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朝のひと時とテイムに関する注意事項

「ええ? 今朝の大騒ぎって皆知ってたのか?」

 朝食の後は彼らも午前中はここでのんびりすると聞き、サンドイッチを食べながら話をしていた俺は思わずそう叫んだ。

「そりゃあれだけ大騒ぎすれば、熟睡してても目を覚ますってな」

「全くだよ。何事かと飛び起きたってな」

 呆れたようなハスフェルとギイの言葉に、オンハルトの爺さんとランドルさんとバッカスさんの三人が揃ってうんうんと頷き合っている。

 クーヘンとマーサさんも、サンドイッチを食べながら二人揃って大笑いしている。

「ええと、そんなに大騒ぎだった?」

 恐る恐る聞いてみると、どうやら最後にシャムエル様が滑り込んできた時の俺の悲鳴で全員飛び起きたらしい。

「あれか。俺が、マジで駄目だって叫んだあれか」

 あの時の衝撃を思い出して、俺はちょっと遠い目になる。

「悲鳴を聞いて、テントに声をかけたんだが反応が無いので心配になってな。中に入ってみれば、お前さんが従魔達に囲まれて気絶しておってな。そりゃあ驚いたぞ」

「全員揃って大騒ぎだったものなあ」

 オンハルトの爺さんの言葉に、ギイが笑いながら同意している。

「しかし、従魔達は騒ぐだけで俺達では何を言ってるのか分からなくてな。それでクーヘンが自分のスライムのドロップを通じてお前の従魔達から話を聞いてくれて、ようやく原因が判明したんだよ」

 ハスフェルの言葉に、また皆が笑う。

「それで、単に痺れただけなら放置して問題なかろうって事で、もう一回寝直したんだからな」

「全く、従魔達と仲が良いのは大いに結構だが、人騒がせにも程があるぞ」

「朝からお騒がせして、申し訳ありませんでした〜!」

 オンハルトの爺さんに笑いながらそう言われて、俺は大きな声で力一杯謝っておいたよ。




「さてと、それじゃあまずは作るとしたらコーヒーからかな」

 食事も終わりすっかり寛ぎモードになりそうだったんだが、何の為に午前中は出かけるのを止めたのか思い出した俺は、そう呟きながら机の上にコンロとヤカンを取り出して並べた。

「それなら使う水を汲んできてやるよ」

 ハスフェルとギイがそう言って、ヤカンをまとめて受け取り水場へ汲みに行ってくれた。

 一瞬、いくらでも水が出る水筒を出しかけたんだが、ランドルさん達がいる目の前でこれを使うのは良くないと彼らが判断したのだと思い至った。

 別に大丈夫かとも思ったんだけど、机の上に座っていたシャムエル様も苦笑いして首を振るのを見て納得して任せる事にした。



「それにしても、今朝、ケンが気絶していた時のテントの中を見て本当に驚きましたよ」

 クーヘンが、俺を見ながら不思議な事を言う。

「へ、何に驚いたんだ?」

 コーヒー豆とネルドリップの道具を取り出していた俺は、その言葉にクーヘンを振り返った。

「いつの間に、あんなに沢山のスライム達をテイムしたんですか。しかもスライムでベッドを作るなんて」

 今の机の上には、アクアが出ているだけで他の子達は全員鞄の中だ。

 確かに、野外で寝る時はいつもスライムウォーターベッドだもんな。いきなりあれを見たらそりゃあ驚くか。

「ああ、シルヴァ達が一緒だった時に集めたんだよ。彼女達が色んな色のスライムが欲しいとか言い出してさ。それであちこち皆で大騒ぎして探し回って集めたんだよ。そうしたらあんまり可愛いから俺も欲しくなってさ。調子に乗って集めてたらこんな事になったんだ」

 鞄から次々に飛び出して来て、勢揃いするスライム達を見て皆笑顔になる。

「成る程。スライムばかり色違いで集めるというのもなかなか楽しそうですね」

 目を輝かせるランドルさんの横で、クーヘンも同じく目を輝かせている。

「おう、可愛いから頑張って集めてくれ。言っておくけどスライムの色の種類は各地で違いがあって、集めると相当な数になるみたいだぞ」

「それは楽しそうだ。是非やってみます!」

 嬉しそうな二人のその言葉に、頷きかけた俺は慌てて手をあげた。

「ただし、一つ重要な注意事項があります!」

 何事かと驚くクーヘンとランドルさんに向かって、俺は大きなため息を一つ吐いた。

「テイマーや魔獣使いが、一日にテイムできる数は限られてるんだよ。大体一日に数匹程度だと思ってもらえばいい。従魔の強いか弱いか以前に、テイム出来る数そのものが限られているんだ。それ以上の数を無理して立て続けにテイムすると、心臓が止まるぞ。はっきり言って命に関わるぞ」

 真顔の俺の言葉に、二人の目が見開かれる。

「事実だよ。あの時何も考えずに次から次へとテイムしていた俺は、本当に死にかけたんだからな」

 その言葉に、ハスフェル達が三人揃って苦笑いして大きく頷くのを見て、クーヘンとランドルさんは揃って真顔になる。

「では1つ質問です。一日に数匹程度なら続けてテイムしても大丈夫なんですか?」

 真顔のランドルさんの質問にシャムエル様が頷いている。

「ああ、一日に数匹程度なら大丈夫だよ。だけど俺でも十匹くらいが上限だと思っている」

 俺ならもう少し大丈夫みたいだけど、一応危機感を与えるためにも少なめに言っておく。彼らにもしもの事があったら大変だものな。

「分かりました。テイムする際は充分気をつけます」

 二人が口を揃えて言うので、俺も笑って大きく頷いた。

「一晩寝ると回復するから、あとは自分の体調を見ながらやるといいよ。頑張って集めると良い事があるかもしれないけど、それが何かは言わずにおくよ。やる前から答えを知るのは面白くないだろう?」



「スライムを集めて?」

「良い事があるかもしれない?」



 クーヘンとランドルさんが揃って不思議そうにしているけど、俺達は笑ってそれ以上何も言わなかった。

 あれはやっぱり、自分で見つけてこその喜びだもんな。




 沸いてきたヤカンを見てコーヒーの準備をして淹れ始める。

 それを見たハスフェルとギイが、コーヒーなら出来るからと淹れるのを手伝ってくれたので途中からはコーヒーは彼らに任せて、俺は午前中いっぱいかかってホットコーヒーとアイスコーヒー、麦茶と緑茶、それから紅茶のホットとアイスもたっぷりと作る事が出来た。まあ麦茶は主に俺が飲む分だけどね。

 それから作り置きで昼食を食べた俺達は、ここを撤収して全員揃って出発した。



 クーヘンとマーサさんは街へ帰るので途中で別れて、そのまま俺達は目的地であるカルーシュ山脈の奥地へ一気に加速して向かった。

 全員が足の速い従魔に乗っているので、日が暮れる少し前に目的地の森の手前にある境界線の草原に到着した。草原の先には、目的地の深い森が広がっている。

「さあ、ここでは何が出るんだろうな?」

 小さく呟いた俺は、まずはテントを張るためにマックスの背から飛び降りたのだった。

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