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可愛いくて愛しい俺の従魔達

 ぺしぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみふみ……。

 カリカリカリカリ……。

 つんつんつんつん……。

 チクチクチクチク……。

 ショリショリショリショリ……。

 スリスリスリスリ……。

 こしょこしょこしょこしょ……。



「あれ……モーニングコールチームがまた増えてるぞ……?」

 プカリと浮き上がった泡が弾けるみたいに不意に目を覚ました俺は、すっかり明るくなったテントの屋根を見上げて呟いた。

「あ、起きた。いやあごめんね。まさかあれだけで気絶するとは思わなかったよ。お詫びに体力回復させておいたけど、体調はどう?」

 上向きに寝ていた俺の額に座ったシャムエル様が、心配そうにそう言って覗き込んで来た。

 それを聞いて、夜明け前の騒動を思い出した。

 そっか、俺、あのまま気絶したのか。そりゃあすごい痺れだったもんなあ。



 状況を理解した俺は、俺を覗き込んでいるシャムエル様を見上げてにんまりと笑った。

「よくもやったなあ〜!」

 動くようになった手を伸ばして、額にいたシャムエル様を捕まえて腹筋だけで起き上がる。

「きゃあ〜助けて〜!」

 笑って棒読みの悲鳴を上げるシャムエル様を両手で捕まえて、しっかりとおにぎりにしてやる。

 おお、この素晴らしくモフモフな手触り、最高じゃん。

 大喜びで心ゆくまでモフモフしまくっていると、いきなり空気に吹っ飛ばされて仰向けにひっくり返った。



「いい加減にしなさい!」



 人の腹の上で仁王立になったシャムエル様にそう言われてしまい、苦笑いしてまた腹筋だけで起き上がる。

「ちょっとくらい良いじゃないか。別に減るもんでなし」

「だ、め、で、す!」

 顔の前で大きくばつ印を作りながらそんなことを言われて、俺は笑って横からモフモフの尻尾を突っついてやった。

 それから、普段の猫サイズに戻ってスライムベッドの横で並んで俺を見ているソレイユとフォール、それからタロンの三匹を振り返った。

「それで? お前らはどうして朝からあんな状態になっていたんだ?」

 確か寝た時はいつもの大きさだったはずだから、寝ている間に何かあって巨大化したんだろう。




「だって……」

「だってねえ……」

 ソレイユとフォールが、泣きそうな小さな声で互いの顔を見合わせてそれだけを言う。ってか、もうソレイユは本気で泣きそうになってて、明らかに様子が変だ。

「おいおい、本当に一体どうしたんだよ」

 慌ててスライムベッドから降りて、ソレイユとフォールを二匹揃って抱き上げてやる。

 地面にあぐらをかいて座り、両膝の上に二匹を乗せてやる。タロンが真ん中に乗って来たのでそのまま乗せてやり、しばらく落ち着くまでとにかく交互に三匹を撫でてやった。



「それで、何があったんだ?」

 ようやく落ち着いて喉を鳴らし始めたので、一度深呼吸をしてからできるだけ優しい声で聞いてやる。

 すると、ソレイユは俺を見上げてとんでもない事を言ったのだ。



「だって……ご主人は虎が欲しいんでしょう? 猫科のジェムモンスター最強の虎なんかが来たら、フォールはともかく、それほど強く無い私はもう用無しよね?」

「はあ? ちょっと待て。どこをどう取ったらそんな話になるんだ?」

 驚いてそう叫ぶと、両手で猫サイズになってるソレイユ抱き上げる。



 小さくやや尖った顔に不釣り合いなほどの大きな耳、そしてキリッとした目。細かな斑点模様の細くてしなやかな身体と長い尻尾。

 どこを取っても可愛いしか出てこない。



「そんな訳ないだろうが。お前らは俺の側にいてくれるだけで良いんだよ。お前らの一番の仕事は、その可愛さで俺を癒す事なんだぞ」

 細い体を抱きしめ、揉みくちゃにしてやる。

「こんなに可愛いソレイユが、用無しに、なんか、なる訳が、ないだろうが〜!」

