今後の予定
「ええと、リナさん達に伝言を残すならなんて言っておく? 数日のうちに出発予定? それとも、何日後に出発とかって、日にちを決めた方が良いのかな?」
よく考えたらこの後どれくらい滞在するかはベリー次第なので、ちょっと予定が決められない。
「どうするかな。それより、さっき引き取った栗は、どうするんだ。先に調理するんだろう?」
「俺は焼き栗が食べたいんだけどなあ」
「焼き栗なら俺も食べたい」
ギイの言葉に、ハスフェルとオンハルトの爺さんまでが揃って頷いて手を上げてる。
「あはは。わかったよ。それを言うなら俺だって食べたい。ってか、出来れば栗は食べたいと思った時に、すぐに食べられるように茹でたり焼いたりしてから持っておきたいんだけどなあ」
俺も頷きながらそう答えると、手を下ろした三人が揃って嬉しそうに頷く。
ううん、栗は主に俺が食べたくて注文したんだが、普通に山分けになったみたいだ。独り占め計画は頓挫した模様。残念でした。
「そうか、それならベリーに確認するからちょっと待ってくれるか」
ハスフェルがそう言って部屋の隅へ移動した直後、頭の中に念話のトークルームが開かれたのが分かった。
『おや、どうかなさいましたか?』
笑ったベリーの声が聞こえる。
『忙しいところをすまない。今話しても大丈夫か?』
『ええ、構いませんよ。今、大きなコロニーを一通り収穫し終えてちょっと一息入れていたところです。ああケン、事後報告で申し訳ないんですが、アルファちゃんが持っていた果物を幾つか頂いています』
『ああ、もちろん構わないよ。ゆっくり休憩しておくれ』
ベリーの言葉に笑って応える。
『スライム達には、ベリーやフランマ達に頼まれたら、いつでも手持ちの果物を出してやるように言ってあるから、遠慮は要らないよ』
『ありがとうございます』
嬉しそうなベリーの声と一緒に、フランマとカリディアの笑ってお礼を言う声も聞こえる。
『それで、そっちの様子はどんな感じだ? 大きなコロニーの収穫を終えたって事は、もう収穫作業は終わりそうか?』
和やかに話をしてたら、苦笑いしたハスフェルに割り込まれた。そうだったよ。これを聞く為に呼んだんだよな。
『そうですね。他にもいくつか珍しい薬草を発見しましたので、出来れば取りこぼしが無いように細かく確認したいんです。あと二日か三日あれば、ほぼ全ての断崖を確認出来ますね。急ぐのなら、あと一日でなんとかしますけれど?』
『いやいや、そんな無茶は言わないよ。それならあと三日あれば大丈夫か?』
ハスフェルが横目で俺を見るので、代表して俺が話す。
『そうですね。三日もらえたら余裕で何とか出来ますね』
『了解、じゃあ一日余裕を見て四日後に出発の予定にしよう。それと一つ確認なんだけどさ。聞いていたかもしれないけど、あの草原エルフのリナさん一家と一緒にバイゼンまで行く事になったんだけど、ベリーはリナさん達に姿を見せるのは不味いのかな?』
『森林エルフなら友人も多いんですがね。草原エルフは、どちらかと言うと私達よりは人間に近い存在ですから、不用意な接触は避けたいですね。彼女達の事を信用しない訳ではありませんが、あくまでバイゼンまでの一時的な同行者なのですよね?』
『そのつもりだよ。彼女にテイムの楽しさと従魔達といる事の楽しさを思い出させてほしいって言われてるんだよ。だから道中は遠慮なく彼女の前で従魔達と思い切り戯れてやる。それから時間を取って、セーブルの以前のご主人の事とかも話してみようかと思ってさ』
従魔と主人って立場は逆だけど、辛い思いを乗り越えて、その記憶を全部持ったままで俺の所へ来たセーブル。
そんな彼が今は幸せなんだって事を理解してもらえたら、もしかしたら、彼女の頑なな考えも変わるんじゃないかと期待してる。
まあ、思い込みは激しそうだからどうなるかは分からないけどさ。
『ああ、それは良いんじゃないでしょうかね。ですがその程度なら、やはり不用意に姿を見せる必要は無いでしょうね。会話は念話で出来ますし、いつものように姿を隠して同行させて頂きます。空を長距離移動の際は、私とフランマはファルコの後ろにでもこっそり乗せていただきます』
『了解だ。じゃあリナさん一家には、四日後に出発予定だけどそれでいいですか? って伝言しておけば良いな。どうせその間にも街へは買い出しに来るから、その時に返事は聞けるだろうからさ』
『良いんじゃないか。じゃあその予定で行こう』
『四日もあるなら、その間に一度くらい郊外へ狩りに出かけてもいいかもしれないな』
嬉しそうなギイの言葉に、俺が慌てる。
「俺はもうちょい別荘の豪華キッチンで料理をするから、行くなら俺はパスだぞ」
声に出してそう言ってやると、何故か顔を見合わせた三人から肩や背中を叩かれる。
「なあ、それならリクエストしてもいいか?」
「リクエスト? 料理のか?」
揃って頷く三人を見て笑った俺は胸を張った。
「おう、良いぞ。俺に作れる料理なら作るよ。で、何が食べたいんだ?」
すると、三人揃って目を輝かせてこう言ったんだよ。
「カレーライスをお願いします!」ってさ。
もちろん、サムズアップで応えてやったよ。