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食後のひと時とおやすみなさい

「はあ、美味しかった」

 作り直した煮卵入り角煮まんは、自分で作って言うのもなんだが売り物にしてもいいレベルに出来上がった。よしよし。

 まあ、角煮マンのふかふかな皮の元は、パン屋さんが仕込んでくれていたタネなんだから、全部俺の手柄って訳じゃあないけどな。



 結局、夕食用に温めた分は、見事に完食したよ。角煮の欠片どころかタレも残りませんでした〜!

 でもまあ、皆からも大好評だったので、頑張って作った甲斐があったよ。

 一応、かなり仕込んだからあと数回分はあるはず……多分。

 食後は俺はサングリアを少しだけ飲み、ハスフェル達とランドルさん達はのんびりと水割りを楽しみながら今日の狩りがどれだけ大騒ぎだったかの話を聞いた。

 何しろハイランドチキンの亜種はデカい。普通のニワトリどころか、体の大きさだけなら俺の常識でいうところのダチョウサイズなんだからさ。

 当然、足も速いし奴らはなんと飛ぶらしい。

 なもんで、ハスフェル達は槍や弓で戦い、従魔達と一緒に営巣地の端から取り囲むみたいに展開しながら攻めていったんだって。

 うわあ、あの従魔達とハスフェル達が向こうから広がって逃げ道塞いで襲ってきたら……俺だったら確実に泣くな。でもって気絶して一巻の終わりになる未来しか見えねえよ。



 あれ、もしかしてここで一番危険なのって……ジェムモンスターじゃ無くてこいつらじゃね?

 恐ろしい事に気がついた俺は、全部まとめて明後日の方向に投げ飛ばしておいた。大丈夫だ、あれは俺の仲間だ。

 俺? 俺はここで料理をしてるんだから危険人物には入ってないです!



 二杯目のサングリアを飲みながら、俺は指を折ってお祭りまであと何日あるか数えて考えていた。

「まあ、あと数日は料理をしたいんだけど、そのあとはまた少し狩りに参加するか。一応腕が鈍らない程度には実戦を経験しておかないと、郊外では何があるか分からないものな」

 そう呟いた俺は、サングリアの軽い酔いも手伝って欠伸をしてから大きく伸びをした。

「じゃあそろそろ休むよ。飲みたい奴は自分のテントか外で飲んでくれよな」

 力の抜けた返事が聞こえて、それぞれ残りの酒を一口で飲んでグラスを片付け始める。

 つまみのチーズと干し肉の残りは、そのままハスフェルが収納した。絶対、まだ飲むつもりだな。

「ご馳走さん。今日も美味かったよ。それじゃあまた明日な」

 手を上げて立ち上がったハスフェルの言葉に、他のメンバーも順番に自分のテントへ戻って行った。

 後で聞いたところによると、このあとランドルさんとバッカスさんはそれぞれのテントで休んだんだけど、ハスフェル達三人は、外に椅子を並べて出して星見酒を楽しんだらしい。相変わらずよく飲むねえ。




「さて、それじゃあ今夜もよろしくお願いします!」

 いつものスライムウォータベッドの上にニニとマックスが並んで転がり、俺を待ってくれている。

 笑った俺が、二匹の隙間に潜り込むと、いつものように背中側には巨大化したウサギコンビが素早く収まる。

 フランマが、タロンとタッチの差で俺の腕の中に突っ込んで来て寝場所を確保する。

 ヤミーとティグとマロンの新人トリオが、俺の顔の両横と頭の上の位置を確保し、ソレイユとフォールとタロンはベリーのところへ走って行った。

 モモンガのアヴィーは俺と一緒に寝ると危険なので、大体がニニかマックスの頭の上で寝ている。今日はニニの額の上で丸くなったみたいだ。

 夜行性のエリーは、巨大化してテントの外に出て行った。今から虫取りをするんだって。

 お空部隊は椅子の背中と止まり木用に買ったハンガーに分かれて留まっているし、テンペストとファインの狼コンビも、ベリーのところへ行ったみたいだ。

「私はここでもいいですか?」

 遠慮がちな声と共に、大型犬サイズの大きさのセーブルが、俺の足元にくっつくようにしてニニとマックスの隙間に収まった。

「構わないけど、寝ていて俺が蹴ったりしないかな?」

 足元は、寝返りを打った時に蹴飛ばさないか若干不安がある。

「大丈夫ですよ、ご主人の力なら、思いっきり蹴られても私には枝が当たった程度でしかありませんから、どうぞ心置きなく蹴っ飛ばしてください」

 何故だかドヤ顔のセーブルにそう言われて、それはそれでなんかムカついた俺は、笑ってセーブルの背中を軽く蹴ってみた。

「硬っ。今、足が痺れたぞ。おい」

 驚いて起き上がると、足元でくっついて丸くなっていたセーブルが顔を上げた。

「あれ、何かありましたか?」

 素知らぬ顔でそんな事を言うので、俺は笑ってセーブルの背中に、両足を乗せてやった。

「ああ、いいですね。ご主人とくっついて寝るなんて何十年ぶりでしょう」

 嬉しそうに目を細めてそう言ったセーブルは、本当に笑ってるみたいに見えた。

「足、乗せてても重く無いか?」

「全然大丈夫ですよ。足でも手でも頭でもお好きに乗せてくださいね」

 嬉しそうにそう言うと、また猫みたいに頭を腕の隙間に潜り込ませて丸くなった。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 ベリーの声が聞こえた直後、机の上にともしていた最後のランタンの火が落とされて、テントの中は真っ暗になった。

 改めてふかふかなニニの腹毛に顔を埋めた。ああ、やっぱり癒されるよ。この柔らかい肌触り。

「祭りまで、あと何を作ろうかなあ……」

 そう呟いた直後にそれはそれは気持ち良く眠りの国へ墜落していったので、そこから先の記憶は俺には無い。

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