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巨大唐揚げ作り

「それじゃあ行って来るよ」

「おう、行ってらっしゃい」

 手を振るハスフェル達に手を振り返した俺は、彼らが森の中へ消えて姿が見えなくなるまで見送ってから振り返った。

 今日も、留守番はスライム達と草食チームとセーブルだ。

 巨大なハリネズミのエリーが、テントの外をのそのそと歩いているのを見ながらテントに戻る。

 あの大きさの時のエリーには絶対に迂闊に触らないように言われている。何でも大型犬サイズになってる時の針の強度と鋭さは、小さい時とは桁違いなんだってさ。

 今日のセーブルは、テントから少し離れた場所で日向ぼっこしているみたいだ。




「さて、何からするかね」

 テントの中で一旦座った俺は、今日の段取りと作るメニューを腕を組んで考える。

 せっかくハイランドチキンを沢山狩って来てくれたんだから、鶏肉料理とかやってみたい。

「あ、じゃあ今夜は鍋にするか。鶏肉各種と野菜やきのこは適当にたっぷり入れて、豆腐とか餅もあるからそれも入れられる。締めは雑炊で決まり。味は、師匠からもらったおいしいポン酢があるからそれで良いよな。よし、それで行こう」

 まずは今日の夕食のメニューを先に決めておく。

「だったら、野菜と肉は先に切っておくか。サクラ、今から言う材料を出してくれるか」

 一応、どこで誰が見ているか分からない見晴らしのいい草原なので、大量の物の出し入れをする時や金色合成して何か食べたりする時は、足元にある大きな木箱の中でやってもらっている。まあ、これなら誰かに見られても箱しか見えないから大丈夫だろう。

 サクラが取り出してくれる材料を机の上に並べて、待機しているスライム達に切り方の説明をしていく。出来た分はそのままサクラに渡して貰えば準備は完了だ。早っ!



「じゃあ、このまま次の料理に取り掛かろう。ええと、ハイランドチキンとグラスランドチキンの胸肉を出してくれるか。どっちも一塊な。それから調味料一式と片栗粉も出してくれるか。あ、バットの大きい方ありったけと、ボウルの大きいのも出しておいてくれ」

「はあい、じゃあ胸肉はこれとこれだね」

 そう言って、巨大な、俺の常識ではありえないサイズの胸肉が取り出される。



 次に作るのは、豚カツ屋の店長が冗談で作ったら大人気になり、しばらく持ち帰りもやっていたメニューだ。

 ずばり、胸肉丸ごと一枚使った顔サイズの巨大唐揚げだ。



「ええと、だいたい大きさはこれくらいか。まあ適当でいいな」

 苦笑いしながら、普通の胸肉サイズくらいに切り分けていく。とんでもない量が積み上がったが、気にしない事にする。

「ええと、まずはこれに切り込みを入れて棒で叩いて伸ばすんだったよな」

 包丁の先で胸肉の塊にぶつぶつと切り込みを入れ、めん棒でガンガン叩いてやる。

「いまの見てたか、出来る?」

 サクラとアクアが、すぐそばで興味津々で俺のやる事を見ていたので、ここまでやって聞いてみる。

「ええと、こうだね。適当に切り込みを入れてから、全体を軽く叩いて伸ばしていく」

 そう言いながら、アクアとサクラがそれぞれ一枚ずつ胸肉の切り身を飲み込む。

 しばらく二匹揃ってモゴモゴしていたが、ほぼ同時に綺麗に叩いて伸ばされた鶏肉を出してくれた。

「おお、完璧。じゃあこれもやっといてくれるか」

 山盛りの胸肉を指差すと、一旦サクラが全部飲み込み、木箱の中へ飛び込んで行った。次々にスライム達が木箱に飛び込んで行く。

 サクラとアクアにくっついてやり方を教わってるのを見ながら、俺は机の上に並んだ調味料を手に取る。

「ええと、醤油と酒とみりん。それから砂糖と出汁昆布、おろしたニンニクと生姜、それから砕いた黒胡椒がたっぷりっと。よし、全部あるな」

 大きなバットを並べておき、俺は大きなボウルにカップで測りながらつけだれを用意しておく。そのままの出汁昆布も一緒に入れたらしばらく置いておく。

「ご主人、全部出来たよ〜!」

 サクラの元気な声が聞こえたので、笑って積み上げてあった大きなバッドを並べる。

「じゃあ、肉はここに適当に取り出してくれるか。それとこのつけだれを半日おいてくれるか」

 つけだれに出汁昆布の旨味が出るには一晩程度かかるので、スライムに頼んでそこはショートカットしてもらう。

 真っ先に飛んで来たアルファがボウルごと飲み込み、伸びたり縮んだりし始める。

「出来たよ、はいどうぞ」

 しばらく待っていて出来上がったつけだれは、いい感じに出汁昆布がふやけた状態になっていた。ここで出汁昆布は仕事終了なので取り出しておく。

「じゃあこのタレに、鶏肉を漬けていくぞ」

 叩いて伸ばしてもらった鶏肉をつけだれにくぐらせて、バットの上に並べていく。

 全部の肉を味付けした後、残ったタレは肉の上に適当にかけて回る。

「ええと、これを一時間くらい漬けたいんだけど、お願いするよ」

 バットごと渡して、手分けしてスライム達に時間のショートカットをしてもらう。

「じゃあ、その間に揚げる準備だ」

 そう呟きながら、コンロに深めの大きなフライパンを並べていく。菜種油と大白胡麻油を混ぜて入れ、コンロに火をつけていく。

「出来たよ、はいどうぞ」

「おう、全部一気には揚げられないから、バット二枚分くらい出しておいて後は一旦確保しててくれ」

「了解しました!」

 俺の目の前に、ぎっしり鶏肉が並んだバットが二枚取り出される。

「これに、満遍なく片栗粉をまぶすんだ。お願いするよ」

 手の空いたスライム達が集まって来て、別のバットに入れた片栗粉の中に鶏肉を入れては綺麗にまぶしてお皿に乗せて俺に渡してくれる。

 受け取った俺はそれをそのまま油の中へ投入。皿を返せば、また新しい肉が乗せられて返って来るので、また別のフライパンに投入するだけ。超楽ちんだ。

 これは中火でじっくり揚げるので、時々ひっくり返す程度でそれほど慌てて面倒見なくてもいいから大量にフライパンを並べて一気に揚げていった。

 パチパチと賑やかな音がし始めたら一旦あげて、もう一回後で揚げる。二度揚げする事でさっくり感が増すんだって。

 揚がったら、しっかり油を切ってから大きなお皿に山盛りにしてサクラに預けていく。

 太陽が頂点を過ぎた頃に、大量に仕込んだ巨大唐揚げの最後の一個が出来上がった。



「凄い凄い! こんなに大きな唐揚げ始めて見るよ。これはまだ食べないの?」

 いきなり机の上に現れたシャムエル様が、すごく残念そうに出来上がった唐揚げを見てから俺を振り返る。

「これは夕食用だから、シャムエル様はこっちをどうぞ」

 笑って、千切れたかけらを揚げたのを渡してやる。

「これが本当の味見だな」

 笑った俺も小さな欠片を口に放り込んだ。

「うん、黒胡椒が効いてて美味い。これは絶対テンション上がるよな」

 積み上がった巨大な唐揚げを見て喜ぶあいつらを想像したら、なんだか嬉しくなる俺だった。

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