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コロッケを作るぞ!

「くああ、やっぱり冷えたビール最高〜」

 キッチンへ到着するなり、俺は机の上に鞄を下ろし、お預けを食らって収納してあったマイビールセットをそそくさと取り出して、まずはグイッと一杯、グラスの半分ぐらいを一気に飲み干した。

 おっさんみたいなため息が出たけど気にしない気にしない。




「さてと、何を作るかなあ。せっかくこんなに立派なキッチンがあるんだし、肉を焼くだけってのも愛想が無いよなあ」

 残りのビールを飲みながら、何を作るか考える。

「よし、ミンチをたっぷり入れたコロッケにしよう。あれは手間が掛かるけど、今ならスライム達がいるから絶対楽に作業出来そうだもんな」

 残りのビールをひとまず飲み干した俺は、スライム達を呼んで机の上に上がってもらった。

「ええとサクラ、今から言う材料を出してくれるか。まずはじゃがいもと玉ねぎ、それから合い挽き肉」

「はあい、これだね」

 木箱に入った玉ねぎとじゃがいも、それから大きなバットに山盛りの合い挽き肉が取り出される。

 これは普通の豚と牛の切り落とし肉を中心に作り置きしてもらっている分だ。実はかなり良い部位の肉も入ってるんだぞ。

「ええと味付けは、醤油と酒と砂糖とみりん、それから塩胡椒。後は小麦粉と生卵と生パン粉だな」

 次々に出てくる材料を見て、スライム達が張り切り出す。

「ご主人、今日は何を作るの〜?」

「お手伝いするよ〜!」

 ここなら安全だと判断したのか、いつもはアクアの中から出てこないレース模様のクロッシェまでもが出てきて、お手伝いするんだと言って大張り切りしている。

 そうだよな。クロッシェが自由に出来るってだけでも、ここを買った意味があるよな。



「今からコロッケを作るからな。順番に手伝ってもらうから、ちょっと待っててくれよな」

 大きめの両手鍋を取り出し、水をたっぷりと入れておく。

「ええと、じゃがいもを……大体これくらいで良いから、いつものように皮を剥いて芽を取ってくれるか。それで四等分くらいで良いから切り分けて、それからこっちの玉ねぎも、いつものように皮を剥いたらみじん切りにしてくれるか」

