それぞれの表彰式とパフォーマンス
「個人戦第六位は、二人が同着となりました。走る火の玉デュクロ選手と馬のサックス! そしてもう一人が加速の王子レンベック選手と馬のミレイです。いやあ、二人揃って前回の雪辱を見事に果たしましたね。さすがは三周戦常連参加チーム。二人揃って実力は折り紙付きだ〜!」
リベンジ組の二人が司会者の声に笑顔で手を振り相棒の馬の手綱を引きながら舞台へ上がる。その堂々と舞台へ上がって花束を受け取る二人の姿に、大きな拍手と歓声が上がっていた。
「第六位の副賞は、ホテルハンプールが誇る豪華料理が好きなだけ食べられるレストランチケットが十枚です。今回、ホテルハンプールのご好意により、全ての同着のお二人にそれぞれの順位に応じた同じ副賞が贈られます。いやあ、さすがは一流ホテル。太っ腹です!」
副賞の入った二通の封筒を見せながらの司会者の声に、会場からは大きなどよめきと拍手が起こった。
まあホテル側にしても副賞を半分ずつ、みたいに下手に出し惜しみをしてケチだと評判を落とすよりは、豪快にプレゼントの大盤振る舞いをする方が良いと判断したのだろう。
さすがは一流ホテル。金の使い所をよく分かってるよ。
そして、最前列で表彰式を見ていたシルヴァとグレイの手にあったまるで武器のような巨大串団子が、驚いた事にもう半分になっていたのだ。
ちょっと待て、それいつの間に食ったんだよ?
「次に個人戦第五位! こちらも二人が同着となっております。まずは人情派の鬼教授フェルトと馬のナーデルだ! 前回に続き二度目の個人戦表彰台だ。さあ、昨日の選手紹介で、ご祝儀テストはやらないと豪語されていましたからねえ。もう今回は学生達への還元は無いのでしょうか。私は気になって夜しか眠れなくなりそうです。学生諸君。私の安眠の為にも結果を報告してくださいねえ。待ってますよ!」
大真面目な司会者の言葉に、シルヴァ達の少し後ろ辺りからは学生達の悲鳴と笑い声が起こり、それからあちこちから勉強しろとの野次が飛んで、また学生達が態と悲鳴を上げて雪崩れるようにして地面に倒れた。シルヴァ達がそれを見て笑って少しだけ前に出て逃げる。
同じように周りの人達が笑って左右や後ろに下がっていたので、どうやらあらかじめ倒れるから逃げてくれってお願いしてあったみたいだ。
周りからの笑いと拍手と共に学生達が起き上がって、照れたように周りに頭を下げている。あれも見事なパフォーマンスだね。
「そしてもう一人の個人戦第五位は、走る知性派! プロフェッサーウッディと馬のレーラーだ〜! こちらも個人戦二度目の表彰台だ!」
司会者の声に、フェルトさんとウッディさんが、揃って馬の手綱を引いて舞台へ上がっていった。
「第五位の副賞は同じくホテルハンプールの豪華料理が好きなだけ食べられるレストランチケットが三十枚だ! さあ、学生諸君、今回の副賞は二つもあるぞ。果たしてチケット争奪戦の結果や如何に! こちらもお願いだから結果を報告してください。何なら前回同様に興業にしてもいいですよね〜!」
二通の封筒を掲げて見せる司会者の言葉にドッと会場が沸き、あちこちから是非やってくれとの声が掛かった。花束と封筒を受け取った二人も大笑いして頷いている。
「前回の副賞なんですが、大学の学祭で、本当にウッディさんとフェルトさんが副賞をそのまま提供して大学公認でレストランチケット争奪戦をやったんですよね。仮装大会の人気投票の上位者三名と、それから障害物競走の各レースの勝者に渡されたんですが、もうあっちもこっちも大爆笑の連続で大騒ぎだったんですよ」
笑って拍手しながらクーヘンが教えてくれる。
「何それ、聞いただけで楽しそう」
同じく拍手をしながら思わずそう叫んだ俺だったよ。
いいよな、学生の時って、それくらい馬鹿やって楽しむくらいで丁度良いってな。
「次は第四位です! こちらは初出場での表彰台となりました。上位冒険者にして遅咲きの努力家ランドルとカメレオンオーストリッチのビスケットだ〜! いやあ、本当に見事な走りを見せてくれました!」
大きな拍手と共に、笑顔のランドルさんがビスケットと共に舞台へ上がる。
シルヴァ達から少し離れた前列横側には、バッカスさんが笑顔で手を振っているのが見えてランドルさんも笑顔で手を振り返していたよ。
「第四位の副賞は、同じくホテルハンプールの宿泊券と、ホテルハンプールの豪華料理が好きなだけ食べられるレストランチケットが三十枚だ〜!」
大きな拍手の中、花束と共にランドルさんにもぶ厚い封筒が渡される。
「さて、次は第三位ですね。クライン族の小さな戦士クーヘンとイグアノドンのチョコレートだ〜! 前回から一つ順位を上げての第三位です!」
あちこちからクーヘンとチョコを呼ぶ声がして、チョコと共に舞台に上がったクーヘンに拍手の中を花束と分厚い封筒が渡される。
マーサさん達もかなり前の方で、またしても踏み台持参で嬉しそうな笑顔で揃って拍手を送っていた。
「さあ、ここからまたしても同着ですよ。個人戦第二位の一人目は、初出場なのに第二位の快挙を成し遂げた、いぶし銀の魅力満載のオンハルト〜! 年齢を感じさせない力強い走りは男達の希望です! こんな風に歳を重ねたいものですねえ。いやあ本当に格好良かった!」
割と本音がチラ見する司会者の言葉に、会場からは同意の声と拍手が起こっていた。
確かに、見かけだけならかなりの爺さんだものな。老人の希望の星!ってか?
中身は本物の神様だけどね。
そんな事をのんびりと考えていたら、何とオンハルトの爺さんがいきなりエラフィの角を掴んだのだ。しかし、エラフィは嬉しそうに嘶くと大きく首を振ってそのままオンハルトを舞台へ放り投げたのだ。
勢いよく吹っ飛び、当然のように空中でクルッと一回転して見事に着地する。そして、その場でまた進み出たランドルさんと共に揃ってあのセクシーポーズ。
それを見た会場が一気に沸き、ものすごい歓声と拍手が起こる。そしてオンハルトの爺さんの名を呼ぶ声があちこちから聞こえた。
「おいおい、オンハルトの爺さん……すげえ運動神経だなあ」
思わず感心したように呟く。
最前列で見ているシルヴァ達は、それを見て大喜びしてる。
あの、聞いていい?
さっきまで二人が右手に持ってた巨大などら焼き……何処に行ったの?
「そしてもう一人の第二位は、金髪の戦神ギイとブラックラプトルのデネブだ。こちらも前回から一つ順位を上げての第二位となりましたね」
司会者の言葉に大きな拍手が起こり、手を上げたギイは、いきなりデネブの尻尾の先に飛び乗った。
恐竜の尻尾は、まさにしなやかな鞭と同じでものすごい強さを誇る。
心得たデネブが軽々と尻尾を振ってギイを舞台まで吹っ飛ばし、これまたクルッと一回転して見事に着地した。
またしても会場は大喜びで拍手喝采だ。
そして、俺を見てにんまりと笑う俺と同着の一位のハスフェル……。
ちょっと待て、お前ら。
一体俺に何をさせる気なんだよ。