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一日目の終了と夕食!

「なんかすみません」

「いや、なかなかに笑わせてもらったよ。それじゃあ帰る時は言ってね。護衛のスタッフをつけるから」

 笑って手を振るエルさんを見送り、クーヘンと顔を見合わせてもう一度吹き出した。

 噂のあのジュース屋さんは、クーヘンの店の横にある円形広場でいつも屋台を出している店だと教えてもらった。何だよ。そう言う事なら先にクーヘンに確認すれば良かったんだよな。

 それから、クーヘンと話していたギルドを通じて寄付をしたいって話もエルさんにしておいた。

 とても喜んでくれて、これは祭りが終わってからギルドで手続きをお願いする事で話がまとまった。

 うん、俺が持ってる財産の大半は、神様達やベリーやフランマ、それから俺の従魔達が集めてくれたものだからなあ。全部自分のものにするのは違う気がしていたので、ちょっとくらいは善行もしておくべきだって事で、俺の中では落ち着いたよ。



 一応、前回と同じで三周戦の開始は午後の二時らしい。なので明日は午前中はゆっくりして良いので、早めの昼食を食べてそれまでにここへくれば良いんだってさ。

「じゃあ、もうホテルへ戻るか。ええと、スタッフさんに帰るって言えば良いんだよな?」

 そう言ってマックスの手綱を引いてテントの外に出ると、またしても沸き起こるどよめきと大歓声。そして大注目の俺達。

 うああ、頼むからこれ以上俺のメンタルを削らないでくれって。

 諦めの境地に達した俺は、駆け寄ってきてくれたスタッフさんの案内でホテルへ帰ろうとしたのだが周りに集まった人たちは一向に減らない。

 諦めて俺を見ている人達に手を振り返してマックスの背に飛び乗る。

 苦笑いしたハスフェル達もそれぞれの従魔に飛び乗り、結局、俺達は大観衆に取り囲まれたまま、静々と宿泊しているホテルハンプールまで帰る羽目になった。

 一応、ギルドのスタッフさん達が周りを取り囲んで守ってくれているので、マックス達の毛を毟られるような事態にはならずに済んだけどね。



「うああ……すぐそこにあるホテルハンプールがもの凄く遠いよ。マジで何なんだよ。この人の多さは」

「諦めろ。これも人気の現れだ」

 小さな声で泣き言を言う俺に、同じく虚無の目になったハスフェルがそう言って、俺達は顔を見合わせてこれ以上ないため息を吐いたのだった。

 うん、俺は平凡なモブか、村人その1くらいが良いです。




「はあ、ようやくの到着だよ」

 俺のメンタルが一桁になる頃、無事にホテルハンプールに到着した。ホテルの敷地内に入った途端に人がいなくなったのにはちょっと感動したね。さすがは高級ホテル。警備も半端ないです。

 ホテルの入り口で、マックスとニニを迎えに出てきてくれた厩舎のスタッフさんに預ける。またフランマが一緒に行ってくれたので、シャムエル様に、フランマの為に後で果物を出してもらうようにお願いしておいたよ。