 設置されている強火用のコンロに水を入れた鍋を置き、隣のコンロには大きめのフライパンを取り出す。

「みじん切り出来たよ。どこへ出す?」

 ベータが跳ね飛んできてくれたので、そのままフライパンに出してもらう。

「ジャガイモも準備完了です。どこに出したらいい?」

 ガンマとデルタがそう言って跳ね飛んできたので、さっきの水を入れた鍋にじゃがいもを入れてもらう。

「それじゃあ火をつけるから、ちょっとの間避難してろよ」

 そう言って大鍋とフライパンに火をつける。

 みじん切りの玉ねぎにはオリーブオイルを入れて、しっかりと炒めていく。

「火が通って透明になったら、合い挽き肉を入れて、そこに調味料を入れるよ」

 そう言って、おたまで計りながら醤油と酒、砂糖とみりんを入れて行く、最後にしっかり目に塩胡椒をしてから、玉ねぎと一緒に合い挽き肉を焦がさないように炒めていく。

 肉に完全に火が通るまで炒めたら、一旦火からおろす。

「へえ、いつも使ってる簡易コンロよりもやっぱり火力が強いな。それに炒める時の安定感が違うぞ」

 鍋を思い切り振っても当然だけど動かないし安定している。ううん、これに慣れると郊外での料理がちょっと辛くなりそうだ。



「ジャガイモはそろそろ茹だったかな?」

 水から茹でた大鍋は、先ほどからずっとグツグツと煮えたぎっている。

「どれどれ、ううん、もうちょいだな」

 ちょっと弱火にして、そのままジャガイモに火が通るのを待つ。

「ああ、パセリを忘れてた。ええと、パセリも出してくれるか。大きいのをひと束な」

 以前、朝市で見つけて彩り用に買ったパセリだけど、ここでは食材としての貴重な出番だ。

「こんな感じに、葉の部分をちぎって、細かく刻んで欲しいんだ。それで刻み終わったらこうやって水気を絞る。出来るか?」

 ちょっとだけ取って、実際にやって見せる。

「やるやる!」

 近くにいたクロッシェが大張り切りしてパセリの束を丸ごと飲み込んだ。

 そのままモゾモゾ動いていたが、すぐに綺麗なみじん切りになったパセリを吐き出してくれた。

「おお、上手に出来たな」

 笑って撫でてやると、茹だったじゃがいもの鍋を持って水場へ行き、大きめの金ザルに茹でたじゃがいもを取り出した。

「これ、潰して欲しいんだけど、ちょっと固まりが残るくらいで良いんだ。分かるかな?」

 アクアが跳ね飛んできて、熱々のジャガイモを丸呑みする。

「ええと、これくらい? それとも、もっと潰した方がいいです?」

「おお、完璧だよ。じゃあここへ入れてくれるか」

 大きめのバットに潰したじゃがいもを出してもらい、そこにさっきの炒めた肉と玉ねぎ、それから刻んだパセリを入れる。

「これ、満遍なく混ぜ合わせてくれるか。それで揚げる準備をするぞ」

「これを揚げるの?」

 スライム達が寄ってたかってあっという間に混ぜてくれた、肉入り潰しじゃがいもを見る。

「まずはこんな感じに形を作って、これに小麦粉、溶き卵、それから生パン粉の順に付けていくんだ。出来るかな?」

 そう言うと、スライム達が一斉に伸び上がって返事をした後、一瞬で並べたいくつものバットの周りに集まった。

「じゃあ、まずは形を作りま〜す!」

 アクアの号令で、せっせと大量のじゃがいもを丸めて作って行く。

「こんなのとか、こんなのもあってもいいぞ」

 さっき見本に作ったのは、定番の小判型だったんだけど、母さんが俺が子供の頃に作ってくれたのは、大きめの俵型だ。それから丸いボール型を大小作って見せる。

「色々あった方が楽しいだろう?」

「了解です〜!」

 揃って元気な返事が返ってきて、ものすごい勢いでコロッケ各種が形作られていく。



「じゃあ、油の用意だな」

 一番大きいフライパンに、たっぷりのサラダ油とごま油を混ぜてから火にかける。

 油が熱くなったら、用意してくれたパン粉が綺麗にまぶされたコロッケを手で持って、そっとフライパンの縁から滑らせるようにして入れていく。

 お箸で掴むと柔らかすぎて形が崩れるんだよな。だから油ハネに気をつけさえすればこれが一番いい入れ方だ。

 時々ひっくり返してやり、全体に茶色くなってパチパチと音が変わってきたら完成だ。油を切ったらお皿に盛ってサクラにどんどん預けていく。

 たっぷり用意したコロッケが全部揚がる頃には、さすがに汗をかいてたよ。

「ここで二本目のビールが登場するよ」

 そう言って冷えたビールを取り出し、またグラスに注いでぐいっと一口。

「ううん、ちょっと作りすぎたかな?」

 最後の大盛りになったお皿を見ながらそう呟き、小さめのボール型コロッケを一つ摘む。

 口に入れようとした瞬間、シャムエル様に頬を思い切り突かれてしまい思わず吹き出す。

「ごめんごめん、あんまり静かだったからいないのかと思ってたよ、はいどうぞ。これが本当の味見だな」

 もう少し大きめのボール型を一つ取って渡してやる。

「熱いから気を付けてな」

 それから改めてさっきのコロッケを口に放り込んだ。

「うん、ちょっと甘めの母さんが作ってくれたのと同じ味に出来たぞ」

 そう。これは師匠のレシピじゃなくて、俺の母さんがいつも作ってくれたレシピだ。

「形を作るところはいつも手伝わせてくれたんだよな。今回作ったのは、味付けは適当だったけど、かなり良い感じの味になったよ」

 もう一つ摘んで口に入れながら満足してそう呟く。

 まあ、これも砂糖と醤油とみりんとお酒で出来る味付けだもんな。

「今度はカレーコロッケとかカボチャコロッケとかも作っておこう。これも作り置きしておけば色々アレンジ出来るもんな」

 そんな事を呟きつつ、もう一個摘みながら俺は二本目のビールを楽しんだ。



 油は少し冷めたところでスライム達がサクッと片付けてくれ、使い残した汚れたパン粉や小麦粉なんかもあっという間に片付け完了。汚れた道具も綺麗にピカピカ。

 ううん、休憩して飲んでる間に全部片付けてくれたよ。スライム達、いつもありがとうな〜!

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― 新着の感想 ―
[良い点] クロッシェちゃんが自由にできるのをみて、それだけでも家を買った意味があったと思うケンさんは、本当に優しい。 従魔達を本当に可愛がって大事にしていて、わたしもテイムされたくなってしまいます笑…
[一言] ちょっとスライムをテイムしに行ってきます うう、スマホの画面が邪魔で異世界に行けない……
[気になる点] >そう言って、おたまで計りながらしょ湯と酒、砂糖とみりんを入れて しょ湯は醤油ですかね? [一言] ああぁ~、我が家もコロッケにしよう~~~! カレーコロッケもかぼちゃコロッケもいい…
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