モーニングコールと美味しい朝食
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
「うん、起きる、よ……」
やっぱりモーニングコールチームのメンバーが増えてる。
気にはなったんだけど全然目が開かない俺は、半ば無意識にいつもの返事をしてそのまま気持ちよく二度寝の海へ墜落して行った。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
「うあい、起きてま、す……」
胸元にいたふかふかのフランマを抱きしめながらそう呟いた時、いきなり来ました!
ザリザリザリザリ!
ジョリジョリジョリジョリ!
ソレイユとフォールの最強モーニングコールに俺は悲鳴を上げて飛び起きた。
胸元にいたフランマが笑っている。
「うわあ、ごめんって! 起きます起きます!」
首元と耳を押さえて叫びながら転がる。
「ご主人起きた〜!」
「やっぱり私達が最強よね〜!」
朝から大喜びで超ご機嫌な猛獣コンビを、俺は起き上がって二匹まとめて捕まえてやった。それから、順番にモーニングコールチームをおにぎりにしたり撫で回したりしてやる。
そして撫で回しながら聞いたところ、増えてたモーニングコールの新メンバーはお空部隊代表のモモイロインコのローザで、昨日はセキセイインコのメイプルだったらしい。
つまり、お空部隊から誰かがモーニングコールチームに入った時はソレイユとフォールが最終モーニングコール役。それでソレイユとフォールのどちらかがモーニングコールチームに入った時は、最終モーニングコール担当をお空部隊が全員でする事が決まってるらしい。
「何その恐ろしい協定は」
「ご主人がすぐに起きれば、何の問題も無いわよ」
思わず真顔で突っ込むと、撫でていたソレイユに真顔で突っ込み返されて俺は声も無く撃沈した。
「おはようさん、もう起きてるか?」
テントの外で声が聞こえて、身支度を整えていた俺は慌てて返事をした。
「おう、おはようさん。今準備中だ。入ってくれて良いぞ」
胸当ての金具を締めながらそう言い、剣帯を装着すれば準備完了だ。
「顔洗ってくるよ」
ハスフェル達と交代で外に出て、サクラを肩に乗せて水場へ向かう。
湧き水があふれる水源から流れる水で顔を洗い、サクラに綺麗にしてもらう。
「さて、飯食ったらいよいよ高難易度クエストだな。大丈夫なのかねえ」
自分のテントを見ながら、思わずそう呟く。
「頑張ってね。あそこにいるジェムモンスターはどれも強いから、テイムすればかなりの戦力になるよ」
「あはは、そうなんだ。じゃあ、何とか虎をテイム出来るよう頑張るよ」
いつの間にか頭の上にいたシャムエル様にそう言われて、思わず乾いた笑いが出る俺だった。
朝は、サンドイッチをメインに、適当に買い置きの屋台飯を並べてやる。
師匠は何種類ものサンドイッチをそれぞれ大量に量を作っててくれていたらしく、在庫の量を聞いて俺は思わず本気で師匠に感謝したよ。料理するとしても、しばらくサンドイッチは作らなくてすみそうなくらいあったよ。
それぞれ好きに取って席につく。
俺は師匠が作った鶏ハム入り野菜サンドとオムレツサンドを二切れ、それから分厚いハムカツサンドを選んだ。マイカップにコーヒーをたっぷり入れて、グラスには激うまジュースをミックスして注ぐ。
それぞれ手を合わせてから食べ始めた。
「この鶏ハムサンドめっちゃ美味い。俺が作ったのと柔らかさが桁違いだよ。さすがは師匠だ」
一口食べて大感激した。まじで同じサンドイッチとは思えないくらいに美味い。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ!ジャジャン!」
今朝のダンスは久々の味見ダンスだ。
俺の皿の隣でお皿を振り回しながら飛び跳ねているシャムエル様には、オムレツサンドを丸ごと一切れとハムカツサンドの真ん中部分を切って並べてやった。それから、蕎麦ちょこにコーヒーと激うまジュースを入れてやる。
当然足りなくなって、俺はもう一回ドリンクを取りに立ち上がったよ。
ううん、これの対策ならマイカップをもう少し大きくすればいいのか?
そんな事を考えて苦笑いしながら、マイカップとグラスに追加のコーヒーと激うまジュースを注いだ。
師匠が作ったオムレツサンドが予想以上に激うまだったらしく、シャムエル様は丸ごと一人前をあっという間に平らげて大感激していた。
「これ、絶対作って! めっちゃ美味しかった!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながらそんな事を言われてちょっと焦る。
「いや待て。同じレシピでも、火加減ひとつで出来が劇的に変わるのの代表格が卵料理なんだよ。俺の料理の腕で師匠と同じレベルを期待するな!」
「ええ、ケンだってオムレツくらい作れるでしょう?」
不思議そうなシャムエル様の言葉に、俺は諦めのため息を吐いた。
「まあそうだよな、料理しない人から見れば卵料理なんて簡単そうに見える代表だろう。絶対そんな事ないんだけどさ。卵料理の火加減は、まじで難しいんだって。じゃあ今度時間のある時にオムレツサンドも作ってみるよ。確か貰ったレシピにオムレツサンドもあった記憶がある。だけど、師匠のと違うのが出来ても文句言わないでくれよな」
苦笑いしながらそう言うと、ハムカツサンドを齧っていたシャムエル様が驚いたみたいに食べるのをやめて俺を見上げた。
「ええ、それはそれで絶対美味しいって分かるから心配してません。それに作ってもらって文句言うなんて失礼な事しないよ。いつも美味しいお料理をありがとうね。私、この時間がいつもすごく楽しみなんだ」
「あはは、ありがとうな。それじゃあご期待に添えるように頑張って作るよ」
何だか急に照れ臭くなって、誤魔化すようにそう言って俺もオムレツサンドに齧り付いた。
「何これ、めっちゃ美味いじゃん」
「だから美味しいって言ってるじゃない!」
思わずそう叫ぶとシャムエル様に呆れたように言われた俺は、誤魔化すように笑ってシャムエル様の尻尾を突っついておいた。
それから、残りをまずは平らげることに専念した。