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賑やかな夕食

「普段の食事はここでしています。だけど十人で食べるには……ちょっと机が足りませんね」

 ランドルさんの案内できた部屋は、リビングっぽい広い部屋で、ここも綺麗に片付いている。

 部屋の真ん中に置かれているのは四人用ぐらいの大きさの机で、椅子も二脚しか置かれていない。

 まあ当然だよな、ここにはランドルさんとバッカスさんしかいなかったんだから。

 部屋自体は広いんだけど、さすがにこれは無理だよ。

「椅子は後二脚あるんですけど、机はどうしましょうか」

 困ったようなランドルさんの言葉に、俺は苦笑いしながら小物入れを指さす。

 当然そこには、サクラとアクアがちゃっかり収まってくれている。ちなみに他のレインボースライム達は、俺達の後ろを勝手について来ていて今はそこらを好きに転がっている。

「確かにここで十人が食事するのは無理ですね。それならいつも使ってる、俺が持ってる机を出しましょう。足りない椅子は、ハスフェル達が持ってる椅子を出して貰えばなんとかなるでしょう」

「そうですね。申し訳ありませんがそうしていただけますか。人も増えた事だし、早急に予備の椅子と机を買ってきます」

 申し訳無さそうにそう言ったランドルさんは、壁面に重ねておいてあった椅子を持って戻ってきた。

「彼らなら、材料さえあれば机と椅子ぐらいあっという間に作ってくれそうですけどね」

 さっきの鍛冶仕事の見事な手際を思い出しながらそう言って笑うと、椅子を置いたランドルさんも目を輝かせて何度も頷いていたよ。

 俺がいつも使っている机二台を元の机の横に並べて置き、手持ちの椅子もありったけ並べる。



「ああ、申し訳ない。机の準備までさせてしまいましたね」

 丁度その時、バッカスさんを始めとした全員が部屋に入って来た。

「ハスフェル。椅子が足りないんだよ。悪いんだけど各自持ってる椅子を出してくれるか」

「おう、了解だ」

 いつもの机の端にハスフェルたちが椅子を出し、

 俺の手持ちの予備の椅子も一緒に並べておく。

「じゃあ並べるから、好きに取ってくれよな」

 そう言って肉の乗ったお皿を並べていた時だった。

 また店の扉を叩く音がして、バッカスさんが走っていく。

「あれ? 今日は来客の多い日だな」

 店の方を見ながら思わずそう呟くと、何故だかジェイドさん達が申し訳無さそうにランドルさんに謝ってた。

 どうしたのかと思って聞いてみると、さっき店先に飛び込んできたジェイドさん達とランドルさんの間で、お互い、誰だこいつ、何者だよおい。って感じになって、入れろ、勝手に入るなって感じの言い合いになり、危うく刃傷沙汰になるところだったらしい。

 おいおい、開店前の店先で流血の大惨事はやめてくれよな。

 何のかんの言ってもランドルさんもさすがは上位冒険者。普段は冷静だけど、いざとなると案外血の気が多いんだね。

 一触即発の睨み合いの中ドワーフの一人が、俺達はバッカスの昔の工房の仲間で、彼が店を開くと聞き応援に駆けつけたんだと叫んで事なきを得たらしい。

 駆けつけたドワーフ達の中では一番小柄なブライさんは、仲間内から知性派って呼ばれるくらいに冷静な人らしく、咄嗟に彼がそう叫んだんだって。入って一番最初にそう言えば、別に揉めることもなかったと思うんだけどなあって、頭の中で突っ込んだ俺は間違ってないよな。

 全く、血の気が多い人達がいきなり会うと、そういう展開になりがちなんだよなあ。

 暴力反対〜!




「ああ、やっぱり戻って来られてたんですね。余計なお世話だったかな?」

 聞こえた声に振り返ると、そこにはバッカスさんと一緒に、幾つもの大きな木箱を抱えたクーヘンとお兄さん達一家の姿があり、その隣には大きなバスケットを抱えたマーサさんの姿もあった。

 そして木箱やバスケットからはとってもいい匂いがしている。

「あれえ、もしかして夕食を持って来てくれた?」

「ええ。一応残ったら明日でも大丈夫なように保存の効きそうなものを中心に多めに持って来たんです」

 机の上に並んだ肉の乗った皿を見て、残念そうなクーヘンがマーサさんと顔を見合わせて苦笑いしている。

「ありがとうございます。それならよかったら一緒に食べませんか。実は、俺の父親の工房仲間達が駆けつけて来てくれたんですよ。紹介しますのでどうぞこっちへ」

 どうやら物作りの職人同士話があったらしく、クーヘンだけじゃなくお兄さんのルーカスさんやヘイル君も仲良くバッカスさんと話をしている。

 バッカスさんの紹介で、初対面ながら笑顔で握手する彼らを見て俺は三つ並んだ机を振り返った。

「そうだ。クーヘン達は、店の奥に積みあがってた空いた木箱を並べて机にすれば高さは大丈夫そうだな。それなら木箱で椅子も代用出来るだろうから、足りない分はそれで行くか」

 頭の中で増えた人数を考えて焦っていると、同じ事をバッカスさんも考えていたらしくジェイドさん達と一緒に大急ぎで店へ走って行って、すぐに大小の木箱を持って戻って来た。

 一旦机の上にバスケットや木箱を置いたクーヘン達も手伝い、あっという間に臨時の机と椅子が追加で並べられた。

 結局、クーヘン達が持って来てくれたネルケさん自慢のソーセージの入ったポトフや、ホテルハンプールの燻製肉やデリバリー料理の数々を机に並べて好きに食べてもらう形式になった。

 俺が焼いた肉は、大急ぎでスライム達が一口サイズに切り分けてくれたので、作り置きのステーキソースと一緒にまとめて並べておいたよ。




「いやあ。それにしても皆、気持ち良いくらいに食べるねえ」

 山盛りにあった料理の数々が瞬く間に食い尽くされていくのは、もう感心するしかないレベルだ。

 こと食欲に関しては、俺はもう完全に蚊帳の外状態だったね。

 俺は、最初に確保したステーキとチキングリル、それから肉チャーハン以外は、味噌汁とホテルハンプールのサラダや煮付けですでにお腹いっぱい状態で、その後は、自分で出した冷えた白ビールをのんびりと飲んでたよ。

 シャムエル様も、俺のお皿から色々貰って嬉しそうに食べている。

 ちなみにハスフェル達が提供したお酒は、すでに三回目の追加が出ている。しかもあの巨大な瓶はどう見ても業務用サイズ……。

 あれだけ食って、その上まだあれだけ飲めるのか。予想通りだったけど、ドワーフ達もやっぱり食う量がおかしい。

 苦笑いしながら白ビールを飲んで、その後は俺はのんびりとシャムエル様のもふもふな尻尾を突っついて遊んでいたのだった。

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