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白身魚のフライとかき揚げ!

「それじゃあ、まずは白身魚のフライからだな」

 取り出した大きめの料理用のバットに、さっき骨を抜いてもらった白身魚を並べる。

「まずは軽く塩胡椒〜」

 そう言いながら、細かく砕いた岩塩と黒胡椒を振りかける。

「じゃあ、手分けして手伝ってくれるか。まずはこれをフライにするぞ」

 何枚ものバットに並んだ大量の白身魚を見せると、スライム達が一気に張り切って机の上に飛び乗ってきた。

「まずは小麦粉と溶き卵、それからパン粉を準備しま〜す!」

 何となくだけど、いつもサクラとアクアがリーダーっぽくなって指示を出している。

 今も二匹の号令で、レインボースライム達があっという間に準備を整えてくれた。

 もう揚げ物の時って、最初の塩胡椒の味付け部分と最後の油で揚げる部分だけ俺がやれば、後は全部スライム達がやってくれる。

 煮物みたいな、微妙な味付けや火加減が必要な料理は無理だけど、揚げ物はある意味オートメーション化しやすい調理法だったみたいだ。



「それではまずは、小麦粉をまぶしま〜す!」

 苦笑いしながら油の準備をして待っていると、そう宣言した小麦粉担当のデルタとイプシロンが、あっという間に白身魚に綺麗に小麦粉をまぶしてくれる。

「溶き卵に潜らせま〜す!」

 溶き卵担当のゼータとエータも声を揃えてそう言いながら、テキパキと溶き卵に潜らせて隣に用意された生パン粉に白身魚を放り込む。

「パン粉を満遍なくまぶしま〜す!」

 アルファとベータとガンマが手分けして手早くパン粉の衣をつけてくれる。

「お願いしま〜す!」

 空のバットに、次々に並べられる準備万端整った白身魚を良い感じに暖まった油に投入。

 揚げ始めてしばらくして不意に気が付いた。



「サクラ、ゆで卵ってあったっけ?」

「あるよ〜、何個要りますか?」

 慌てて尋ねると当然ように言われて、首を傾げる。

「あるならそれを使おう。あれ、でもゆで卵なんていつ作ったっけ?」

 確かその辺りの在庫って全滅してなかったっけ?

「商人さんが、茹で卵もありますよって言って、それならお願いしますってご主人が言ってまとめて買ってたよ? 温泉卵と、半熟卵と固茹で卵があるよ」

 ドヤ顔のサクラにそう言われて、俺は思わず吹き出した。

 そうだそうだ。確かそんな会話をした覚えがある。

「じゃあ、固茹で卵を二十個ほど使うから、殻を剥いてみじん切りにしておいてくれるか」

「了解、準備しておくね」

 そう言いながら大きめの皿を並べて、油の切れた白身魚のフライを並べていく。

「確か、ピクルスの瓶詰めもあったな。じゃあ、揚げてる間にタルタルソースも作っとくか。あれは混ぜるだけだから揚げながらでも作れるな」

 次々に手早く用意される衣の付いた白身魚を揚げながらそう呟き、サクラと一緒に出来上がったフライをお皿に並べているアクアを見る。

「アクア、玉ねぎ四個と、ピクルスはひと瓶分、全部みじん切りにしておいてくれるか」

「了解です!」

 触手が敬礼するかのように上げられ、サクラとくっつく。これだけで持ってるものを交換出来るって、何度見てもすごいと思うよ。



「君だって出来るよ?」

 揚げたてのフライを横目に見ながら、机の上にいたシャムエル様が当然のようにそんな事を言う。

「ハスフェルもそんな事言ってたけど、俺には、収納ってやっぱりどうにもよく解らない感覚なんだよな。出し入れは出来るようになったけど、あんな風には渡せないな」

「まあこれはもう、はっきり言って慣れだからね。頑張って練習してね」

 そう言いつつ、視線は目の前の揚げたて白身魚のフライに釘付けだ。

「まだ、タルタルソースが出来てないぞ」

 笑いながらそう言い、小さめのを一つ渡してやる。

「ほら、これが本当の味見だ。熱いから気を付けてな」

「わあい、揚げたて!」

 両手で受け取ったシャムエル様は、嬉しそうにそう言って熱々のフライを齧り始めた。

「熱っ! だけど美味しい! でもやっぱり熱い!」

 尻尾をブンブンと振り回して、熱い熱いと連呼しながら大興奮状態で食べている。

「俺も一つ味見」

 そう言って、半分に割れたかけらを口に放り込んだ。

「あっつ。だけど確かに美味しい」

 ハフハフ言いながら、口の中を冷まして飲み込む。

 うん、なかなか上手く揚ってるな。よしよし。



 残りを揚げながら、大きなボウルにみじん切りにしたタルタルソースの材料を全部まとめて入れ、塩胡椒をしてから大きなスプーンでしっかりと混ぜる。マヨネーズをたっぷりと入れ、ゆるさを見ながらお酢を追加しながらさらに混ぜる。最後に刻んで絞ったパセリを入れて軽く混ぜれば完成だ。

 うん、めっちゃ大量に出来たぞ。

 どう見ても業務用レベルだけど、これくらい作っとかないとあいつらの食う量っておかしいからな。

 ボウルごとサクラに飲み込んでもらい、小さく笑って一つ深呼吸をする。



「じゃあ、次はかき揚げだな」

 使った小麦粉やパン粉、それから溶き卵のちょっと残ったのは、全部スライム達が先を争うようにして綺麗にしてくれる。

 おかげで郊外で料理してるのに洗い物の苦労が一切無い。いやあスライム様様だね。



「ええと、まずは衣作りだな。どれくらいいるかねえ」

 かき揚げは定食屋の定番だったので大丈夫だが、衣の量の加減が分からない。

「まあ良いや。足りなかったら足せばいいな」

 そう呟き、大きめのボウルに小麦粉と片栗粉、それから塩を混ぜて氷で冷やした水を加える。

「ここはダマにならないように混ぜるよ」

 そう呟いて、手早く綺麗に混ぜ合わせる。

 それから用意してあった玉ねぎとニンジンの千切りを別のボウルにまとめて入れて、そこに皮を剥いたエビもまとめて入れる。軽く混ぜてから小麦粉を全体に振ってまぶしておく。

「じゃあ、油も新しくして温めますよっと」

 綺麗にしてくれた大きなフライパンに、新しい油をたっぷりと入れてから火をつける。



 ちなみに、今使ってるのは菜種油。いわゆるサラダ油ってやつだね。オリーブオイルよりもこっちの方が軽く揚がるので最近はこれを使ってる。これもセレブ買いで見つけた油だ。



 スライム達は、俺のする事を並んで凝視している。

「ああ、悪いけどこれはちょっと手伝ってもらえる所が無いなあ。お玉ですくってそのまま油に入れるからな。後片付けをお願いするから待っててくれるか」

 そう言いながら、混ぜた具を衣に絡めてお玉でまとめる。

「このまま油に投入っと」

 軽く火が通るまで触らない。今手を出すと崩れるぞ。

 パチパチ言い始めたらひっくり返して、火が通れば完成だ。

 だけど、見ていたアクアとアルファが衣に絡めてお玉に入れるところまでやってくれたので、後半はめっちゃ段取りよく作業が進んだよ。



「よし、これで終わりだ!」

 最後のかき揚げを油切りのザルに入れて火を止める。

 あんなにあった野菜もむきエビも全部無くなったよ。


 いやあ、よく頑張ったよ、俺。誰か褒めて。


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