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珍しく早起きした朝

「いやあ、このカレーライスという料理は初めて食べましたが、美味しいですね」

 カレーはランドルさん達やクーヘンにも大好評で、改めてもう一度バッカスさんにレシピを教えてあげたくらいだった。それからクーヘンにもレシピを書いたものを渡した。これは義理のお姉さんのネルケさんにレシピを渡して作ってもらうらしい。うん、料理上手のネルケさんだったら、きっと色々とアレンジもしてくれるだろうさ。



 スライム達が空になった鍋まであっという間に片付けてくれたので、そのあとは何となくダラダラして過ごした。

 途中に、エルさんの使いのギルドのスタッフさんが俺達が頼んだ賭け券を持ってきてくれたので、きっちりそれぞれ頼んだ分を確認して会計を済ませてから受け取ったよ。

「ギルドマスターからの伝言です。明日の朝一番に、早駆け祭りの参加者紹介がありますので、それには一緒に走る従魔達と共に全員参加していただきます。ホテルから会場まではギルドのスタッフがご案内しますので、それぞれの部屋で準備をして待っていてください。部屋までお迎えにあがります」

「了解です。うう、またあの小っ恥ずかしい選手紹介を聞かされるのかよ」

 顔を覆って覆ってそう呟くと、ハスフェル達が大笑いしていた。

「あ、そっか。オンハルトの爺さんとランドルさんは初参加だもんな。どんな風に紹介されるのか楽しみにしておこう」

 顔を上げてにんまり笑ってそう言ってやると、今度はオンハルトの爺さんとランドルさんが揃って悲鳴を上げて顔を覆い、それを見てまた俺達は大爆笑になった。

 それから笑顔で帰るスタッフさんを見送り、今夜は俺達も早めの解散となった。



 それぞれの部屋に戻るランドルさん達とクーヘンを見送ると、俺はもう眠くなってきたので早めに休ませてもらう事にして寝室へ向かった。

 当然、従魔達がゾロゾロとついてくる。

 いつものようにサクラに綺麗にしてもらって、セーブルが待ち構えているベッドに飛び込んだ。

 マックスとニニがいない間、俺の枕役を務めてくれているセーブルにもたれかかり、胸元に飛び込んできたタロンとフランマを二匹まとめて抱き枕にする。いつものように背中側にはラパンとコニーが、そして足元にはティグとマロンが大きくなって並んで寝転がった。

 他の子達は床に集まって固まって眠ったみたいだ。

 スライム達が引き上げてくれた毛布を被りながら、祭りが終わったら外で寝る時用のもう少し大きめの分厚い毛布が欲しいなあ、なんて考えていたら、いつの間にか眠りの国へ墜落していたよ。ううん、我ながら見事な寝つきの良さだね。






 ぺしぺしぺし……。

「おう、今日は起きるぞ」

 少し前から何となく目を覚ましていた俺は、シャムエル様が額を叩くのに気付いて、そう言って目を開いた。

「うわあ、びっくりした。どうしたの? そんなに早く起きるなんて、お腹でも痛い?」

 目をまん丸に見開いたシャムエル様が俺の額に乗っかったまま、若干失礼な事を言いながら俺を覗き込んでいる。

「失礼だな。俺だってたまには自分で起きるよ」

 笑いながらそう文句を言って、腹筋だけで起き上がる。

 従魔達が離れるのを見て、俺もベッドから起きて大きく伸びをする。

「確か、前回の早駆け祭り当日も、こんなこと言って笑った覚えがあるなあ。イベントのある日だけ早起き出来るって、遠足の日の子供かよ」

 そう呟いて思わず吹き出す。

「そっか、俺も小学男子決定だな」

「何々? 朝からなんだか嬉しそうだね」

「そうだな。ちょっと懐かしい事思い出してた」

 笑ってシャムエル様のもふもふ尻尾を突っついてから、俺は顔を洗うために洗面所へ向かった。



 いつものようにサクラに綺麗にしてもらったあとで、スライム達を水槽に放り込んでやり、お空部隊にも思いっきり水浴びをさせてやる。

 もう一度びしょ濡れになったのでサクラに綺麗にしてもらってから、部屋に戻って身支度を整える。

 今日は外に出るのでしっかり装備を身につけておく。

 剣帯を締めながら居間に出て行ったけど、まだ誰も起きてなかったよ。ううん、ちょっと早起きしすぎたかね。




「そう言えば、これが終わったらいよいよバイゼンで、俺の装備を作ってもらう為にひと冬そこで過ごすんだよな。冬服とかいらないのかね?」

 ソファーに座りながら今着ている服を引っ張ってみる。

 これはシャムエル様にもらったもので、ずっとこれしか着てないけど汚れる様子も痛んだ様子も無い。

 以前、地下迷宮でトライロバイトに突っ込まれた時のズボンの破れも、そういえばいつの間にか綺麗に無くなっている。

「ここにあった破れって、もしかしてサクラが何かしてくれたのか?」

 それしか思い浮かばず、いつの間にか水槽から出て来て足元に転がっていたサクラにそう尋ねる。

「違うよ。それはご主人が寝てる間に、アクアゴールドになって直したんだよ。綺麗に戻ったでしょう?」

 得意気にそう言うと、同じくそこらに転がっていたスライム達が整列してアクアゴールドになった。

 俺には分かる。あれはドヤ顔だ。

「あはは、そうなんだ。ありがとうな」

 手を伸ばしてアクアゴールドを捕まえてにぎにぎと揉んでやる。

「まあ、今着ているそれはかなり丈夫な生地だから、そうそう破れたり傷んだりする事は無いと思うよ。真冬に郊外へ出るなら別だけど、街の中なら今の装備に冬用のマントを羽織れば充分だね」

 肩に座ったシャムエル様が、尻尾の手入れをしながらそんな事を教えてくれる。

「おお、冬用のマントか。良いなそれ。ここで買える? それともバイゼンで買った方が良いかな?」

「服を買うなら、バイゼンより王都に近いここで買う方が良いのがあると思うね。バイゼンは装飾品や武器防具なんかは相当良いのがあるんだけど、普通の服は何て言うか……実用主義で常に使い心地優先だから、見た目があまりお洒落じゃないんだよね。マントは一番目につく服でしょう。だから、せっかくなんだからここで買って行くのがお勧めです!」



 何やらお洒落について力説されたけど、通勤時のスーツ以外はファストファッションばっかりだった俺には、未知の世界だよ。



「個人的にはバイゼンでまとめて買う方が良い気がするけど……まあ、そういう事なら、祭りが終わった後で商人ギルドのアルバンさんに相談しよう。きっと良い店を紹介してくれるよな」

 ファッションセンス皆無の俺は、自分で考えるよりも確実な方法を思いついたので全部まとめてアルバンさんに頼む事にしたよ。餅は餅屋だ。

 そんな話をしながら従魔達を順番に撫でていると、ハスフェルたちが起きて来て、俺がいるのに気付いてめちゃめちゃ驚かれた。

「何だよ失礼だな。たまには俺だって早起きくらいするよ」

 ヤミーを撫でてやりながら、確かに俺が一番に起きるのって確かに初めてな事に気付いて、朝から皆で大笑いしたよ。



 さて、いよいよ祭りの始まりだ。

 今回はどうなるのか。今から楽しみでしょうがないよ。

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