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早起きの朝と全員揃って会場入り!

 ぺしぺしぺし……。

「うん、おはよう」

「うわあ、ケンが二日も続けてこんなにすぐに起きるなんて! 今日は絶対嵐になるよ。お祭りなのに駄目じゃないか。ほら、寝て寝て!」

 やっぱり小学男子だった俺は、実はシャムエル様に起こされる少し前から目が覚めてました。なのでこれ幸いと起きようとしたらこの言われよう。ちょっと泣いていい?

「何だかひどい言われような気がするけど、俺の気のせいか?」

「気のせい気のせい。ほら寝た寝た」

 腹筋だけで起き上がった所で、目蓋をシャムエル様のちっこい手でぎゅうぎゅうと押されて悲鳴を上げる。

「痛いって、目はやめてくれ。まじで冗談にならんから」

 悲鳴を上げてセーブルの上に倒れ込む。当然、俺の額にいたシャムエル様も一緒に落っこちて来てそのままコロコロと転がっていき、ベッドから墜落寸前でセーブルに見事に咥えて救出されてた。

「ふう、びっくりしたなあもう。動く時は気をつけてくれないと落っこちたらどうしてくれるんだよ」

「申し訳ありませんでした〜!」

 ダンダンと足を踏み鳴らしながらそんな事を言われてしまい、思わず咄嗟に謝ってしまう悲しき元営業マン。

「いやいや、ちょっと待って。今のは俺は悪くないぞ。怒られるのは納得出来ないって」

 また腹筋だけで起きあがり、我に返って抗議したが鼻で笑われたし。笑ってまたセーブルの上に倒れ込む俺。しかし、ふと思いついてまた腹筋だけで起き上がる。

「ってか、そもそもいきなり出たり消えたり出来るくせに、別にベッドから落っこちた所で平気だろうが」

「まあ、そう言われればそうなんだけどね」

 もふもふ尻尾をせっせとお手入れしながらにんまりと笑うシャムエル様。

「ずるい。ずるいぞ〜!」

 そう叫んで、横からもふもふ尻尾を突っついてやる。

「尻尾は駄目です!」

 そう叫んで、慌てて尻尾を取り返すのを見て、俺はもう一回横から指の先で尻尾を突っついてやった。

「ええ、良いじゃんか。別に減るもんでなし」

「確実に減るから駄目です!」

 キッパリと言い切られて納得しそうになったけど、触ったからって何が減るってんだよ。

「何だか納得出来ないけどまあ良いや。それじゃあ起きるか」

 擦り寄って来る猫族軍団を順番に撫でながら大きな欠伸をした俺は、ベッドから起き上がった。

「ううん、今日もいい天気だ」

 大きく伸びをして強張った体を解す。

 枕役をしてくれているセーブルには申し訳ないんだけど、やっぱりニニの寝心地が最高だよ。



 洗面所で顔を洗った俺は、いつものようにサクラに綺麗にしてもらう。そのまま次々に飛び跳ねてくるスライム達を水槽に放り込んでやるのは、もはや朝のルーティーンになってる。

「ご主人、お水ください!」

 お空部隊が羽音と共に飛んできて水槽の縁に留まる。下の段の水槽の水を手ですくって振りまいてやると、羽を広げた鳥達は大喜びで羽ばたいたり翼を伸ばしたりと嬉しそうにしている。

