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ダンスバトル勃発?

「いやあ、本当に良い取引をさせてもらったよ。本当にありがとうね、ケンさん。屋敷の手続きはこれで完了して全ての権利が引き渡しになったよ。だけどもしも何か不具合や問題点があれば、すぐに対応するから遠慮なく言っておくれ」

「分かりました。ではこれからもよろしくお願いしますね」

「ああ、明日にでも植木職人に相談して、すぐに苗木の選定に入ってもらいますよ」

 満面の笑みのマーサさんを見送り、俺達は何だかものすごく疲れた気がして色々なものが籠ったため息を吐いた。

「ええと鍵は貰ったけど、どうする。今から行ったら屋敷に着く頃には真っ暗闇だぞ」

「だな、ギルドの宿泊所はまだ借りたままなんだから、一旦戻ろう」

 エルさんからは、好きなだけ泊まってってくれて良いと言われてるので、そのまま宿泊所へ戻る。



 当然、そのまま全員が俺の部屋に集合する。まあ腹が減ってるんだな。分かるよ。俺も腹ペコだ。

 だけどその前にカリディアを皆に紹介しないとな。

「ええと、幻獣パルウム・スキウルスのカリディアだよ。タロンと同じで幻獣界からこっちの世界に落っこちて帰れなくなっていたらしい。屋敷の中に隠れてたのを見つけて俺が保護した。これからは一緒に旅をする仲間だから、仲良くしてやってくれよな」

 手の上にカリディアを乗せて従魔達の目の前へ順番に持って行ってやる。カリディアは小さいから、こうでもしないと走り回らなきゃならないからな。

 皆、興味津々で顔を寄せ、仲良く挨拶をしていた。

 改めて考えたら、猛獣とこんな小動物が仲良く一緒に暮らせるって、異世界ならではだよな。




「じゃあ、もう今から作るのも何だから作り置きで良いな。適当に出すから好きに食べてくれよ」

 挨拶の済んだカリディアを下ろしてベリーに預け、果物と焼き栗を出してやる。それからハスフェル達の好きな揚げ物と肉系を中心に適当に作り置きを取り出して並べてやる。当然野菜も出してすぐ横に並べる。お前ら、しっかり好きなだけ食って良いから野菜も食え。

 俺はご飯が食べたかったので、レース終了からこっちで必死になって炊いたご飯で握ったおにぎり各種も並べておく。

「ええと、おにぎりは肉巻きおにぎりとシャケもどき、それから高級梅干し、あとはおかかと三色おにぎりでいいかな」

 そう呟いた時、大きなお皿を手にキラッキラの目で俺を見ているシャムエル様と目が合った。

 うん、絶対足りないな。

 って事で、ツナマヨと唐揚げおにぎりも追加しておく。更に、鶏ハムと野菜サラダをたっぷり取り、おからサラダもたっぷり取ってから、大根もどきとわかめと刻み揚げの入った味噌汁をよそる。

「今日は乾杯して良いよな」

 って事で、冷えた白ビールも取り出してジョッキに注げば準備完了だ。

 スライム達が準備してくれていた新しい布を敷いた簡易祭壇に料理を並べる。

「おお、良い感じになったじゃないか。これで燭台があれば、もう充分立派な祭壇って感じがするぞ」

 なんだか嬉しくなって笑ってそう言ってから、いつものように手を合わせて目を閉じた。

「ええと、まずは報告です。ハンプールに、俺には分不相応なくらいの大豪邸を買ったよ。庭も広いし景色も最高です。部屋もたくさんあるから、今度の早駆け祭りの見学に来る時には是非泊まってください」

 まずは、本日の一番の出来事を報告する。

「夕食は作り置きだけど、おにぎり盛り合わせと鶏ハムサラダとおからサラダ、それから味噌汁だよ。冷えた白ビールも一緒に少しですがどうぞ」

 いつもの収めの手が、これ以上ないくらいに何度も俺の頭を撫でてくれた。目を開いて顔を上げると、料理を一つずつ何度も撫でてから消えていった。

 何故だろう。手しかないのにはしゃいでるのが分かったぞ。



「あはは、皆すっごく喜んでるね。うん、あの家もこの新しい祭壇も気に入ったみたいだよ」

 笑ったシャムエル様の言葉に安心する。

「そっか、気に入ってくれたなら良かったよ」

 俺も笑ってそう言い、自分の分の料理の乗ったお皿を席へ運ぶ。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 今日のステップは、いつもよりもかなり激しく、尻尾もブンブンと激しく振り回されている。

