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もふもふ尻尾触り放題大作戦!

「って事で、味見は終了だ。さあ、スペシャルデザートを盛り付けるぞ」

 笑った俺がそう言うと、嬉しそうに拍手をしたシャムエル様はなんとその場で飛び上がって、見事なとんぼ返りを決めた。

「おお、すっげえ!」

 そう言って拍手をしてやると、気を良くしたらしく今度はその場でバク転を決めて見せた。

「期待してま〜す!」

 満面の笑みでそう言って俺の腕に尻尾をポフポフとソフトタッチしてから、触ろうと伸ばした俺の腕ギリギリのところまで下がってくるっと回る。

 なにその焦らしプレイ。

「お願いします! その尻尾をもふもふさせてくれ〜」

 笑って叫ぶと、もう一回くるっと回ったシャムエル様が一瞬で俺の肩に飛んできた。

「駄目〜これで我慢しなさい」

 そう言って尻尾で俺の頬を叩いた。おお、このもふもふ尻尾がたまらん。



 しばらくもふもふ尻尾ビンタを受けた俺は、机に戻ったシャムエル様に急かされて、スペシャルプレートを作り始めた。

 まずは、パウンドケーキを切らないとな。

 ところが、俺が1センチくらいで最初のパウンドケーキを切ろうとしたら、すぐそばに一瞬で飛んできたシャムエル様が地団駄を踏んでナイフを叩いた。

「なに、もっと分厚く切れってか」

 またしても満面の笑みで頷くシャムエル様のご希望により、結局、全部2センチくらいの分厚さに切ったよ。カロリーって言葉知ってるか?

 三種類あるパウンドケーキは全部そのサイズでカットして、更にカットしたそれをそれぞれ2センチ角くらいの一口サイズのサイコロ状に切っておく。

 レアチーズケーキの土台が割れていない無事な部分も、八分の一サイズでカットしておく。




「サクラ、生クリームと砂糖を出してくれるか」

 取り出した瓶入りの生クリームを半分くらいボウルに取り出し、砂糖を入れて泡立て器を取り出す。

「ええと、これをしっかり泡立てて欲しいんだけど誰にやってもらおうかな。ああ、じゃあやってくれるか。八分目よりしっかりだぞ」

 誰に頼もうか考えていたら、まだ俺から直接頼まれるお手伝いをしていなかったエータとガンマが、側で待ち構えて触手を揃って上げて自己主張していたので、お願いする事にした。全員に出来る仕事を振るのも結構気を使うよ。

 ちなみに、レース模様のクロッシェは、万一誰か他の冒険者が来たら大変なので今はずっとアクアの中にいてもらってる。

「はい、出来たよご主人。これくらいで良い?」

「どれどれ……うん、完璧だよ」

 しっかり角の立った生クリームを見て親指を立てる。



 ちなみに、用意してもらった泡立てた生クリームはデコレーション用なんだけど、俺は絞ったりなんて出来ないから豪快にスプーンですくってそのままお皿に乗せるぞ。



「ええと、お皿の真ん中にまずはたっぷりの生クリームを入れます」

 そう言って、大きなスプーンで山盛りの生クリームをすくい、お皿の真ん中にボタっと山盛りに落とす。

「ここにサイコロパウンドケーキの山を築くぞ」

 笑ってそう呟くと、サイコロ状にカットしたパウンドケーキを生クリームの山の周りに適当に並べて盛り付けていく。だけど、きっちり並べるんじゃなくて、山状に積み上がったみたいな感じに適当にチグハグに乗せていく感じだ。

「そこへもう一回、生クリームだ!」

 お皿の真ん中にそびえ立つサイコロパウンドケーキマウンテンの頂上に、さらに生クリームをたっぷりと落とす。

 これで山頂に雪が積もりました。



 もう、横で見ているシャムエル様の目は、落っこちるんじゃないかと心配になるくらいに見開かれているし、感激のあまりなのか知らないけどいきなりプルプル震え始めたし。そして同じくプルプル震える尻尾がまたしても三倍サイズに膨らんでる。

 ああ、その尻尾を今すぐモフりたい!



