今日の予定と目標
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
ショリショリショリ……。
ふんふんふん!
ふんふんふん!
「うん、起きるよ……」
いつもの如く、モーニングコールチームに起こされた俺は半分寝ぼけながら返事をしていて違和感に気付いた。
ええと、最後の何だかものすごい鼻息みたいなのは誰だ?
開かない目で確認する事も出来ず、いつの間にか二度寝の海に沈んでいた。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
ショリショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、分かったよ。起きるって……」
またしてもモーニングコールチームに叩き起こされた俺は、半ば無意識に返事をしながら不意に奇妙な懐かしさを感じて気が付いた。
分かった。
あれだ、最後の鼻息は狼のテンペストとファインだ。間違いない。
昔のマックスが、いつも朝、寝過ごしそうな俺を起こしてくれた時の鼻息にそっくりだよ。
そんな事をぼんやり考えていたら、お空部隊の最終モーニングコールで俺の耳たぶと額それから上唇をちょびっとだけ噛まれて俺は悲鳴を上げて飛び起きた。
「待った待った! 痛い痛い痛い!」
ベリーの吹き出す声と、鳥達が羽ばたく音が重なる。
「上唇はマジで痛いって。勘弁してくれよ」
笑いながら何とか起き上がってそう言うと、また羽ばたく音がして戻って来た鳥達が俺の頭や肩に留まる。
「ご主人起きた〜!」
嬉しそうな声が重なり、脱力した俺は順番に全員をおにぎりの刑に処してやった。
それから他の子達も順番に撫でたりおにぎりしたりしてから、起き上がって身支度を整えてから顔を洗いに水場へ向かった。
うん、ここは安全だって聞いてるけど、宿と違って何が起こるか分からないから装備は整えてから出ような。
しかし、そう思って装備を整えていると何も起こらないんだよな。
何かが突っ込んでくるような事もなく、顔を洗ってサクラに綺麗にしてもらって水が湧いている泉から流れ出た小川にスライム達を放り込んでやる。
お空部隊も飛んできたので、スライム達と一緒に大喜びで水遊びしていたよ。
「さて、今日はどうするのかね」
テントに戻ると、跳ね飛んで一緒に戻って来たサクラからまずは机と椅子を取り出して並べる。
「作り置きのサンドイッチでいいな」
適当に取り出して並べていると、同じく身支度を整えたハスフェル達やランドルさん達が来たので、まずはそれぞれサンドイッチとコーヒーで朝食を済ませた。
「今日はどうするんだ? 確かまだ祭りまで日があるよな」
街を出た時でも確か半月以上あったはずだから、まだ一週間は余裕である事になる。
「どうするかな。せっかく滅多にこられないところへ来ているんだし、もう少しジェム集めをしようかと持ってるんだが、ランドルはどうだ? もう一匹くらい猫科の猛獣がいれば交代で狩りに行かせても安全だろう」
「それはまあ確かにそうですが、オーロラグリーンタイガーを自分がテイムするのはさすがに無理な気がします」
食後のお茶を飲みながら、ランドルさんが困ったように俺を見ながらそう言って首を振っている。
「大丈夫だと思うけどなあ。でもまあ、無理だと思うならやめたほうがいいかも。ええと、ここは他に何がいるかわかるか?」
しかし、ハスフェル達も考えているので本当に知らないみたいだ。
「じゃあ、こうしよう。ジェム集めしながら移動して、もし良さそうなのがいれば協力するから頑張って確保してテイムすればいい。俺も何か珍しい子がいればテイムしたいからさ」
「まあ確かにそうだな。じゃあそれで行くか」
って事で、またここは撤収して奥へ入る事になった。
『猫科の猛獣ですね。何か見つけたら追い込んで差し上げます』
『了解! 頑張って探してあげるね!』
念話でも分かるくらいに張り切ったベリーとフランマの声が届き、俺達は揃ってお茶を吹き出してランドルさん達に驚かれたのだった。
「さて、それじゃあ出発するか」
手早くテントを撤収した俺達は、それぞれの従魔に飛び乗りまた森の中へ進んで行った。
なんとなく森の中に出来た獣道を進み、どんどん奥地へと分け入っていく。しばらく進むと明らかに植生が変わってくるのが分かり足を止めた。
今まではどちらかというと鬱蒼と茂った深い森だったのが、峰を一つ越えたあたりで急に乾燥した草地と岩場に変わって来たのだ。
「ううん、これはまた変わった場所に出たな。何かいるかな?」
巨大化して俺達を守ってくれている従魔達も、急に変わった風景に辺りを警戒しつつ見回している感じだ。
『いましたね。これは面白いのを見つけましたがどうしますか?』
『何がいたんだ?』
ベリーの声に念話で返す。
『森側にカラカルが二匹いますね。また鉢合わせてみますのでその辺りにいてください。適当に痛めつけてからそちらへお届けしますね』
カラカル? 聞いた覚えはあるが、どんなのかすぐに思いつかない。
草原へ出たところで足を止めて考えていると、まるで猫が喧嘩してる時みたいな泣き声がして、不意にガサガサと茂みが揺れて茶色の塊が転がり出て来た。
「おお、これはいいのが来たじゃないか!」
マックスの背の上で俺は思わず身を乗り出してそう叫んだ。
転がり出て来たのは、茶色一色で耳が黒い、そしてその耳の先の長い毛が飛び出した何とも可愛い巨大猫だったのだ。
ま、普通の猫のサイズじゃないのは当然だけど、あの巨大な虎やサーベルタイガーを見た後だと、これは可愛く見える。
二匹のカラカルは俺達に気付かないのか、お互いを見合って、もの凄い顔で威嚇しあっている。
「そっか、カラカルってこれか。確かそんな名前のがいたな。猫科の猛獣の中では割と小型なはずだけど、ここでは大きいんだな」
マックスの背の上で冷静にそんな事を考え、ランドルさんを振り返った。
「どうします?」
お互いの目を見交わして揃って大きく頷く。って事で、まずはこいつらをテイムする事にした。
ゆっくりと二匹を取り囲むように展開する従魔達を見て、俺とランドルさんは静かにそれぞれの従魔の背から地面に降り立ったのだった。




