もふもふトランポリンタイムとその後
「俺も入れてくださ〜〜い!」
叫んで勢いよくスライムトランポリンに飛び込んで行く俺。
そこは文字通りのもふもふパラダイスだった。
「ヒャッホ〜〜〜!」
丁度マックスとセーブルの隙間に落ちた俺を、二匹が息を揃えて器用に鼻先を使って上空へ放り投げる。
声を立てて笑いながらまた落ちると、今度はニニと猫族軍団が待ち構えていた。
「ご主人来た〜〜!」
嬉しそうな声でニニがそう叫び、俺に飛びついて来る。
「待て待て、うわあ〜〜!」
タイミング良くニニの腹側に抱きつけたので、そのまま抱き付いてもふもふを堪能しつつ、スライムトランポリンの反動でニニと一緒に飛び上がりまた落ちる。
何度かニニと一緒に飛び跳ねたあと、そのまま離れて今度は一人で跳ね上がる。
楽しそうな笑い声にそっちを見ると、リナさんがラパンを抱きしめたまま飛び跳ねていた。
しかも跳ね上げられる度に、巨大化したコニーが背中側から体当たりしてその小さな体をラパンごとソフトキックで吹っ飛ばしている。
楽しそうな悲鳴を上げたリナさんとラパンが転がるのを見て、跳ね飛んで来た猫族軍団が爪無し猫パンチで彼女をさらに転がす。
そこへまた、コニーのソフトキックが炸裂する。
「ああ、良いなあ。すっげえ楽しそう」
思わずそう呟くと、次に俺目掛けて飛びついて来たのはセーブルだった。
「ご主人、ほら!」
両手を広げてハグ待ちの体勢になるのを見て、笑い声を上げてその胸元に飛び込む。
正面から抱き合ったまま、転がっては跳ね飛びまた転がる。
セーブルのホールドする力は強すぎず緩すぎず完璧だ。しっかりとホールドされているから、どれだけ転がされても全く不安は感じない。
しばらくセーブルと一緒に転がった後、離れて今度はテンペストとファインがリナさんに突撃して行くのを見ながら、飛びついて来た猫サイズのタロンとソレイユとフォールにトリプル爪なし猫パンチの洗礼を受けた。
とにかく、俺の従魔達は運動能力が半端ない。
足場の悪いこのスライムトランポリンの上でも、絶妙に体のバランスを取っていて自在に動き回っている。
跳ね飛ばされるがままに上下するだけの俺とは大違いだ。
「ご主人!」
またニニが突撃して来て今度は俺を背中側にしがみつかせる。
「毛玉攻撃〜〜〜!」
巨大化したラパンとコニーが俺に突進してくる。
「うわあ、やられた〜〜〜!」
笑ってそう叫びながら、両手を広げて巨大化した二匹まとめて抱きしめてやる。
まあ、巨大化と言っても大型犬サイズだから出来る事だけどさ。
「はあい、時間だぞ〜」
笑ったハスフェルの声に我に返る。10分は本当にあっという間だった。
「どうするご主人、もう良いですか?」
アクアの声が聞こえて、俺は笑って頷いた。
だって、リナさんはもうこの10分間、ずっと笑っていたんだから。
反動の無くなった足元をそっと撫でてから、スライムトランポリンから降りる。
従魔達も俺に続いてぞろぞろと降りてくる。
「お疲れさん。すっげえ楽しかったよ」
マックスとニニの大きな頭を順番に抱きしめてやり、それからセーブルに抱きつく。
「楽しかったです、また遊びましょうね」
まだはしゃいでいるセーブルの頭を思いっきり撫でてから、他の子達も全員順番におにぎりの刑に処していった。
最後のテンペストを離した時、俺の背後から声を掛けられた。
「あの、ありがとうございました。本当に楽しかったです。まだ、夢を見てるみたい……」
目元はまだ少し赤みが残っていたが、さっきと違いその頬はまるで子供みたいに真っ赤になってるし、何よりもその瞳がキラッキラ。夢見る少女そのままだったよ。五人の子持ちだけどね。
「楽しかったのなら良かったです。またやりましょうね。これくらい、いつでもやってあげますよ」
俺の言葉に、揃って満面の笑みになるリナさんとアーケル君とアルデアさん。
いや、今のはリナさんに言ったんだけど……アーケル君だけじゃなく、アルデアさんも大はしゃぎで飛び跳ねてたから、一家揃って楽しんでくれたみたいだし、まあ良いか。
内心で笑ってツッコミ、すり寄って来たニニの頭を半ば無意識で撫でてやる。
しばらくニニと戯れてからこっそり様子を伺うと、目を輝かせたリナさんが両手を胸元で握りしめて無言でニニを見つめているのに気付いて、俺は耳元に顔を寄せた。
「なあ、ちょっとくらい撫でさせてやっても良いよな?」
小さな声でそう聞くと、ニニは当然だと言わんばかりに笑って頷き目を細めて声の無いにゃーをしてくれた。
「よかったらちょっと触ってみますか? この子は俺の一番最初の仲間でニニって言います。レッドリンクスの亜種ですよ」
首元のもふもふ部分を撫でてやりながら、なんでも無い事のようにそう言ってやると、一瞬目を見開いた彼女は戸惑うように首を振った。
ううん、さっきと違ってまだちょっと直接撫でるのは難しいかな?
若干不安に思いつつ様子を伺っていると、彼女の後ろにいたアーケル君が俺を見て大きく頷いた。そのまま彼女の背中を背後から押す。
勢い余って前に進み出る彼女。それを見たニニが、まるで呼ばれたかのように彼女に向かって突撃して行く。
嬉しそうに頭を下げて額から飛び込んで来たニニのその大きな頭を、彼女が両手を広げて抱きしめるのを俺達は目を輝かせて見つめていた。
「ルル……ルル……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ、い……」
しかし彼女は、ニニの頭を抱きしめたまま、別の従魔の名前を呼びながら、何度も何度も謝り続けていたのだった。