「では、明日のレース頑張ってください!」

 笑顔のスタッフさん達に送られて、俺達はようやくホテルの部屋に戻る事が出来た。

 そしてやっぱり全員が俺達の部屋に集まる。

「なんだかもう疲れたから、早めに何か食って休むよ。何が良いかな?」

「はい! 肉が食いたいです!」

 ハスフェルとギイの言葉に、オンハルトの爺さんだけでなく、クーヘンとランドルさん、そしていつの間にか合流していたバッカスさんまでが揃って手をあげてたよ。

「良いねえ、じゃあガッツリ厚切り肉のステーキで行くとしよう」

 取り出したのは、グラスランドブラウンブルの熟成肉だ。これはステーキにするとめっちゃ美味しい事は確認されてるもんな。

 全員の分をガッツリ分厚くカットして、叩いて筋切りしてからステーキ用のスパイスと岩塩をしっかりと振りかけ、時間をおかずに豪華キッチンで焼いていく。

 とは言えコンロの数が足りないので、追加で取り出したいつものコンロも並べて一気に焼いていく。

 その間に、机の上に取り出したサラダやフライドポテト、それから温野菜なんかを各自好きなだけ取っておいてもらう。ワカメと豆腐の味噌汁も出しておいたよ。

 ハスフェルとギイとクーヘンはパン、俺とオンハルトの爺さん、それからランドルさんとバッカスさんはご飯だ。

「ほら、ケンの分はこれくらいで良いか?」

 ギイが野菜多めに色々取ってくれた俺の分のお皿を受け取り、順番にステーキをひっくり返していく。

 焼き加減はしっかり目だ。元は単に俺の好みだったんだけど、こっちの世界ではレアな状態の肉は食べないらしいからちょうど良かったよ。血の滴るほぼ生なステーキって、実はちょっと苦手だったりするんだよな。



「はい、焼けたぞ。順番にどうぞ」

 大人しく並んだ全員の皿にステーキを乗せてやり、フライパンに残った油は集めて置いておく。これは後日肉だけチャーハンにする予定だ。

 俺の分のお皿とご飯と味噌汁は、いつもの簡易祭壇に捧げようとして手を止める。

「なあ、シルヴァ達がこっちに来てるんなら、これって意味無くね?」

 しかし、右肩に座ったシャムエル様は笑って首を振った。

「彼女達が何処にいても届くよ。これは言ってみればケンの気持ちだからね」

「あ、そうなんだ。じゃあ気にしなくて良いな」

 笑ってそう呟くと、手を合わせて目を閉じた。

「グラスランドブラウンブルの熟成肉のステーキ定食だよ。少しだけどどうぞ。それから、祭りを楽しむのは良いけど、お腹と相談して食べてくれよな。見ててこっちの腹まで一杯になったぞ」

 小さくそう呟いて、思わず吹き出す。

「神様に説教してどうするんだってな。あ、明日の三周戦、頑張るから応援よろしくです!」

 いつもの収めの手が、いつも以上にゆっくりと俺の頭を撫でてから、料理を順番に撫でて消えていった。

「お待たせ。食べようぜ」

 急いでお皿を持って席に戻り、待っていてくれた彼らにお礼を言ってから、改めて手を合わせてから食べ始めた。



「ううん、熟成肉ってどうしてこんなに美味いかねえ」

 ステーキソースも色々出しておいたので、皆好きにかけている。俺は一番お気に入りの和風玉ねぎのソースだ。

「あ、今度はスパゲッティを茹でておいて、あの残った油で炒めれば良いんだよな。そうすればサイドメニューになるな。よし、次はパスタも茹でておこう」

 そんな事をのんびりと考えつつ、俺は豪華な夕食を満喫した。

 まあ、明日の三周戦は、もう出たとこ勝負だから、うだうだ考えたって答えは無い。もう俺に出来るのは、ゆっくり休んで万全の状態で参加するだけだ。

 ハスフェル達はワインを飲んでいたけど、元々あまりお酒に強くない俺は明日に備えてアルコールは無しだ。

 寂しく麦茶で喉を潤しつつ食事を終える。

 その後はのんびり休憩して、早めの解散となった。



「それじゃあまた明日」

「美味しい夕食をご馳走様。おやすみなさい」

 それぞれの部屋に戻るクーヘンとランドルさん達を見送り、俺達も早々に寝室へ入る。

「じゃあ、もう休むか。サクラ、綺麗にしてくれるか」

 洗面所でまずはサクラに綺麗にしてもらい、口を濯いでから寝る準備をする。

 防具は全部外し、靴と靴下も脱ぐ。脱いだ装備もあっという間にサクラが綺麗にしてくれたので、お礼を言ってベッドに上がった。

 セーブルが枕役。それ以外もいつもの定位置について、タロンを抱き枕に大きな欠伸をした俺は目を閉じた。

「それじゃあお休み。明日はいよいよ早駆け祭の当日だぞ。目指せ二連覇、だもんなあ……」

 そう呟いた後の記憶は俺には無い。ううん、相変わらずの墜落睡眠だねえ。

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