表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
729/2067

ダンスと食事

「お待たせ〜。ええと、サンドイッチで良いか?」

 肉くらいなら、焼いても良いかと思ったんだが、ハスフェル達が、おにぎりが食べたいと言うので作り置きのおにぎり各種を揚げ物とサラダ、味噌汁と一緒に出してやり、好きに食べてもらう事にした。



「俺は、肉巻きおにぎりとシャケもどきと梅干し……もう一個肉巻きおにぎりと、三色おにぎりと天むすも追加しておこう。それからサイドメニューも多めに取っておくべきだな」

 最初の三個をお皿に乗せて味噌汁の鍋を見ると、その横で大きなお皿を持って目を輝かせたシャムエル様と目があったんだよ。視線は肉巻きおにぎりに完全にロックオンしてるし、それ以外も絶対半分欲しいって言われるパターンだよな。って事で、それ以外にも色々多めに取っておく。

「ああそうだ。サクラ、浅漬けのお皿も出しといてくれるか」

 おにぎりと味噌汁に揚げ物ちょっと。うん、これは箸休めが必要だよな。

「はあい。これだね」

 元気良く返事をしたサクラが、大根とにんじんの浅漬けと、キャベツを乱切りにしてから塩揉みにして、塩昆布と混ぜ合わせたのを出してくれた。これ、簡単に出来て美味しい箸休めなんだよなあ。

 それもちょいちょいと取り分けておにぎりの横に一緒に盛り合わせておく。

 うん、これは完全に二人前は余裕だね。



 いつもの簡易祭壇に、おにぎり各種と揚げ物とサラダ、それからワカメと豆腐の味噌汁を並べ、マイカップには冷やした麦茶を注いで横に並べる。

「朝昼兼用になっちゃったけど、大盛りおにぎり定食をどうぞ」

 並んだ内容を見ると、まあおにぎりの数は多過ぎるけど、俺がバイトしていた定食屋のおにぎり定食っぽかったのでそう命名して手を合わせる。

 いつもの収めの手が俺の頭を撫でてから、嬉しそうにおにぎりや揚げ物などを順番に何度も撫でてから消えていった。

「お待たせ、それじゃあ頂くとしよう」

 待ってくれていたハスフェル達にお礼を言って、お皿を持って自分の席に座る。



「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 お皿を振り回しながらステップを踏んでいると、一瞬でカリディアが隣に来て一緒にステップを踏み始める。

 今日のは、まるで打ち合わせをしていたみたいにほぼ同時に同じステップを踏み、時折左右に分かれて手を取り合って左右対称に踊って見せる。それほど激しいステップじゃないのに、見事なまでの統一感。本当に何なんだよ、この二人。

 最後はクルッと一回転して揃ってきめのポーズで止まる。

「ブラボ〜ブラボ〜〜〜!」

 俺の拍手に続いて、こちらも手を止めてダンスを見ていたハスフェル達までが、笑って一緒に拍手をしてくれた。

 確かに今日のはダンス対決じゃなくて、仲良く一緒にお互いに合わせて踊ったって感じだったよね。

「いやあ、カリディアは本当に素晴らしいね。一度踊ったステップは、もう完全に覚えてるんだからさ」

「唯一、これだけは出来ると堂々と胸を張って言える事ですからね」

 目をキラキラと輝かせながら、カリディアが嬉しそうにそう言って胸を張る。

「良いね良いね。自分の技術もメキメキ上がるのが分かるねえ。うん、ライバルって大事なんだね」

「ええ、とんでもありません、私如きがライバルだなんて!」

 焦って首を振るカリディアに、シャムエル様が横へ行ってくっつく。

「私は嬉しいよ、これからも一緒に踊ろうね」

「はい、もちろんです。どうぞよろしくお願いします!」

 嬉しそうにそう叫んで、二人は互いに短い手を伸ばしあってがっしりと抱き合った。

 そのまま足だけでステップを踏んで、右回りでクルクルと回転し始める。

 声を立てて笑う二人は、とても楽しそうだ。



「おおい、いらないなら食べちゃうぞ〜」

「ああ〜それは駄目です〜〜〜!」

 肉巻きおにぎりを箸で摘んで見せてやると、ピタリと止まってもう一度きめのポーズを取ったシャムエル様が、慌てたように俺のところへ走ってくる。

 当然、手には一瞬で取り出したいつものお皿付きだ。

 置いて行かれたカリディアは、そんなシャムエル様を見て、声を立てて笑っている。

「で、どれがいるんだ?」

「肉巻きおにぎりと、あとは半分ずつください!」

 予想通りの答えに、俺は笑って箸でおにぎりを半分に切ってやる。揚げ物も半分お皿に並べてやり、箸休めもちょっとずつ盛り合わせておく。

「お味噌汁はここにください!」

 これまた一瞬で取り出して差し出されたお椀に味噌汁を入れてやり、ショットグラスには麦茶を入れてやる。

「うん、予想通りの量になったな」

 自分のお皿に残った半分になったおにぎりを見て小さく笑う。

「まあいいや。いただきます」

 もう一度手を合わせてから、まずは肉巻きおにぎりにかぶりついた。



「さて、今日はどうするかねえ」

 朝昼兼用になった食事を終えて二杯目の麦茶を飲みながら、大きく伸びをして豪華な天井を見上げる。

「そういえば、よく考えたらギルドに栗が届いてるのを引き取りに行くのを忘れてるよなあ」

「ああ、そういえばそんな事を言ってたな。じゃあ、一旦街へ降りてギルドでそれを引き取ったら一度草原エルフの一家に連絡を取ってみろよ。その後は、買い物でもすれば良いんじゃないか?」

「だな。朝市と食材の買い出しは明日にするとして、ギルドで用事を済ませた後は、言ってた予備の剣を見たいからバッカスさんの店へ行くか」

「その予定で良いんじゃないか。それじゃあ、少し休んだらまずは街へ行こう」



 って事で。無事に本日の予定が決まったところで、俺は残りの麦茶を飲み干したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 不具合修正されてよかったねぇと思ってたらもうもうもうシャムエル様&カリディアにはシルクハットかぶせたーい(*´∀`*)
[良い点] 冒険者ギルド・預り倉庫内の栗たち「やっと思い出してくれたー!!(半泣き)」 栗の中の虫(ゾウムシの幼虫)たち「さぁ、恐怖の時間の始まりです(笑)」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