 喜んでくれるもんだから、これまた下の水槽の水を手でかけまくり、最後は全身びしょ濡れになるのももはや朝のお約束だな。



「はあ、朝から疲れるって」

 笑いながら部屋に戻り、手早く身支度を整える。

「これももう慣れたもんだよな」

 スーツとネクタイを思い出して、ちょっと懐かしくて泣きそうになったけど、すり寄ってくる従魔達を見たらすぐにそんな気分は消し飛んでしまった。

「窮屈な留守番も今日までだな。終わったら思いっきり郊外で走らせてやるから、もうちょっとだけ我慢してくれよな」

 そう言いながら順番に撫でたり揉んだりしてやり、最後に大きく深呼吸をしてから居間へ出て行った。

「よし、今日も俺が一番だ」

 と呟いた瞬間、隣の扉からハスフェルが出て来て驚いたように俺を見る。

「うおお、ケンが二日も続けて一番に起きるなんて、今日は嵐か? 大雨か? 祭りなのに駄目じゃないか」

 シャムエル様と全く同じ事を言われて、その場で吹き出した俺は悪くないと思う。




「おはようございます。皆お揃いなら今朝は、ホテルの朝食をいただきに行きましょう」

 ノックの音の後に入って来たクーヘンの言葉に顔を上げると、後ろにはランドルさん達の姿も見える。

「昨夜エルさんから聞いたんですが、今日の朝食と昼食は三周戦の参加者専用に別室で用意してくれているそうですよ」

 クーヘンの言葉に揃って大きく頷く。ホテルハンプールの食事はマジで美味いので、断る理由なんて無い。

 俺達は従魔達を部屋に残して、来てくれたスタッフさんの案内で朝食の用意された部屋に向かった。



 案内された広い会議室っぽい部屋には、朝食とは思えないほどの豪華な料理の数々が所狭しと並べられている。

「この豪華な料理を好きなだけ食べられるって、何か良いなあ」

「全くだ。では遠慮なく頂くとしよう」

 空のお皿を手にそう呟くと隣にいたギイが笑ってそう言うので、顔を見合わせて笑った俺達は先を争うようにして料理へ突進して行った。

 ハスフェル達の食べっぷりは相変わらずで、この勢いで食べたら絶対にすぐに無くなると密かに心配していたんだけど、さすがは高級ホテル。テキパキと動くスタッフさん達が、当然のように空になったお皿を下げては次の料理をどんどん出してくれ、おかげで遅れて来た他の参加者の人達に料理が出ていない!なんて惨事は無事に避ける事が出来たよ。



 ちなみに食事をしている間、平然と机の上に座ってホテル特製タマゴサンドを嬉々として齧っているシャムエル様には誰一人反応しない。多分、何かして他の人達には見えないようにしてるんだろうけど、いつ動物を連れて来てはいけません! って叱られるかとビクビクしていた俺は、もう笑わずにはいられなかったよ。

 ううん、さすがは神様だね。



 お腹いっぱい料理をいただいた俺達は、一旦部屋に戻り午前中はのんびりダラダラして過ごした。

 俺がソファーに転がってのんびり朝寝を満喫している間、ハスフェル達はまた別のボードゲームで盛り上がってた。大人数でやると双六系は最強だよな。




 少し早めに昼食も同じ部屋で頂き、内容がさらに豪華になった料理の数々を見て小食な自分がちょっと悲しくなったよ。こんな事なら朝食をもう少し少なくしておけばよかったよ。しょんぼり。

 そして、そのままそこで休憩しているとエルさんとスタッフさん達が迎えにきてくれ、結局そのまま会場入りすることになった。

 まあ別に持って行く物なんて無いから良いんだけどね。




「それじゃあ行こうか」

 厩舎へ、今日もこれ以上ないくらいにピカピカにお手入れされたマックスとニニを迎えに行き、その場でマックスの背に飛び乗る。

 全員がそれぞれの従魔に飛び乗り、他の参加者達も馬に乗る。

 何でも、今まではこうやって前日入りしたホテルから三周戦の参加者全員が揃って会場入りするのが定番だったらしいだけど、九連勝をやったあの馬鹿達が、三回目くらいから他の参加者達と一緒の扱いは嫌だとか抜かして、それ以来行われなくなっていたらしい。

 まあ九連勝の三回目って事は、丸二年だものな。きっと観客達は喜ぶだろうな。



 って事で実質二年ぶりの参加者全員のパレードは、予想以上に観客達からの大歓迎を受けた。

 当然先頭を歩かされた俺のメンタルが、またしても限りなくゼロに近くなったのは……もうお約束だな。

 うん、もう今日が最後だから頑張るよ俺。誰か褒めて……。

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