今の俺達は、早足くらいの速さでマックスを走らせながらセーブルに乗ったアーケル君と話をしている。

 リナさんは俺の少し後ろをニニに乗って追いかけて来ているんだけど、間違いなく俺達の話を聞いている。

 振り返りたくなるのを我慢して、俺はゆっくりとため息を吐いた。

「抵抗の仕方は様々で、唸ったり、嫌がるみたいに首を振ったりする。俺の従魔になれって一度言っただけでは効かない子もいる。例えばオーロラグリーンタイガーのティグをテイムした時なんて、もうまずあの強い視線に真正面から睨みつけられて、俺は決死の覚悟で必死で睨み返したけど、正直言うとあの時って足が震えてたよ」

 誤魔化すように笑って肩を竦める俺を見て、アーケル君は呆然としている。

「そんな状態で、どうやってテイムしたんですか?」

「俺は氷の術が使えるからね。従魔達総出で取り押さえて貰ったところへ、ガッチガチに凝固させたこれくらいの氷の塊を、俺の腕に噛みつこうとして大きく開けた口に放り込んでやったのさ。最大の武器である牙を封じて、その上で言ってやったんだ。俺の従魔になれ、ってね。普段はいつも、俺の従魔になるか?って感じで、相手に決断させる言い方をしてたんだけど、そんな生っちょろいやり方ではこいつはテイム出来ないって本気で思ったからね。だから力を込めて断言してやったんだ。俺の従魔になれ、ってね。抵抗がやめば手を離していい。そうすればジェムモンスターは起き上がってこう言うよ。あなたに従いますってね。これがいわば従魔側からの宣誓なわけだ。これで支配は完了。名前を与えるならこのタイミングで与えるんだ。魔獣使いならここで一緒に紋章も刻むよ。まあ、これはもう経験でしか理解出来ない部分もあるだろうからさ。まずは何でも良いから一匹捕まえてテイムしてみるんだな。万一失敗した時の事を考えて、弱いジェムモンスターで試してみるのが良いんじゃあないか?」

「ええと、それなら……スライムでしょうかね?」



 魔獣使いのスライム保有率はかなり高い。簡単に見つけられるし、捕まえるのも簡単だもんな。



「良いんじゃ無いか。ああ、ピンクジャンパーも簡単に捕まえられるぞ」

 たった今気付いたみたいに言ってやると、わかりやすく笑顔になるアーケル君。

「そうですね。ダメ元で一度やってみます。ありがとうございました! また教えてください!」

 目を輝かせてそう言ったアーケル君が少し離れる。

「おう、頑張ってな」

 出来るだけ軽い口調でそう言ってやり、俺はリナさんを振り返った。

 何か言いたげに真顔で俺を見つめているリナさんに、俺は笑って肩を竦めた。

「でも、まずはリナさんからですよね。頑張ってください。ウサギ系はそりゃあ可愛いですよ」

 真剣な顔で無言で頷くリナさんに、俺はもう一度笑って肩を竦めるのだった。

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