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表彰式の終了

「い、いやあ……さすがは超一流の魔獣使い。まさか、まさかスライムにあんな使い方があったとは! いやあ。気持ち良さそうでしたねえ」

 俺の視線にようやく我に返った司会者は、子供みたいに目を輝かせてそう叫んだ。

 そして満面の笑みで俺を見る司会者の顔には、間違いなくこう書いてあるのが俺には見えたよ。



 自分もやってみたい! ってね。



「もしかしてこれって……興業として成り立ったりします?」

 思った以上の司会者さんの食いつきっぷりにドン引きつつ、小さな声でいつの間にか俺のごく近くまで来ていたアルバンさんにそう尋ねる。すると、アルバンさんまでもが満面の笑みで大きく頷き、いきなり俺の手をがっしりと握った。

「是非、是非お願いします! これは間違いなく街の名物になるくらいの素晴らしい仕掛けです。どうか、貴方が街にいらっしゃる間だけでも、是非ともお願いします!」

「あはは、思い付きでやっただけですけど、意外と受けたみたいでしたからねえ。了解です。じゃあ、後でクーヘンにやり方を教えておきます」

「是非ともお願いします〜!」

 これ以上無い笑顔で力いっぱい握られて、俺も笑顔で思いっきり握り返してやったよ。

 おお、アルバンさん。デスクワークオンリーかと思ったら、意外とすごい握力じゃん。



 男同士の無言のマウントの取り合いは時間切れの引き分けに終わり、笑顔で手を離す俺達。

 ううん、アルバンさんもなかなかやるなあ。

 若干痺れた右手をさすりながらそんな事を考えていると、呆れた声が聞こえて右を向いた。

「何やってるんだよ。全く」

 右肩の定位置に現れたシャムエル様は、笑いながら俺の頬をペチペチと叩いている。

「良いんだよ。これも楽しみのうちなんだからさ」

 まあ我ながら馬鹿だなあと思うけど、やっぱり握手して力一杯握られたら……やるよな?



 のんびりとそんな事を考えていると、咳払いをした司会者が、改まって観客に向き直った。

「さて、皆様に一つ報告を申し上げます。実は今回、まさかの上位入賞に同着が二組も出てしまったため。賞金の準備がまだ出来ていないんですねえ。もちろん現金はありますよ。でも、ここでお渡ししたのって封書。つまり目録なわけですよ。って事で、申し訳ありませんが、今から一通しかない貴重な目録をお渡ししますので、二人で一緒に受け取ってくださ〜い! 念の為、次からは二通用意しておきます」

 申し訳無さそうにしつつも少しおどけたその司会者の説明に、会場からドッと笑いが起こる。

 そっか、目録が一通しかなくて一位と二位の俺達に渡せなかった訳か。

 納得して笑っていると、アルバンさんが目録の入った封書をスタッフさんから受け取るのが見えた。

「では、順番にお渡ししますね。まずは第三位の小さな戦士クーヘン、どうぞ前へ!」

 拍手と歓声に手を上げて、クーヘンが前に進み出る。

「第三位の賞金は、金貨三十枚!」

 アルバンさんから封書が渡され、笑顔でそれを受け取ったクーヘンは、それを頭上に高々と掲げてから一礼して下がった。

「そして第二位の一人目は、いぶし銀の魅力のオンハルト〜! そしてもう一人は金髪の戦神ギイ! 賞金は、それぞれに金貨五十枚だ〜!」

 アルバンさんから渡された一通の封筒を並んで進み出た二人が一緒に受け取り、そのまま客席に見えるように高々と掲げてから手を振って下がる。

「そして第一位は、銀髪の戦神ハスフェルと、超一流の魔獣使いのケ〜〜〜〜〜〜〜ン! 賞金は、それぞれに金貨百枚だ〜!」

 ハスフェルと顔を見合わせて笑い合い、そのまま前に進み出てアルバンさんからハスフェルと一緒に一通の封書をもらう。

 そのまま頭上に……こら、ハスフェル! お前の身長でそのまま思い切り上まで上げるんじゃねえよ。俺が届いてないだろうが!

 ハスフェルの横で、届かなくなった封書に向かって必死になって垂直跳びをしていると、アクアがスルッと小物入れから出てきて俺の足元で一気に大きくなった。もちろんアクアの上に飛び乗ったよ。

 そしてそのままハスフェルの手から封書を奪い取って、もっと上まで上げてやる。

 吹き出したハスフェルの足元にもスライムが飛び出し、これまた一気に大きくなる。

 会場がドッと笑いに包まれ、俺とハスフェルは跳ね飛ぶスライムの上にのったまま、舞台の上で右に左に逃げ回って追いかけっこを楽しんだのだった。




 結局最後は、俺がハスフェルに捕まって二人揃ってスライムからわざと落っこちて笑いを取り、追いかけっこは無事に終了したのだった。




「ではこのままチーム戦の表彰に参りたいと思います。まずチーム戦の第三位は、チーム脚線美! 個人戦二位と四位を確保しての初出場での受賞です。いやあこれは素晴らしい! そして第三位の副賞は、船舶ギルド提供、豪華客船エスメラルダで行く王都インブルグとハンプールのペア往復乗船券! しかも一等客室だあ〜!」

 大歓声の中、ランドルさんとオンハルトの爺さんが進み出て、笑顔で盾と封書を受け取る。まあこれも当然目録だよ。

 まあ、これはまとめてランドルさんに進呈だな。俺達と一緒にいたら、オンハルトの爺さんも一緒に一等船室だし。



「チーム戦第二位。これは驚きの結果となりました! 第二位は愉快な仲間達〜! そして第二位の副賞は、船舶ギルド提供、豪華客船エスメラルダで行く王都インブルグとハンプールのペア往復乗船券! しかも一等船室に船内レストランのお食事券付きだ〜!」



 今回も一位だとばかり思っていたので逆に驚いたが、よく考えてみたら今回は俺が一位でクーヘンは三位。それでハスフェルも一位でギイが二位。そりゃああっちの方が総合得点で言ったら高いよな。

 ちなみに個人戦の順位に応じて得点が割り振られていて、チーム戦はその合計で決まるそうだ。

 一位が百点、二位が五十点、三位が三十点で四位が二十点、五位が十点で六位が五点なんだってさ。



 クーヘンと顔を見合わせて手を叩き合い、一緒に進み出て俺が盾を、クーヘンが目録をもらう。



「そしてチーム戦は戦神の美丈夫金銀コンビ〜! 前回一位の愉快な仲間達を制しての見事な一位受賞となりました〜! そして第一位の副賞は、もちろん船舶ギルド提供、豪華客船エスメラルダで行く王都インブルグとハンプールのペア往復乗船券がなんと十枚! これも一等船室に船内レストランのお食事券がもちろん付いてま〜す!」

 苦笑いしたハスフェルとギイが進み出て大きな盾と封書を受け取る。

 この盾、実は全部まとめてクーヘンの店に飾ってもらってたりする。って事で、今回もこのまま一位と二位の副賞ごと全部まとめてクーヘンに進呈だな。

 そんな事を考えながら、観客達に手を振りつつ、俺達は舞台を後にしたのだった。



 いやあ疲れた。

 だけど今回は本当に楽しかったよ。やっぱ祭りはこうでなくちゃな。

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