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朝食と約束の履行

「あはは、久しぶりの最終モーニングコールはやっぱり強烈だったな。しかも巨大化してるし」

 勢い余ってベッドから転がり落ちた俺は、当然のようにスライム達に確保されたので打ち身の一つも無く無事に起き上がった。

「ありがとうな」

 即席スライムベッドを撫でてお礼を言ってから、改めて巨大化したソレイユとフォールを撫でてやる。

「ううん、やっぱりこのサイズの猫科の猛獣は迫力があるなあ」

 大きなフォールの頭を撫でてやりながらそんな感想を抱く。

 それから、他の従魔達も順番に撫でたり揉んだりおにぎりにしたりしてから、自分の顔を洗う為に洗面所へ向かった。

 いや、サクラがいればわざわざ顔を洗う必要ないんだけど、ここはやっぱり慣れ親しんだ習慣で、顔を洗った方がしっかり目が覚める気がするんだよね。って事で、冷たい水で顔を洗ってからサクラに綺麗にしてもらう。

 そして何時ものように跳ね飛んできたスライム達を下の水槽に放り込んでやり、同じく飛んできたお空部隊の面々にも思いっきり水浴びをさせてやった。

 はい、当然びしょ濡れになったので、もう一回サクラに綺麗にしてもらうところまでが最近の朝のルーティーンだよ。

「はあ、朝から大騒ぎだな」

 肩を回しながらそう言って笑い、身支度を整えてから居間へ出ていった。

「おう、おはよう」

 居間では、ハスフェル達がもう全員起きてきていて、すっかり寛いでいた。

「おはよう、やっぱり俺が最後だな。ごめんごめん。すぐ用意するよ」

 慌ててそう言い、大急ぎでいつものサンドイッチとドリンクを取り出す。

「いや、俺達も今起きたところだからそんなに慌てなくても大丈夫だぞ」

 ハスフェルがコーヒーの入ったピッチャーを受け取りながらそう言ってくれた。

「まあ、自分の寝起きの悪さは思い知ってるからね」

 肩を竦めてそう言うと、三人から笑われたし。くっ、次はもっと早く……起きられるかなあ。あはは。



 いつものタマゴサンドを二切れ取り、鶏ハムサンドを一切れ取って、野菜サンドを取りかけてちょっと考えてBLTサンドを取った。

 今日は郊外へ出るって言ってたのを思い出したから、ちょっとボリュームのあるのにしておこう。

 マイカップにコーヒーと、グラスに激うまジュースをたっぷりと注いで席につく。

 大きなお皿を振り回してステップを踏んでいるシャムエル様の尻尾を突っついてからまずはタマゴサンドを乗せてやった。

 結局、たまごサンドの他にBLTサンドも半分取られてしまい、やっぱり追加で野菜サンドをもう一切れ取った俺だったよ。



 嬉しそうにタマゴサンドを齧るシャムエル様を見ながら、俺はあの約束を思い出した。

 そうだよな。あれは勝者の権利なんだから、同着とは言え二連覇を達成した以上、俺にはあの尻尾をモフる権利があるよな。

 にんまりと笑った俺は、野菜サンドの残りを口に放り込んでコーヒーを手にした。

「なあ、シャムエル様。食事の後で良いからちょっと時間をもらえるかな」

 何でもない事のように言うと、顔を上げたシャムエル様が不思議そうに俺を見上げた。

「何、改まって?」

「うん大した事じゃ無いけどさ、ちょっとね」

「分かった。後で良いんだね」

「おう、よろしく」

 残りのタマゴサンドを齧るシャムエル様の尻尾を見ながら、今すぐモフりたくなって我慢するのに苦労したよ。




「で、一体何なの? 改まって?」

 食事が終わって一息ついていると、シャムエル様がもふもふなしっぽの手入れをしながらまた俺を見上げる。

「いや、例の約束を思い出してさ」

「例の約束って?」

 可愛く首を傾げるシャムエル様を見て、俺はもうこれ以上ないくらいの笑顔になった。

「忘れたとは言わせないぞ。二連覇出来たら、好きなだけもふらせてくれるって言ったよな?」

「ええと、ナンノコトダカワカリマセン」

 前回と同じく棒読みで目を逸らすシャムエル様を俺はわざとゆっくりと両手で捕まえてやった。

 もちろんそっとだ。

「神様に、二言は無いよな?」

 目の高さにまで持ち上げてそう聞いてやると、頭を抱えたシャムエル様はうんうんと頷いた。

「うう、言ったね。確かに言ったよ。仕方が無い。同着とは言え二連覇には違いないね。さあどうぞ、好きなだけもふもふしたまえ!」

 くるっと後ろを向いて俺に向かって尻尾を振り回す。

「では、遠慮なくもふらせていただきま〜す!」

 笑った俺は、そのもふもふな尻尾に思いっきり頬擦りし、両手で揉んでから更に頬に押し付けて柔らかなもふもふ尻尾を満喫した。それから更に両手で交互に握って撫で摩り、俺の知る限り最高クラスの毛並みを心ゆくまで堪能させていただきました。

 いやあ、さすがは神様。やっぱりシャムエル様の尻尾は一味違うぜ。



「うああ……待って、そこは、そこは……駄目だってば……」

 俺が握った尻尾の先をくすぐってやると、シャムエル様は俺の手の中で完全に脱力したまま足をピクピクさせて悶えている。

「だって、約束したじゃないか。俺は俺の好きなようにさせてもらうぞ」

 確か前回もこんな悪役みたいなセリフを言ったよなあ。なんて頭の中で思い出しつつ、すっかり毛が立ち上がってしまい、いつも以上にボリュームが倍増した立派なもふもふ尻尾を心ゆくまで堪能させていただきました。



「まあ、これくらいで勘弁してやろう」

 こっそりと出た涎を拭きながら、大満足でそう言ってやると、前回と同じくシャムエル様はパッタリと机の上に倒れた。

「ああ、癖になりそう……ケンったら、相変わらずテクニシャンなんだから」

 転がったまま振り返ったシャムエル様の台詞に、俺だけじゃなく、ずっと笑って見ていたハスフェルたち三人までが同時に吹き出し。大爆笑になったのだった。

 いいねえ、このご褒美の為にも次回も絶対に頑張ろうって思えるよ。マジで。

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ケンくん悪代官化してない!?(;^ω^)
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