夕食と明日の予定
「おお、魚か。これは美味そうだ」
ハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも嬉しそうに山盛りになった白身魚のフライを見ている。
「で、これは何だ?」
かき揚げを見て不思議そうにしている。
「あれ、知らないか? かき揚げって言って、玉ねぎとニンジンと小エビを絡めて油で揚げてあるんだ。カリカリして美味いぞ」
目を輝かせたハスフェル達が嬉しそうに山盛りにフライとかき揚げを確保するのを見て、俺も白身魚のフライを慌てて確保した。それからレタスと温野菜を白身魚のフライの横に盛り合わせ、タルタルソースをたっぷりとかける。それから、きゅうりの酢の物は小鉢に取り、フライドポテトはライスバーガーの横に山盛りに取り、玉ねぎスープをお椀によそれば完成だ。
「へえ、これは面白い。焼いたご飯でかき揚げを挟んでいるのか」
ハスフェルとギイは、俺が取ったライスバーガーに興味津々だ。
一応、数は作ってあるから全員取ってもまだ余裕がある。人気があるようならもう少し作っておこう。
「ネギ塩だれで味付けしてある。気になるなら食べてみろよ」
笑ってそう言い、ライスバーガーのお皿を彼らの前に押しやる。それぞれ一つずつ取るのを見て、ランドルさん達もライスバーガーを取った。
俺の分は、いつものように一旦簡易祭壇に並べて手を合わせる。
「新作の白身魚のフライと、かき揚げの入ったライスバーガーです。少しですがどうぞ」
小さくそう呟くと、いつもの収めの手が俺の頭を撫でてから料理を順番に撫でて消えていった。
「じゃあ、俺も頂こうっと」
お皿を自分の席に戻して座ると、待っていてくれた全員で揃って手を合わせてから食べ始めた。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ!ジャジャン!」
シャムエル様はやっぱり大きなお皿を振り回しながら、いつものあじみダンスをキレッキレに踊っている。
「はいはい、ちょっと待て。どれがいる?」
「全部お願いします!」
おう、断言したな。
さっき俺が二口食っただけのライスバーガーをまるっと食ったんじゃないのか?
だけどまあ、神様に欲しいと言われたら、あげない訳にはいかないよな。
諦めのため息を吐いた俺は、一番大きな白身魚のフライを丸ごと一切れにタルタルソースをたっぷりと絡めてやり、レタスと温野菜とフライドポテトと一緒にお皿に盛り付けてやる。別の小皿にきゅうりの酢の物を入れて、玉ねぎスープも出て来た蕎麦ちょこに入れてやる。
ライスバーガーは、ちょっと考えてナイフで半分に切って大きい方をお皿の端に乗せてやった。
嬉しそうにウンウンと頷いたシャムエル様は、手を伸ばしてお皿を渡されるのを待ち構えている。
「はいどうぞ。白身魚のフライと、レタスと温野菜、それからきゅうりの酢の物と玉ねぎスープ。で、これがかき揚げのライスバーガーだよ」
「ありがとうね。では、いっただっきま〜す!」
いつもの如くそう言うと、お皿を両手で持って白身魚のフライ目掛けてやっぱり頭から突っ込んでいった。
「ううん、これ柔らかくて美味しい。白いソースとよく合うね! これ気に入ったから定番で作ってね!」
顔中タルタルまみれになったシャムエル様が嬉しそうに報告してくれる。
おう、定番化希望するくらいかよ。だけど、これは白身魚のある時だけな。
「おお、柔らかくて美味いな」
「この白いソースが合うぞ」
白身魚のフライは大好評だったみたいで、皆大喜びでバクバク食ってる。残ると思ってたけど完食しそうな勢いだよ。
逆にかき揚げは、味は美味しいんだけど、そのまま食べるとちょっと食べにくいと言われた。
で、意外だったのがライスバーガー。
これはそもそも、単に俺が懐かしい味のバーガーを食いたいから作っただけだったんだけど、全員から大好評を頂きました。
あっという間に食い尽くされてしまい、また作ってくれとのリクエストまで頂いたので、これも定番メニューに追加決定!
途中から、ハスフェル達はかき揚げをパンで挟んで俺が出してやったネギ塩だれ味で即席バーガーにしていた。どうやらこうすれば楽に食べられたらしく、今後はかき揚げ系は、パンかご飯で挟んで出す事にしたよ。
大満足の食事を終えて、デザートの激うまリンゴとぶどうを食べながら、隣に座るハスフェルを振り返る。
「それで、今日は何を狩ってきたんだ?」
「狩ったのは、オーロラサーベルタイガーとオーロラグリーンタイガー、それからオーロラグレイウルフ、それからオーロラグリズリーを何頭か倒してきたよ。どれもなかなかの大物だったぞ」
それを聞いた俺とランドルさん達が、揃って遠い目になる。
普通、どれか一頭でも出会った瞬間、ほとんどの冒険者は人生終了してると思う。それをなかなかの大物って……。
「ケンが次にテイムするなら狼だな。今回狩ったグレイウルフならテイム出来ると思う。グリズリーはやめた方が良い。あれは駄目だ」
「確かに駄目だな」
「うん、やめた方が良い」
三人揃って頷くのを見て、俺ととランドルさんは無言で顔を見合わせた。
「ええと、何が駄目なんだ?」
絶対聞きたくないけど、聞かないともっと怖い。
「そもそも確保が出来ない。とにかく物凄い力で反撃してくるんだ。今回の狩りは、二人がテイム出来るかの下見を兼ねていたので、倒す前に確保出来るかやってみたんだ。で、俺とギイが二人掛かりで槍の柄で打ち込みに行ったのに、まともに跳ね返されたんだ」
その言葉に、俺達の目がまん丸になる。
「ええ、お前ら二人の打ち込みを跳ね返した?」
「ああ、しかも二回やって二回とも反撃された。それで、これはどう考えてもこちらが無傷では確保出来ないとの結論に達した訳だ」
「おう……それはご苦労様。了解だよ、別に熊が欲しい訳じゃないって」
思いっきりビビってる俺の言葉に、ランドルさんもものすごい勢いで頷いている。
そうだよな。別に熊にこだわりは無いから、テイム出来なくても全然構わないよな。
「じゃあ、俺の次の目標はそのグレイウルフだな。マックスも同じ犬科の仲間が増えれば、狩りをするのが楽になりそうだしな」
俺の言葉に、ハスフェル達も揃って頷いてくれたので、また頑張ってテイムする事になったみたいだ。
でも、仲間が増えるのは嬉しいもんな。よし、明日も頑張るぞ!