 小さな顔を両手で挟み込み、言い聞かせるようにはっきりと区切って伝える。

「本当に? 虎が来ても私も必要?」

「当たり前だ〜! 俺の愛を思い知れ〜!」

 そう叫んでもう一度全身をくまなく揉みくちゃにしてから、地面に押し倒して仰向けにして柔らかな腹に顔を擦り付けた。

「おお、短い腹毛もなかなかじゃん」

 思わずそう呟き、もう一度抱きしめたままソレイユの腹に顔を埋めた。そのまま顔をグリグリと左右に動かしてニニやタロンとは違う短いけれど柔らかな腹毛を満喫した。

「ご主人、もうやりすぎです!」

 そう叫んだソレイユが、前脚で俺の額を力一杯押し返す。ついでに顎に後脚の蹴り付きだ。

 もちろん爪は全く出ていないから、ソレイユの肉球スタンプダブル攻撃だよ。

「ええ、そんなこと言わずに。これも大事なスキンシップだぞ」

 真顔で言い返したが、鼻で笑ったソレイユはスルリと身体をくねらせて、俺の腕からすり抜けて逃げていってしまった。

 だけどもう、どうやらご機嫌は直ったみたいだ。

 それを見て安堵のため息をついた俺は、笑って肩を回してから大きく伸びをして立ち上がった。

「おおい、もう入っても良いか?」

 笑いながら言われたハスフェルの言葉に、俺は思わず吹き出して、大きな声で返事をした。

「おう、入ってくれて良いぞ」

 テントの垂れ幕が挙げられる。外にはハスフェル達を始め、マーサさんとクーヘン、そして当然ランドルさんとバッカスさんまでが勢揃いして、笑いを堪えて俺を見ていたのだった。

「ええと……」

 照れ臭くなって誤魔化すように左右を見ると、巨大化したソレイユが俺の腕の隙間に後ろから顔を突っ込んできた。そのまま頭を俺の顔に擦り付けて来る。ものすごく大きな喉の音付きだ。

「おはよう。顔洗ってくるから座ってて、ああ、待って待って、今机と椅子を出すよ」

 慌てて椅子に置いてあった鞄に手を突っ込み机を取り出す。

 いつの間にかスライムベッドは分解されていて、スライム達はピンポン球サイズになって鞄の中に避難していた。サクラがスルリと鞄から出てきて俺の頭の上に跳ね飛んで収まる。

 机を並べてくれているハスフェル達にお礼を言って、大急ぎで水場へ行って顔を洗った。

 ランドルさん達が向こうを向いているのを確認してから、サクラに綺麗にしてもらう。



「あ、そっか、クーヘンにあの後テイムした子達を紹介して無いな。じゃあ後で紹介しとかないと」

 テントに戻りながらふと思いつき、いつの間にか右肩に座っているシャムエル様を振り返った。

「アクアゴールドとクロッシェはさすがに内緒にするとして、あとは全員、クーヘン達に紹介して大丈夫だよな?」

「もちろん。飛び地でテイムしたって言って良いよ」

「じゃあ、午前中は飲み物を中心に仕込む予定だから、その間に出来るかな? クーヘン達にレインボースライム達も紹介しないとな」

 笑ってサクラを突っついた俺はテントに戻って、待ってくれていたハスフェル達に朝食用のサンドイッチと激うまジュースを取り出したのだった。

「あ、コーヒー淹れてくれたんだ」

 机の上には、簡易コンロにヤカンがかけられていて湯気を立てている。

 その隣ではハスフェルとギイが、二人掛かりで大きめのパーコレーターでコーヒーを淹れてくれている真っ最中だった。

「おう、コーヒーはもう全然無いって言ってたろう? 今飲む分くらいなら、これで大丈夫だろうからさ。ほら、お前のカップも出せよ」

 一応いつも使ってるマイマグカップは自分で収納しているので、ちょっと考えてポケットに手を突っ込んで取り出しておいた。

「じゃあ、午前中はここで飲み物作りだな」

 そう呟いた俺は、カップにコーヒーを丁寧に注いでくれているハスフェルを見て、タマゴサンドと肉をがっつり挟んだバーガー、それから野菜サンドと串焼肉も取って席に座りかけて、あわてて激うまジュースをグラスにたっぷり注いでから、席についたのだった。

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