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創造主様の心の友?

「ふああ、美味しかった。ケン、もう最高だよ」

 驚くほど早く俺が作ったスペシャルデザープレートを平らげたシャムエル様は、そう叫んでものすごい勢いで振り返った。

「おいおい、ここ。パウンドケーキのカケラが付いてるぞ」

「ええ、何処?」

「ここ、あ、こっちにも付いてるぞ」

 あれだけ豪快に食べたのだからある意味当然だけど、シャムエル様の顔だけじゃなく、額や耳にもパウンドケーキのカケラや生クリームがこびりついている。

 俺に指摘されて、慌てて身繕いを始めるシャムエル様。

 よしよし、尻尾を思い切りもふもふされた事に全く気付いてないぞ。



「はい、これで綺麗になった?」

 念入りに尻尾の手入れを終えたシャムエル様が、得意気に振り返って俺を見上げる。

「おう、綺麗になったぞ」

 手を伸ばしていつもの大きさになった尻尾を突っついてやると、空っぽになった皿を一瞬で綺麗にしてくれた。

「はい、これは返すね。ご馳走様でした」

「あ、そっか。これは俺が買った皿だったな」

 そう言って返してもらったお皿をサクラに渡す。

「いやあ、それにしても本当に美味しかった。さすがは我が心の友だよ。決めた! 私はもう、ずっと君について行くからね」

 目をキラキラに輝かせたシャムエル様にそんなことを言われて、思わず吹き出す。



 おう、創造主様から二度目の心の友発言いただきました。しかもずっと俺について行くって……。

 うん、深く考えてはいけない。これは全部まとめて明後日の方向へ放り出す案件だな。

 って事で、今の発言は聞かなかった事にしよう。



「さてと、あいつらはあんまり甘いのは得意じゃないって言ってたものな。ランドルさん達も甘いのは好きだって言ってたけど、一度にどれくらい食べるか分からないからなあ。となると、このまま置いておいて顔を見てから飾り付けだな。それじゃあ、あとは何をするかな」

 少し考えて、スイーツ各種は一旦サクラに丸ごと預かってもらう。それから、自分で収納してあったレシピ帳を取り出す。

「じゃあ開けたところにあるレシピを作る事にしよう。さて、何が出るかな?」

 そう呟いて、目を閉じてレシピ本を開く。

「豚の角煮。おお、美味そうじゃんか。ふうん、かなり時間がかかる料理なんだ。しかも弱火で一時間以上煮込むのが二回もあるとか書いてあるじゃん。ううん、これは明日の朝から一日がかりで仕込むべきだな。じゃあ、これは明日作るレシピに決定だな。って事で、今から作る別のレシピをもう一つ!」

 そう呟いてまた別のページを開く。

「何々、蒸し鶏。蒸し鶏って鶏ハムとは違うのか?」

 首を傾げつつレシピを読んでみる。

「成る程成る程、下味は塩と酒だけでそのまま鍋で茹でるのか。あ、これって俺がゆで鶏って言ってたレシピとほぼ一緒じゃん。それなら、これにごま油と醤油だれとかネギ塩だれつけて食ったら絶対美味そう。よし、これにしよう」



 作る物が決まったら、早速作業開始だ。

 片付いた机の上に、サクラから胸肉を取り出してもらう。

「ええと普通の鶏肉とハイランドチキンとグラスランドチキンでもやってみよう。ヤミーが食べられそうなら大きいほうがいいもんな」

 その時、ラパン達とくっついて寝ていたセーブルが顔を上げた。

「きっと喜ぶと思いますよ。ご主人の作る料理も食べたがっていましたからね」

 その言葉にちょっと涙腺が緩みかけて、慌てて誤魔化すように鼻を啜った。

 コンロを並べて大きめのフライパンを並べる。右から順番に鶏肉の胸肉、ハイランドチキンの胸肉。グラスランドチキンの胸肉の三種類だ。

 どのフライパンにも肉がぎっしりと並んでいる。

「ええと、この肉が半分ちょい浸るくらいに水を入れて、まずは中火やや強目で一度沸騰させる」

 レシピを復唱しながらコンロに火をつけていき、蓋をして沸いてくるまで加熱する。

「沸騰したら弱火にして、また蓋をしてさらに加熱するのか。あ、肉が分厚い場合は途中で一度ひっくり返せって書いてあるな。こっちのハイランドチキンとグラスランドチキンは、確かにひっくり返さないと綺麗に火が通らなさそうだ」

 大きなトングを使って、手早くハイランドチキンとグラスランドチキンをひっくり返していく。

「で、また蓋をしてしばらく煮込む、火は弱火っと」



 しばらく煮込むと、当然だが先に他よりも小さい普通の鶏肉が出来上がった。

「ええと、火を止めて蓋をしたまま冷ますのか。アクア、じゃあこれを冷ましてくれるか」

 蓋をした熱々のフライパンを見せると、アクアの伸びてきた触手がそれを受け取ってパクッとフライパンごと飲み込んだ。

「お肉の温度が下がればいいんだね」

「おう、五時間ぐらいかな? もう少し早くてもいいかもな」

「了解です。ちょっと待ってね」

 モニョモニョ動き始めるのを見て、使った道具をまずは片付ける。

「お、こっちもそろそろいい感じだな」

 弱火で煮込んでいたハイランドチキンとグラスランドチキンも出来上がったみたいなので、隣で待ち構えていたアルファとベータに冷ましてもらう。

「冷めたよ、はいどうぞ」

 アクアが取り出してくれた蒸し鶏を取り出して端っこを一切れ切ってみる。

「どれどれ、おお、柔らかくて美味しい。うん、鶏ハムよりも薄味だから、これ単体で食べるならタレがいるな。割いてサラダに使ったらそのままでも大丈夫そうだ。よし、もう手順は分かったからこれは大量に仕込んでおこう」

 ヤミーのためにも、これはしっかり作っておかないとな。

「あ、じゃあ今日はこれを作って、明日はいつも俺が作ってるスパイスの効いた鶏ハムを角煮を煮込んでる合間に作ればいいんだな。よし、それで行こう」

 そこまで呟いた時、いきなり耳たぶを引っ張られた。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ!ジャジャン!」

 いつものように小皿を持ったシャムエル様が、机の上に現れてステップを踏みながら飛び跳ねている。

「おう、まずは普通の鶏肉で作った蒸し鶏だよ。味はこれだけだと薄味だからな」

 もう一切れ切って渡してやる。

 そうそう、これは味見って呼んでいいよな。

「わあい、美味しそう」

 嬉しそうにそう言ったシャムエル様は、両手で持った蒸し鶏を齧り始めた。

「うん、確かに薄味だけどすごく柔らかくて美味しいね。後の二つはまだなの?」

 当然のようにそう言われたところでタイミング良く出来上がったので、ハイランドチキンとグラスランドチキンの蒸し鶏も一切れずつ切って渡した。

 当然どちらも美味しいと大喜びされたので、結局、もう一切れずつ切って渡したよ。



 なんだか楽しくなってきた俺は、追加分を作るために新しく出してもらった各種鶏肉にせっせと塩とお酒を振りかけて回った。

 そのあと、ありったけのコンロとフライパンを並べて蒸し鶏の大量生産は無事に終了したのだった。

 さて、そろそろ皆が戻ってくる時間なんじゃないかな?

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