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昼食とここでも大量仕入れ!

「おお、相変わらず繁盛してるな」

 思わずそう呟いた俺の言葉に、ハスフェル達も感心したように頷いてる。

 到着したクーヘンの店は相変わらずの大盛況で、店の前にはいつものように何人もの人が途切れる事なく並んでいた。



「お邪魔だったかな?」

 列の横から中を覗こうとしたら、行列していた人達が俺に気付き笑顔で手を振ってくれたので愛想笑いで手を振り返すと、そのまま前の人の方を肩を叩き俺を見ながら何か耳打ちする。そしてまたしても伝言ゲームよろしくどんどんと前の人に伝わって行き、しばらくするとクーヘンとマーサさんが店から駆け出してきた。

 自動呼び出し機能付き。なんか、ちょっと見てて面白かったぞ。



「もう買い物は済んだのかい?」

 マーサさんの言葉に笑って頷く。

「ええ、アルバンさんにいい店を紹介していただきました。結局俺は、これがあるので直しを頼んで来たんですけど、あいつらまで一緒になって冬用のマントを買っていましたよ」

 そう言いながら、ファルコ達が留まる肩当てを指さす。

「ああ、確かに普通のマントや上着ならちょっとそのまま羽織るのは難しそうだね。直しを頼んだって事は、何とかなったんだね」

 笑ったマーサさんの言葉に、俺はあの激論を思い出してちょっと遠い目になる。

「あはは。まあ、おかげさまで何とかなったみたいですよ。いやあ、専門家って凄いですよね。どうやって補正するかの話し合いが、そりゃあもう大騒ぎだったんですから」

 苦笑いする俺の言葉にマーサさんも遠慮無く吹き出した。

「そりゃあ自分の目の前で、自分が作ってる物に上手くいかない事例があれば、絶対何とかしてやるって張り切るのは、もう物を作ってる職人なら当たり前の事だよ」

 笑うマーサさんの言葉に、俺はもう頷くしか無かった。

「みたいですね。いやあ物作りの職人凄え」

「それはもう職人の(さが)ってやつだね。アルバンも元は服屋で縫製もやっていたからね。そんな無理難題、横で黙って聞いてられなかったんじゃあないかい?」

「ああ、やっぱりそうなんですね。実は途中から乱入して一緒になって大騒ぎしてましたよ」

「相変わらずだねえ。でも変わってなくて嬉しいよ。じゃあ、そこの広場に色々と屋台が出ているから見てみるといいよ。いつもの広場の屋台とはまた顔ぶれが違うからね」

 確かにマーサさんの言う通りで、店の横にある円形広場は閑散としていた以前と違って、屋台がいくつも並んでずいぶんと賑やかになっていたよ。




「あれってもしかして、早駆け祭りの時に俺が美味しいって言ってたジュース屋さん?」

 果物を山積みにして、大きなミキサーみたいなのを並べた屋台を見つけてクーヘンに尋ねる。

「ああ、そうですよ。あなたが気に入ってたって話をしたら大喜びしていましたからね。良かったら見てみてくださいよ」

 背中を叩かれて一緒に見に行く。

「いらっしゃい、ま……せ……。うわあ! 早駆け祭りの英雄のケンさんですよね! ようこそです〜〜〜!」

 営業スマイルで近づく人影に条件反射で声をかけたであろう若い男性は、俺と後ろにいるマックスに気付くなり目を輝かせてそう叫んだ。

「あはは、応援ありがとうな。ええと、ちょっと見せてもらうね」

 あまりの大感激っぷりに若干ドン引きしつつ、営業スマイルでそう言って並ぶ果物を見る。

 横に看板が立ててあって、ジュースの内容が一覧になって書かれていた。

 どうやら希望の果物を選んで頼めばミックスジュースをその場で作ってくれるらしい。それ以外にも、リンゴジュースやオレンジジュースなどの単品の果物のジュースも、頼めば大瓶に詰めてくれるらしい。

「ええと、こっちのジュースは何処にあるんですか?」

 単品のジュースは、名前が看板に書いてあるだけで在庫が見当たらない。瓶詰めしてあるにしているんだとしても、店に並んで無いって事は今日の分は売り切れたのかな?