「はいはい、どれがいい……」

 どれがいるのか聞こうとしたその時、いきなりシャムエル様のダンスを見たカリディアが隣へすっ飛んで来て、同じようにステップを踏み始めた。

 お皿は持ってないけど、さっきのシャムエル様のダンスをまるっきりコピーしてるみたいで、まるでダンス対決だ。

 ドヤ顔で踊り終えたカリディアの顔を見て、ニンマリ笑ってズダダダダダダァ!って感じに、目にも止まらぬ速さの足捌きでさらに激しいステップを踏むシャムエル様。

 それを見て負けじとばかりに、同じくものすごい速さでステップを踏むカリディア。


 ズダダダダダン!

 ダダダダダン!

 バンバンバン!

 バンバンバン!


 白熱したダンスバトルは、ほぼ互角だ。

 呆気に取られる俺達を尻目に、ダンスに夢中のシャムエル様とカリディア。

 しかし、ここでもシャムエル様が有利だったようで、だんだん息が切れて足捌きに余裕が無くなってくるカリディア。

 ここぞとばかりに追い込んで、さらにヒートアップするシャムエル様のダンス。

 最後にブレイクダンスみたいに尻尾を体に巻きつけるみたいにしてクルクルと机の上でお皿を立てたポーズで連続大回転したのを見て、負けを悟ったのかカリディアが踊るのを止めた。

「はあ、また負けました。お見事でした。それにしても、貴方は、一体、何者なんですか? 私は、これでも、里一番の、踊りの名手と、呼ばれて、いたんですよ」

 息を切らせながらも悔しそうなカリディア。

「我が名はシャムエルディライティア。我と互角に踊れる其方は、充分に踊りの名手を名乗る資格があろう。見事であった」



 久々の神様バージョンの声キタ〜〜!



 思わず叫びたくなるのを我慢して見ていると、カリディアの尻尾が一気に三倍くらいに膨れ上がった。うわあ、その尻尾もふらせてくれ〜!

「ま、まさか、シャムエルディライティア様でいらっしゃいますか! ええ、そのようなお姿で一体何をなさっているのですか!」

「今は彼と共にこの世界を見て回っている。彼がここに来てくれた事で次元は安定し、地脈は整いマナは復活してこの世界は救われた。其方ならばこの意味が分かるな?」

 目を瞬かせたカリディアは、プルプルと震えたあと、いきなり俺の胸の中に飛び込んできた。

「まさか、私を助けてくださったお方がこの世界を救ってくださったお方だったなんて!」

「あはは。でもそれに関しては俺は自分が何をしたのかなんて全く自覚無しだからさ。気にしないでくれよな」

「ではあの、私に何か出来ますでしょうか! 何かして欲しいことなど!」

 思いっきりどこかで聞いた台詞そのままで笑っちゃったけど、それを聞いた瞬間俺は叫んでいた。

「その尻尾、もふらせてください〜!」

「はい、喜んで〜〜〜!」

 やっぱりどこかで聞いた覚えのある答えと共に、もふもふしっぽが振り回されて俺の手を叩く。

「ふおお〜これは良い。これは良いぞ」

 両手で包むみたいにして小さな体を捕まえてやり、思いっきり頬擦りしてもふもふを堪能する。

「ああ、幸せ。カリディアの尻尾も最高じゃん」

 頬から額から、もうこれ以上無いくらいにもふりまくっていると、呆れたようなシャムエル様の声が聞こえた。

「ねえ、お腹空いたから早くそれをください!」

 一瞬で肩の上へ移動したシャムエル様が、お皿を水平に持って俺の頬骨のあたりに力一杯押し付けてくる。

「痛い痛い。分かったからそれは勘弁して、マジで痛いってば」

 慌ててカリディアを下ろしてやり、シャムエル様のお皿を受け取る。



 それから、顔を見合わせた俺達は揃って吹き出し全員揃って大爆笑になったのだった。

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