「そして、サイコロパウンドケーキマウンテンの裾野には、ブラウニーの大地が広がっております」

 もうだんだん面白くなってきて調子に乗った俺は、そう言いながらカットしたブラウニーを手に取り、サイコロパウンドケーキマウンテンの横に並べて置いた。

「その反対側には、レアチーズケーキの谷が並びます」

 そう言って、サイコロパウンドケーキマウンテンを挟んだ反対側にレアチーズケーキを並べる。カットイチゴとさくらんぼ付きだ。

 当然、レアチーズケーキの横にも生クリームをたっぷりすくって置き、角切りにしたイチゴと輪切りのキウイとバナナをその生クリームと一緒に飾る。その横にはリンゴのウサギも並べて飾る。

「そして、白いアイスクリームの岩がブラウニーの大地の手前に転がります」

 そう言って、別の大きめのスプーンで苦労して丸くすくったアイスクリームをブラウニーの手前に並べる。最後にアイスクリームの上にはイチゴの扇子を飾れば完成だ。



「出来上がりだ。どうだ。俺様デザイン、オリジナルスペシャルスイーツワールドだ」

 出来上がったお皿を手に、ドヤ顔を決めてやる。



「ブラボー! ブラボー!」

 跳ね回って拍手しているシャムエル様の隣では、またしても収めの手の左右両方が現れて、シャムエル様と一緒になってものすごい勢いで拍手している。

「はいはい、今からお供えするからちょっと待ってくれよな。あれ? さっきブラウニー以外はお供えしてるんだけど、良いのかな? まあ、形も変わってるし……構わないよな?」

 ふと思いついてちょっと心配になったが、あの収めの手の様子を見るに二回お供えしても問題無さそうだ。



 苦笑いした俺は、作り置きの激うまジュースをグラスに入れてお皿と一緒に持って、簡易祭壇へ向かった。

 当然、俺の後ろを収めの手がついてくる。

 簡易祭壇にお皿を置き、激うまジュースを横に並べ、少し考えてからコーヒーも取り出してマイカップに入れて横に並べる。

 カトラリーは、ナイフとフォークとスプーンだ。



「きっと好きだろうと思って、ちょっと頑張って飾り付けてみました。サイコロパウンドケーキマウンテンとレアチーズケーキとブラウニーに、生クリームたっぷり、果物と自家製アイスクリームを添えてみました。気に入ってくれると嬉しいです」



 目を閉じて手を合わせて、お皿に向かってそう話しかける。

 何度も俺の頭を収めの手が撫でた後、もうこれ以上無いくらいに丁寧に一つ一つのケーキを撫でた収めの手が、最後にジュースとコーヒーを撫でて消えていった。

「よし、届いたな」

 笑ってお皿を下げた俺は、机の上で待ち構えていたシャムエル様の目の前にそのお皿を置いた。



「俺はこんなに沢山は食べられないから、食べるのを手伝ってください。お願いします」

 笑ってそう言った俺を、シャムエル様が驚いて見ている。

 サクラに出してもらったお皿に、俺はサイコロパウンドケーキマウンテンから全種類二切れずつもらい、生クリームも少しだけすくって横に付ける。

 ブラウニーとレアチーズケーキも一口ずつカットして取り分け、アイスクリームもスプーンですくって少しだけもらう。果物は適当に少しずつ取れば俺はもう充分だよ。さくらんぼとリンゴのウサギはそのまま進呈する。

「はい、どうぞ」

 改めて大きい方のお皿を目の前に置いてやると、もうこれ以上無いくらいに目を輝かせたシャムエル様はキラキラの瞳で俺を見上げた。

「これ全部もらって良いの?」

「おう、もちろんどうぞ。あ、だけどこんなに食べて腹を壊したりしないだろうな?」

「大丈夫です! では、いっただっきま〜〜〜〜す!」

 嬉々としてそう宣言したシャムエル様は、文字通りサイコロパウンドケーキマウンテンに頭から突っ込んでいった。

 少し溶けたアイスクリームがシャムエル様の振り回した尻尾に当たる。



「おいおい、大事な尻尾が汚れたぞ」

 そう言ってやったがしかし全くの無反応。

 苦笑いした俺は、尻尾を持ち上げてシャムエル様の体を少し動かしてやり、アイスクリームから避難させてやった。

「ほら、汚れたじゃないか、仕方がないなあ」

 白々しくそう言いながら、側に来たサクラにシャムエル様の尻尾を一瞬で綺麗にしてもらい、食べるのに夢中なシャムエル様の通常比三倍の巨大尻尾を、俺は心置きなくもふもふさせてもらった。



 題して、もふもふ尻尾触り放題大作戦! 大成功だよ。グッジョブ俺。

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