 すると、店主は満面の笑みで肩から掛けた鞄を俺に見せた。

 それはクーヘンやランドルさんが持っていたよりも、やや大きめの鞄だ。

「あ、もしかしてそれって時間遅延の収納袋ですか?」

「はい、そうです。さすがですね。これは、冒険者だった父がバイゼンの近くの地下洞窟で発見したお宝です。これがあるおかげで、傷みやすい季節の果物も長く保存出来るし、ジュースも大量に作り置きが可能なんです」

「へえ、そりゃあすごいですね。ええと、じゃあジュースってまとめて買わせてもらっても大丈夫ですか?」

 激うまリンゴとぶどう以外のジュースも欲しかったのでお願いしてみると、今なら大量にあるから大丈夫だと言ってくれたので、俺は空いているジュース用のピッチャーを取り出して、色々と大量にお任せで入れてもらった。

 当然、俺のお気に入りのミックスジュースも大量に作ってもらったよ。よしよし、思わぬところでドリンクの在庫が大量に確保出来たぞ。

 ジュース屋さんにお礼を言ってお金を払い、他の屋台も順番に見てみる。



 パン屋とおにぎり屋が何軒か並んであり、他にも串焼きの店やラーメンぽい店もあった。甘いお菓子を売ってる店もあって、さっきからシャムエル様の目はその屋台に釘付けだった。

「で、どれにするんだ?」

「あの薄い生地に果物とクリームと色々全部挟んだやつ! あの全部乗せってのをお願い!」

 大興奮するシャムエル様の言葉に笑って頷き、その屋台で一番高いメニューの全部乗せ巻きってのをお願いする。

 それは四角く焼いた薄いクレープっぽいのに、たっぷりのクリームと刻んだ果物とチョコの粒と砕いたクッキーと刻んだケーキの生地を全部乗せて広げて端から海苔巻きみたいにくるくると筒状に巻いた、見ただけで胸焼けがしそうな甘そうなロールケーキみたいな一品だった。

「あれにするのか。はいはい、わかったから落ち着け」

 作ってもらっている間中、シャムエル様は大興奮状態で肩の上で飛び跳ねて俺の頬を巨大化した尻尾で叩いていた。いいぞもっとやれ。

 しばらくもふもふ尻尾攻撃を楽しみ、出来上がった全部巻きの乗ったお皿をを受け取ってそのまま渡してやろうとして、ちょっと考えて止まる。

「ええと、ここに降りてくれるか。肩の上でそれを食われたら、俺の肩がクリームまみれになりそうだよ」

 屋台の横に置かれていた机の上にシャムエル様を下ろしてやり、お皿ごと全部乗せ巻きを渡してやる。

「うわあい、美味しそう! ではいっただっきま〜す!」

 ご機嫌でそう叫ぶと、そのまま両手で持って、自分の体よりも大きな筒を端から丸齧りし始めた。

「相変わらず豪快だなあ。じゃあ俺は、あっちのパン屋を見てくるよ」

 すでに自分の分を確保していたハスフェル達にマックス達を任せて、俺は気になってたパン屋に向かった。

 お惣菜パンみたいなのがぎっしり並ぶケースを見て思わずガッツポーズになる。



「よし、またパンの種類が増えたぞ」



 今までは、サンドイッチかハンバーガーかホットドック系ばかりだったんだけど、ここは生地の状態から具を挟んだり包んだりして焼いたり揚げたりしてある、いわゆるお惣菜系のパンがメインだ。具の種類も豊富で、ハムや卵にチーズ、他にも野菜を刻んだのが生地に混ざっていたりと本当にいろんな種類がある。

 声を掛けたらまた大感激され、お願いしてここでもお任せで大量に購入させてもらった。しかも、隣にあるもう一軒も同じ店が出しているパン屋の屋台だったらしく、そっちはディニッシュパンみたいな、ちょっと小洒落たジャムやチョコ、果物なんかを挟んだり包んだりしたお菓子系のパンがメインだった。

 当然、まだ全部巻きと格闘中のシャムエル様から、是非全部確保して! との念話が届き、こっちもお願いして大量購入させてもらったよ。

 その後、今食べる分の惣菜パンのお勧めをもらい、最後に気になってたおにぎりの屋台でもまとめて大量購入してからシャムエル様のところへ戻って、俺もようやく遅い昼飯にありつけた。



「お疲れさん。仕入れも大変だな」

 笑ったハスフェルが、コーヒーを買ってきてくれたのでお礼を言って受け取り、まだ全部巻きと格闘しているシャムエル様を眺めつつ、俺も惣菜パンとコーヒーを味わって食べたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん、お家につかない。 ケン君あるある発動中。
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