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別荘での俺の部屋探し

「はあ、おにぎり美味〜」

 前回は惣菜パンだったので、今回はおにぎりを色々買って、串焼き肉と一緒に美味しくいただきました。

 それから、各屋台を回って、また色々とありったけ買い込ませてもらったよ。

 シャムエル様は、栗の甘露煮と栗のペーストを包み込んだ季節の一品とか言う、豪華なパイを食べてご機嫌だ。

 おかげで今日は、買ったおにぎりを全部食べられたよ。半分は食べられるだろうと予想して多めに購入したので、ちょっと多かった残りはこっそり収納しておいたけどね。



「さて、それじゃあ従魔達を引き取って家へ行くか」

 クーヘンと一緒に店へ戻りながらふと考える。

「あの家って、そう言えば何て呼べば良いんだろうな。単に家? それとも別荘?」

「別荘ってのは、本宅があるからこその呼び名だろうが」

 俺の呟きが聞こえていたらしいオンハルトの爺さんの言葉に、笑って首を振る。

「確かに本宅は無いなあ。考えてみたらクーヘン以外は俺達全員思いっきり根無し草生活だから、自分の家なんて誰も持ってないんだよな。だけど俺だって、家なんて買ったの前の人生含めても初めての経験だよ」

 最後は小さく呟き、改めて考える。

「丘の上の家、川沿いの邸宅。ううん、長いし語呂が悪いな」

「単に、別荘、で良いんじゃない? あの辺りは別荘ばかりなわけだし、元々あの家だって別荘として建てられたんだからさ。それに、バイゼンで気に入ったらあそこでも家を買うんでしょう? だったら、そっちを本宅って呼べば良いじゃん」

 右肩に座ったシャムエル様の言葉に、俺は苦笑いしつつ頷く。

「確かにそれが良さそうだな。じゃあハンプールの家は、別荘って呼ぶ事にする。本宅購入の第一候補はバイゼンで、駄目そうなら他を探そう」

 話しながら、クーヘンの店の横の厩舎に入り従魔達を順番に撫でたり揉んだりしてやる。

「じゃあ別荘へ行って、お前らはまた庭遊びだな」

 ニニの首に抱きついてもふもふな毛を堪能した俺は、マックスの背に飛び乗って見送ってくれたクーヘンに手を振ってまずは別荘へ向かったのだった。



「ううん、改めて見ても、やっぱりデカいなあ」

 坂道を一気に駆け上がり、到着した巨大な家を見上げて玄関先でしみじみとそう呟く。

「まあ、広くても誰に迷惑かけるでなし。気にしない気にしない」

 自分に言い聞かせるようにそう呟き玄関の鍵を開ける。

「じゃあ、まずはそれぞれ好きな部屋を一つ決めて自分の部屋にするか。で、そのあとは俺はキッチンで料理をするから、ハスフェル達は言ってたように訓練室になりそうな部屋を探してくれるか。他に何か面白そうな部屋があったら後で教えてくれよな」

