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旅の食事は俺に任せろ!

「ええ、それで本当は誰が勝ったんですか?」

 笑いながらてんでばらばらな人を勝手に指差す俺達を見て、アーケル君がそう言って笑っている。

「同着ですよ。横一列のままでしたから、俺達も結局誰が一番だったかなんて全然分かりませんって」

 笑ったランドルさんの答えを聞いて、リナさん達も一緒に笑っている。

「それにしてもすごい速さでしたね。早駆け祭りの英雄の名は伊達じゃありませんね」

 感心したようなアルデアさんの声に、俺達も顔を見合わせて笑い合った。

「全く、相変わらずよね」

「本当だわ。あんな事して何が面白いのかしらねえ」

「疲れるだけなのにねえ」

 呆れたみたいにそう言いながら俺達を見ている猫族軍団の言葉に、俺はもう笑いを止められない。

「猫族軍団は、相変わらず駆けっこの楽しさは全然分かってないみたいだよなあ」

「本当ですよね。こんなに楽しいのに、もったいない」

 大真面目なマックスの答えに、また吹き出す俺だったよ。




「さて、それじゃあどこかその辺で昼を食って、そのまま目的のカルーシュ山脈へ向かうか。どうする? どこか良さそうな場所ってあるか?」

 辺りを見回すと、ハスフェルが雑木林の方角を指さした。

「あの雑木林の向こうに綺麗な水場があるぞ。ほとんど人の来ない場所だからとても綺麗な良い泉だ。あそこなら広い場所があるから大人数でも食事が出来るだろう」

「へえ、そりゃあ良い。じゃあそこにしよう。作り置きを出すから好きに食べてくれよな」

「ええ、またご一緒させていただけるんですか?」

 遠慮がちなランドルさんの声に、俺は笑って振り返る。

「もちろんですよ。どうぞ遠慮なく食べてください」

「ありがとうございます! 一応、屋台の作り置きの品は買い込んでいるので、サンドイッチや串焼きなんかは俺も少しは提供出来ますよ」

「確か、相当良い収納袋を買ったって言ってたもんな。良いですね。じゃあ良さげなのがあったら一緒に提供してください」

 あえて断るより、こう言っておいた方がランドルさんも遠慮なく食べてくれそうなので、作り置きに関しては有り難くお願いしておく。



 そのまま移動して雑木林を抜けた所には、確かに綺麗な水が湧く泉があり、そこから流れ出した小川が雑木林沿いに流れていくのが見えた。泉の手前側は芝生の広がる草地になっていて、ほぼ平坦で足元も硬い。ここなら机を出しても大丈夫そうだ。

「へえ、綺麗なところだな。それじゃあここに机を出すか」

 マックスから降りて足場を確認した俺は、鞄に飛び込んでくれたサクラからいつもの机と椅子のセットを取り出して並べた。

「手伝うよ」

 駆け寄って来たハスフェル達が手伝ってくれたので、鞄を置いた俺はリナさん達を振り返った。

「リナさん達もこっちへ来て一緒に食べてください。俺の流儀で、一緒のパーティーは一緒に飯を食う事にしてるんですよ」

 驚いた顔で振り返るリナさん達に、俺は大きく頷いて取り出したサンドイッチの並んだ皿を見せた。

「俺の収納は時間停止なんですよ。なので、作り置きの料理や、まとめて買った食材をたくさん持っているんです。料理は得意なのでどうぞ遠慮なく食べてください」

「ええ、そんな、とんでもありませんよ」

 驚いて顔の前で手を振るリナさん達を見て、ランドルさんが笑って椅子を持ってきて机の横に置き座った。

「せっかくですからご一緒させていただきましょう。俺も、前回ここで狩りにご一緒させてもらった時は、毎回ケンさんの料理を頂きました。美味しいので食べないと絶対に後悔しますよ。俺はもう携帯食と干し肉と水だけの食事なんて絶対に我慢出来なくなりましたからね。そのために、今後の一人旅に備えて、俺は大枚叩いて時間遅延の性能付きの最高級品の収納袋を手に入れたくらいですから」

 その言葉に、俺とハスフェル達が同時に吹き出し揃って頷く。

「確かに、もう携帯食と干し肉だけの食事なんて、非常時以外は食いたくないなあ」

「だよな。一応は俺も持っているけど、今となっては保険みたいなものだからなあ」

「全くだな。ケンの料理を一度食ってしまうと、保存食なんて味気のないものは出来れば食いたくないなあ」

 ハスフェル達がうんうんと頷きながらそんな事を言うのを聞いて、俺は笑って鶏ハムの塊を取り出しながら振り返った。

「そりゃあ悪い事したなあ。じゃあ、料理を作るのはやめようか?」

「おい、今更そんな事されたら俺は泣くぞ!」

 真顔のハスフェルの言葉と、揃って頷く神様達を見てもう一度盛大に吹き出す俺だったね。

 あぁあ。俺、本当に神様を餌付けしちゃったみたいだよ。



 それでも固辞するリナさん一家と相談の結果、万能薬の材料にもなる草原エルフの故郷の森でしか取れないのだと言う貴重な薬草を大量に持っているそうなのでそれを分けてもらい、俺が食事を提供するって事で話がまとまった。

 義理堅い人達だよ。

 だけど万能薬の材料になる薬草なら今の俺達には絶対に欲しいものなので、大喜びでお願いした。



 って事で、昼は俺とランドルさんが提供したサンドイッチをはじめとしたいつものメニューで、リナさん一家も一緒に食事を楽しんだ。

 シャムエル様はオムレツサンドと鶏ハムをもらってご機嫌で丸齧りしていた。

「これ美味しいです。初めて食べました!」

 アーケル君は、俺が作ったキャベツサンドが気に入ったらしく、二個目を完食して三個目に突入している。



 のんびりと食後のコーヒーを飲みながら、リナさんにまずは何をテイムさせるのが良いか考えていたのだった。

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[一言] 神をも堕落させる魔性の男、ケン………?(;・д・)
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