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昼食と昼寝

「到着〜!」

 俺の叫ぶ声と、マックスとビスケットが草原に駆け込むのは完全に同時だった。

「残念ですが、これは引き分けですね」

「そうだな、完全に同着だったな」

 今朝テントを張った見覚えのある草原に駆け込んだ時、シャムエル様もマックスの頭の上で同着だと言って笑って手を叩いていた。

「しかし、ビスケットの走り出しの加速が凄えな。短距離だったら間違い無くトップだな」

 興奮して跳ね回るマックスの首筋を叩いてなだめてやりながら、そう言ってランドルさんを振り返る。

「ええ、俺も驚きました。ですが早駆け祭の三周戦は長距離戦で途中の駆け引きが勝負の要ですからね。駆け出しがいくら速くても持久力がなければ続きませんよ」

「確かに、駆け引きの部分は大きいよな」

 並んでゆっくりと歩き、水場のすぐ近くで従魔から降りる。

「じゃあ、今朝と同じ場所で良いな」

「そうですね。じゃあテントを出します」

 ランドルさん達が自分達の小さなテントを取り出すのを見て、俺もいつもの大きいテントを取り出してスライム達に手伝って貰って手早く組み立てていった。



「どれにしますか?」

 サクラが取り出してくれた弁当を並べて、俺のテントに入って来たランドルさんとバッカスさんを振り返った。

「うわあ、これは素晴らしい!」

「ええ、どれか一つを選ぶんですか!」

「決められない〜!」

 机に並んだ数々の弁当を見て、目を輝かせた二人は、揃って喜んだ後に選べないと叫んで悲鳴をあげた。

「あはは、だけど気持ちは分かりますよね。これは選ぶのが難しい」

 笑った俺も、腕を組んで並んだ弁当を眺めた。

 サンドイッチは定番の種類が並んでいるが、それ意外にもフランスパンみたいなハード系のパンにハムやチーズ、それから色とりどりの野菜をぎっしりと挟んだのや、丸パンやロールパンに同じくいろんな具材を挟んだもの。

 それ以外にも、和食系の幕の内弁当や、単品の揚げ物やおかず系も綺麗に蓋付きの箱に入れて並んでいる。

 他には、様々な具入りのおにぎり。大きめの蓋付きのお椀の中身は何と丼になっていて、これは蓋の色によって種類が分けられていて、俺が開けたのはカツ丼だった。

「俺これにする。カツ丼食いたい」

 それを取り、単品のおかずを見て野菜サラダと大根の浅漬けを取った。

 ランドルさん達は、おにぎりとおかずを色々取ってる。

 それぞれ好きに取って手を合わせてから食べ始める。

「うう、冷えてるのに美味いって……何これ」

 ふっくらジューシーなカツを一口齧って感動する。

 ステップを踏む音に横を見ると、どう見ても大盛り用のお茶碗を持ったシャムエル様が、目を輝かせてながら飛び跳ねまくっている。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ!ジャジャン!」

 やや激しい味見ダンスは、シャムエル様の興奮度を物語っている。

「これでいいか? それとも他のを取ろうか?」

 一口食べただけのカツ丼を指差し、まだお弁当各種が並んだままの机を指差す。

「か、つ、どん! か、つ、どん! か〜〜〜〜〜〜〜っつどん!」

 はい、新作カツ丼ダンスいただきました。

 って事で、どう見てもあのお椀に入れたら俺の食べる分が確実に無くなる。うん、俺の分はまたお代わりすればいいよな。

 若干遠い目になりつつ、差し出されたお椀に俺の分を入れてやる。

 はい、予想通り全部入りました。

 何だか悔しくなって、カツ丼の横にレタスを数枚と大根も一緒に盛り合わせてやる。

「はいどうぞ。師匠特製カツ丼にサラダと大根の浅漬けトッピングだよ」

 ドン、と目の前に置いてやると、立ち上がったシャムエル様の尻尾がほぼ最大クラスまで膨れ上がった。

「わあい、これ最高! それでは、いっただっきま〜す!」

 興奮して尻尾をブンブンと振り回しつつ、両手でお椀の縁を持ってカツ丼に頭からダイブして行った。

「あはは、もう好きにしてくれ」

 苦笑いしてもふもふな尻尾を横から手を伸ばして触ってやる。



 お、食うのに夢中で反応無し。よしよし、今なら好きにもふれるぞ。



 思わず身を乗り出して、もふもふ尻尾を堪能させてもらった。

「食事中にいきなり、何をやってるんですか」

 笑った声に我に返る。

 そうだった。ここにはランドルさん達もいたんだった。

 焦って顔を上げると、一旦箸を置いた二人も爆食しているシャムエル様を笑って見つめている。

「ハスフェル達から聞きましたが、その子もあなた達の故郷である樹海出身だそうですね。従魔ではなく、あくまで貴方の側にいたくて一緒にいるのだとか」

 成る程。普通のリスで通すにはシャムエル様は色々無理があるけど、謎の樹海出身だって言えば、何でも通るんだ。

「まあそうだな。テイムした覚えはないよ」

 誤魔化すように笑って肩を竦めると、もう一回もふもふの尻尾を突っつく。

「可愛いですよね」

「まあそうだな。可愛いよ」

 顔を見合わせて笑い合い、俺は自分の分の丼を取るために立ち上がった。

 結局、もう一回カツ丼を取り、美味しく全部いただきました。



 ご馳走様でした。

 師匠、今度会ったらまた各種ジビエを大量に進呈させていただきます!




 俺達がのんびり食事をしている間に、どうやら肉食チームはベリーが作った異空間でリアル弁当を平らげたらしく、今は揃ってあちこちに転がって昼寝タイムだ。

 草食チームとお空部隊は、こちらもあちこちに散らばってせっせとお食事中だ。

「まあ、何か来たらあいつらが反応してくれますから大丈夫ですよ。それじゃあ俺達も昼寝しましょう」

 食べ終わってしばらくすると、揃って我慢出来ないほどの眠気に襲われた為、俺達も少し昼寝をする事にした。

 それぞれのテントに潜り込む二人を見送ってから、いつの間にか完成していたスライムウォーターベッドを見る。

「ニニは外で寝てるのか。それじゃあ一人で寝るか。考えてみたら、添い寝無しで寝るのって初めてじゃないか」

 小さくそう呟いて、思わず笑ってしまった。

 しかし、スライムウォーターベッドに俺が上がって横になろうとすると、起き上がったニニが慌てたように走って来て俺の目の前でスライムウォーターベッドに飛び乗って横になった。

「はいどうぞ、ご主人」

 長い尻尾をパタパタさせながらの得意気なその言葉に、俺は笑ってニニの大きな顔に抱きついた。

「そうだよな。やっぱりニニがいてくれないとな」

 耳元でハアハア言う音に振り返ると、同じく走ってきたマックスがスライムウォーターベッドに飛び乗ったところだった。

 これも当然のようにニニの隣に転がる。

「あはは、ありがとうな。それじゃあよろしく!」

 笑ってそう言い、隙間に潜り込んでセレブ買いでお願いして購入した大判の毛布を被って横になる。

「おやすみ、見張りはよろしくな」

「もちろんよ、大活躍だったものね。どうぞゆっくり休んでね」

 優しいニニの言葉に、俺はもふもふのニニの腹毛に潜り込んだ。そしていつもの如く、あっという間に眠りの国へ旅立って行ったのだった。



 いやあ、ニニの腹毛の癒し効果。マジですげえよ。

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