「おう、了解だ」

「それじゃあ、お前達は遊びに行ってきてくれて良いぞ。だけど、日が暮れる頃には帰ってきてくれよな。怪我には注意する事」

 マックスの首に抱きつきながらそう言い、もう一度従魔達全員を順番に撫でたり揉んだりしてやり、最後にベリーを見る。

「ベリーはどうする?」

「私もちょっと行ってきます。川側の断崖にオレンジヒカリゴケとは違いますが、万能薬の材料になる貴重な薬草を見つけましたのでね」

「ええ、それはすごい!」

「アルファちゃんを借りていきます。私でも手が届かない場所がありましたので、そこはスライムの手を借ります」

 苦笑いするベリーの言葉に、ハスフェル達までが驚きに目を見開いて振り返っている。

「ベリー、それはもしかして……青銀草(あおぎんそう)か?」

「ええ、そうです。まさかこんなところで手に入るなんてね。オレンジヒカリゴケの収穫がこれ以上期待出来ない今、青銀草は貴重です。ありったけ収穫させていただきますよ」

 俺も驚いていると、鞄からご指名のアルファが飛び出してきた。

「じゃあご主人、ベリーのお手伝いに行ってくるね」

 得意気なその様子に、我に返った俺は笑って両手でアルファをおにぎりにしてやる。

「ああ、じゃあ頑張ってお手伝いしてきてくれよな。貴重な薬草らしいから、ベリーに教えてもらって本体を傷めないようにするんだぞ」

「はあい、了解です!」

 触手がにょろんと出てきて、敬礼するみたいにしてから、跳ね飛んでベリーの背中に飛び乗った。

「では、行ってきますね」

 そう言って嬉しそうにベリーは走って行ってしまった。

「ではご主人、私達も行ってきますね」

 マックスが尻尾を扇風機にしつつそう言い、狼達やシリウスと一緒に駆け出して行く。セーブルやティグを先頭に猫族軍団も駆け出していった。そして草食チームと一緒にカリディアもラパンの頭にしがみついて行ってしまった。

「じゃあサクラ達は残ってご主人のお手伝いをしま〜す」

 鞄から顔を出したサクラがドヤ顔でそう言うのを、俺は笑って撫でてやった。



「おや、ケンさん」

 マーサさんの声が聞こえて慌てて振り返ると、マーサさんと一緒に二人のドワーフが笑顔で俺を見ていた。

「早駆け祭りの英雄に買って貰えたとはね。初めまして、ハンプールで植木屋をやっとりますツヴァイクと申します。この度は果樹のご注文との事。ありがとうございます」

「初めまして、早駆け祭りの英雄殿。同じく植木屋のヴルツェルと申します」

 差し出された手を握り返し、少し話をしてから庭は彼らとマーサさんに任せて俺達は家の中へ入った。

「さて、掃除はしてくれてあるみたいだし、じゃあまずは自分の部屋を何処にするか……だな」

 建物は石造の二階建てで、さらに屋根裏があるらしい。

 二階を一通り見て回ったんだけど、正直言ってどの部屋も広すぎる上に煌びやかすぎてどうにも落ち着かない。

 一階は、応接室やリビングっぽい広い部屋、明らかにこれダンスホールだろう。ってレベルの広い部屋しかない。

 困った俺はふと思いついて、教えてもらった梯子を使って近くにあった屋根裏へ上がってみた。

 ちなみにこの屋敷には、何と合計六箇所の屋根裏部屋があるらしい。どんだけ広いんだよ、この家。

 そのうちの三つは普段使わない季節の品などを置いてあるらしく使っているのだけれど、それ以外の三箇所は未使用だと聞いていたからだ。




「よし。ここに俺のパラダイスがあったぞ!」

 思わず拳を握りしめてそう呟く。

 天井に収納出来るように作り付けられた大きな梯子を上って行くと、そこにはあったんだよ。子供の頃からの憧れの屋根裏部屋が。

 斜めになった天井と、大きく張り出した出窓。意外に広いけどこの天井が斜めになった狭い感じが堪らない。

 改めて確認してみたけど、斜めになった屋根の部分はかなり分厚い構造になっていて、屋根裏特有の温度の変化もそれほど無さそうだ。

 スライム達があちこち見て回ってくれて、隅に溜まっていた埃や汚れをあっという間に綺麗にしてくれた。おかげで埃臭さもカビ臭さも全然無い。

「家具は適当に買って収納して持って来ればいいな。よし、明日は家具探しだな。俺はここに住むことに決めた。ううん、だけどマックスは入れるかな?」

 折り畳み式の収納階段や板張りの床は、従魔達が全員入るならちょっと耐久性に問題がありそうだ。

「ああ、マーサさんがいるんだから相談してみよう。いざとなったら床を補強してもらって、階段も折り畳み式じゃなくて普通のを作ってもらっても良いかも」

 手を打った俺は、工事の依頼をするためにマーサさんを探しに階段を降りて庭へ走って行ったのだった。

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