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夕食はコロッケと地ビール!

『ケン、戻りましたけど、従魔達もそのまま家の中へ入って大丈夫ですか?』

 武器の手入れを終えて、さあ夕食にしようと話をしていた時、突然ベリーからの念話が届いて俺は飛び上がった。

「あ、ああ。構わないよ。もうここは買ったんだから出入りは自由だって。中に入りたい子は入ってくれて良いよ。厩舎が良い子はそっちへどうぞ」

 ついつい声にだして返事をしてしまい、それを聞いたハスフェルに笑われたよ。

『了解です。エラフィとデネブは厩舎がいいらしいので、それ以外の子達で行きますね』

 オンハルトの爺さんの騎獣で、見事な角の持ち主でもある鹿みたいなグレイエルクの亜種のエラフィと、ギイの騎獣である、ブラックラプトルのデネブは厩舎がいいらしい。



 しばらくすると、賑やかな足音と共にベリー達が戻って来た。

「おかえり、楽しかったみたいだな」

 興奮のあまり尻尾を扇風機みたいにしたマックスが直ぐに俺の所へ駆けて来て、そのまま勢いよく俺に頭突きをした。

「こらこら。甘えるにしても今のお前の体の大きさを考えろって。吹っ飛ばされたらどうしてくれるんだよ。ほらおいで」

 笑って両手を差し出してやると、上手に腕の中に鼻先を突っ込んでくる。

「マックス、お日様の匂いがする」

 そのまま大きな頭を抱きしめてやると、むくむくの毛の額から草と枯葉と土の匂い、要するに外の香りがして笑った俺は、その大きな額に俺の額を押し付けてグリグリしてやった。

「ええ、すごく楽しかったです。たくさん追いかけっこやかくれんぼをしました。今度、春に来たらまた庭の様子がガラリと変わっているだろうねって、皆と話していたんですよ」

「ああ、そりゃあそうだろうな。今はもう、そろそろ葉が落ちて下草も枯れてきているもんな。春の新緑の季節は綺麗だろうなあ」

 この世界は今は秋、そろそろ森も紅葉し始めている季節だ。

 特に早駆け祭りの前と後では、周りの木々の色合いが一気に変わってきている気がする。

「旅に出る頃には、見事な紅葉が楽しめそうだな」

 川側の断崖絶壁になってる方は、針葉樹が時折生えているくらいだけど、別荘へと続く坂道沿いは、何本もの広葉樹が大きく育っている。

 あまり気にして無かったけど、今度来る時は周りの風景をもっと見て楽しみながら上がって来ても良いかも。



 次々に交代で甘えてくる従魔達としばしのスキンシップを楽しんでから、果物の入った箱を出しておいてやる。それから改めてハスフェル達に向き直った。

「お待たせ。それじゃあ俺達も食事にしようか。今日もデザートがあるからお楽しみにな」

 俺の言葉に、ハスフェル達だけで無く、シャムエル様までが一緒になって喜んでる。

 ついさっき、丸ごと一人前食ったのにまだ食べられるんだ。密かに遠い目になる俺だったよ。

 最近のシャムエル様の食欲がマジで怖いよ。




「ええと、コロッケを作ったんだけど、ご飯とパンとどっちが良い?」

 山盛りのコロッケと一緒にサラダやフライドポテトなどのサイドメニューを取り出しながら尋ねると、いつもの如くハスフェルとギイがパンに手を上げ、オンハルトの爺さんはご飯希望。俺もご飯が食べたかったので炊き立てご飯の入ったおひつと、パンも適当に盛り合わせて色々取り出して並べておく。いつもの簡易オーブンも出しておいたので、焼きたい人はセルフでどうぞ。

「コロッケには専用のソースを作ったから、よかったら食べてみてくれよな。これはやや甘めのオーロラソースで、こっちは辛めのスパイシーソースだよ」

 コロッケだけでは変化に乏しいかと思い、トンカツやチキンカツなんかも適当に取り出して並べておく。

「言っとくけど、揚げ物にこのスパイシーソースを使うと、何故かビールが蒸発するからな」

 大真面目な俺の言葉に、三人が同時に吹き出す。

「それは危険なソースだなあ。じゃあ無くなったら困るから、先に追加しておくか」

 笑ったハスフェルが、ビールの瓶をいくつも取り出す。

「ああ、それってもしかして以前買ってた地ビール?」

「おう、良い機会だから、別荘購入記念の祝杯といこうじゃないか」

「確かにこれだけの家を買ったんだもんな。祝杯くらいあげても良いかも」

 笑った俺も、冷やしてあった地ビールの在庫をサクラに出してもらった。



 それぞれマイグラスに好きなビールを入れる。

 俺はラベルに猫の絵が描かれたやや濃い色のビールを開けてみた。特に理由はない。なんとなく美味しそうな気がしたからだ。

 シャムエル様の差し出すショットグラスにも同じのを入れてやると、あっという間にひと瓶無くなったよ。ううん、いつも飲んでる白ビールの瓶よりもかなり小さかったみたいだ。



 お皿にいくつもコロッケを取り、半分にたっぷりのオーロラソースをかけて、残り半分はスパイシーソースをたっぷりとかける。俺はこのソースが衣にちょっと染みて柔らかくなったのも好きなんだよな。

 サイドメニューのサラダやポテトも山盛りに取っておく。

 ご飯もよそってから、サクラが用意してくれていたいつもの簡易祭壇に一通り並べて、マイグラスの地ビールと一緒に瓶入りの他の地ビールも一通り並べておく。

「ミートコロッケだよ。オーロラソースとスパイシーソースでどうぞ。付け合わせはサラダとフライドポテトです。ビールが進むメニューなので、ちょっと変わった地ビールと一緒にどうぞ」

 手を合わせてそう呟くと、いつもの収めの手が俺を撫でてから、コロッケのお皿とビールを順番に嬉しそうに撫でてから消えていった。



「デザートは後でな。でも今日食べられるかなあ」

 なんと無く宴会になったらそのまま撃沈しそうな気がして、もう一度祭壇に手を合わせておく。

「酔い潰れたらごめんなさい。デザートはもしかしたら明日になるかも」

 小さくそう呟くと、収めの手がもう一度現れて、俺の目の前でOKマークを作ってから消えていった。

「あはは、じゃあ許可も出た事だから遠慮無く飲ませてもらうとするか」

 笑った俺は、供えてあった俺のお皿とビールを順番に自分の席へ戻して席につき、改めて手を合わせた。

「じゃあ、別荘購入を祝して、かんぱ〜い!」

「かんぱ〜い」

 ご機嫌なシャムエル様が乾杯の音頭を取り、笑った俺達がそれに続いた。

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