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スーパースペシャルデラックススイーツプレート大人バージョン!

「はいどうぞ。気にせず先に食ってくれていいぞ」

 出来上がった順に渡してやり、全員分を作ったところで、机の上で待ち構えていたシャムエル様を振り返った。

「じゃ次は、シャムエル様専用ミニサイズだな」

 ハスフェル達が大喜びで作ってやったデザートを食べ始めるのを見ながら、俺は手早くシャムエル様用のミニサイズを作ろうとしたのだが……。

「ええ、私も大きいのがいいよ」

 小さく切ろうとすると、いきなり腕の上に現れたシャムエル様がそう言いながら俺の腕をバシバシと叩いた。

「ちょい待て、さっきほぼ一人前食っただろうが」

「さっきはさっき、今は今!」

 当然のようにそう言って、先ほど作った時に使ったお皿よりももっと大きなお皿を取り出して俺の前に置いた。

「はい、これにお願いします!」

「はいはい。了解。じゃあちょっと考えてる別バージョンがあるからそれを作ってやるよ。待っててくれるか」

 にんまりとそう言って笑った俺は、ハスフェルを振り返った。

「ハスフェル、ブランデーあるよな」

「おう、もちろんあるぞ。何だ、飲みたいのか?」

 さっと取り出してくれたそれは、何度も飲ませてもらった覚えのあるめっちゃ美味しい高級ブランデーだ。

「飲むんじゃないけどな。ちょっと使わせてくれ」

 そう言ってブランデーの瓶をもらうと、小さな片手鍋とコンロを椅子の横に置いた鞄に潜り込んでいるサクラから取り出してもらう。

 ブランデーを小鍋に入れて中火にかける。沸騰はさせない。温まったらすぐに火から下ろす。



 何をするのかと、興味津々で手を止めた全員が俺に注目している。



 手早くパウンドケーキをさっきのようにサイコロ切りにして、温めたブランデーの中に浸してすぐに取り出す。それから、ブラウニーも丸ごと一つブランデーに浸してやる。

「お前、すごい事思いつくな。それ、後でいいから是非食わせてくれ」

 めっちゃ笑顔のハスフェルの言葉に、全員がまるで壊れたおもちゃみたいに頷いてる。

「分かった分かった。後もう一つ試作するからちょっと待っててくれ」

 苦笑いしながらそう言うと素直にまた揃って頷くが、全員の視線は俺の手元をガン見中だ。

 サイコロ状に切ったパウンドケーキをブランデーまみれにしてから、出来上がった一つを口に入れて味見した俺は、笑顔でサムズアップしたよ。また拍手が起こる。



 それから少し考えて、またハスフェルを見た。

「赤ワインも出してくれるか」

 瞬時に赤ワインの瓶が取り出され、手早く栓を抜いてから渡してくれた。

 別の小鍋に赤ワインを少し入れて温める。

「甘みは……蜂蜜で良いな」

 蜂蜜の瓶を取り出し、温めた赤ワインの中にたっぷりと入れてかき混ぜる。

 そのまま少し煮詰めて火から下ろせば完成だ。

「じゃあ、ブランデーを温めておくから、自分で好きに浸して食ってくれるか」

 笑ってそう言うと、パウンドケーキを分厚く切って小さめのサイコロ状に切り分けてやる。

 温まったたっぷりのブランデーの入った小鍋をそのまま鍋敷ごと彼らの目の前に出し、サイコロ状に切ったパウンドケーキ各種と同じくサイコロ状に切ったブラウニーをそれぞれお皿に山盛りにして鍋の横に置く。細めのフォークを人数分並べたら準備完了。

 題してパウンドケーキとブラウニーのブランデーフォンデュバイキングだ。

 多くは語らない。後は好きに食え。



 目を輝かせた五人が、ほぼ同時にそれぞれのフォークを手に鍋に群がる。

「って事で囮りスイーツ完了だ。その間にシャムエル様の分を作るぞ」

 彼らがブランデーフォンデュに群がるのを横目に、シャムエル様が出したお皿にさっきと同じ手順で生クリームを乗せて手早く作っていく。

 当然、パウンドケーキとブラウニーはさっき作ったブランデーしみしみバージョンだ。

 赤ワインソースは、こっそり椅子の影に隠れたアクアに渡して冷ましてもらったからもう使えるだろう。

「ちょっと味見」

 小さめのスプーンに赤ワインソースを少しだけすくって口に入れる。

「あれ、ちょっと甘すぎたかも。まあいい。スイーツなんだから甘くて当然だな」

 そう呟き、レアチーズケーキもナイフを温めてから切り分けて、そこにさっきの赤ワインソースをたっぷりとかける。

 果物は苺を刻んだのとリンゴのウサギだけだけど、レアチーズケーキには飾り用のさくらんぼが乗ってるからそれで良いよな。

 アイスクリームには、ブランデーをこれまたたっぷりと振りかけてやれば完成だ。

「出来たぞ。スーパースペシャルデラックススイーツプレート大人バージョンの完成だ」

「ブラボー! ブラボー!」

 大興奮のシャムエル様が何度もとんぼ返りを切って決めポーズを取っている。

「一応、これもお供えな」

 実はさっきから後頭部の髪の毛をめっちゃ引っ張られてるんだよな。絶対これってあの収めの手だろ。

 苦笑いしつつ振り返ると、予想通りに収めの手が両手バージョンで俺の髪の毛を引っ張ってた。

 ここにはランドルさん達もいるんだけど、大丈夫なのかね?



「さっきのスイーツの別バージョンで、スーパースペシャルデラックススイーツプレート大人バージョンです。どうぞ」

 簡易祭壇にお皿を置き、手を合わせて目を閉じて小さくそう呟く。名前長っ。

 これ以上無いくらいに丁寧に収めの手がケーキを順番に撫でていくのを黙って見ていた。

 最後にこっちに向かって手を振ってから消えていく収めの手を見送って、シャムエル様の目の前に下げたお皿を置いた。

「はいどうぞ。ご希望のスーパースペシャルデラックススイーツプレート大人バージョンだよ」

「うわあい、うわあい、もう見ただけで最高。では遠慮なく、いっただっきま〜〜〜〜〜す!」

 嬉々としてそう宣言すると、やっぱり顔からパウンドケーキマウンテンに突っ込んでいった。



 笑った俺は、小皿にアイスクリームをたっぷりとすくって、残りのケーキや生クリーム、アイスを手早く収納してから席に座った。

 それから、自分のアイスクリームの上にブランデーを回しかけた。

「アイスを作った時からこれがやりたかったんだよ。ブランデーアイス。異世界でこれが食べられるなんて最高じゃん」

 糖分過多になるのであまり食べなかったけど、某高級アイスクリームのカップのやつ、たまに疲れた時にはコンビニで買って食べたんだよ。あれのバニラ味にブランデーをかけて食べたら高級アイスがさらに高級になったんだっけ。

 懐かしい記憶に浸りながら、俺は大喜びでスイーツを平らげる仲間達を眺めながらブランデーアイスを満喫したのだった。

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