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セレブ買い再び

「聞いたか? ちょっとした問題点」

 アルバンさんの言葉に、俺はもうこれ以上無いくらいの大きなため息を吐いた。

「聞きました、あの馬鹿の弟分でしょう?」

 苦笑いして頷いたアルバンさんは、机の上に持ってきた食材のサンプルを並べるスタッフさんを見て、こちらも大きなため息を吐いた。

「だけどまあ、所詮は小物が騒いでるだけだよ。あの馬鹿の置き土産の後始末は、我々の責任に置いて善処するから、申し訳ないんだが、ケン達はしばらく知らん振りをしててくれ」

 そう言って笑ったアルバンさんだけど、これまた目が笑ってません。マジで怖いです〜!

 もう、ドン引き状態の俺達は、壊れたおもちゃみたいにうんうんと頷くしかなかった。

 覚えておこう、世の中には絶対に怒らせては駄目な人っているんだよな。



 そのあとは気を取り直して、次々に紹介される新鮮な食材を張り切って購入させてもらったよ。

 何しろ、ほぼ無いものはないってくらいにありとあらゆる食材があるもんだから、こっそり師匠から貰ったレシピ本を見ながら注文していたらスタッフさんに気付かれてしまい、結局、一緒にレシピ本を見ながらほぼここに書かれている料理に必要な食材と調味料が手に入ってしまいました!

 しかも、お菓子のレシピを見たスタッフさんがめっちゃ張り切ってくれて、俺が持っている金型や道具を確認して、追加で必要そうな材料と道具をありったけ取りそろえてくれた。

 しかも、受け取った材料の上ではシャムエル様が目をキラキラさせながら俺の事を見つめるものだから、もうめっちゃプレッシャー。新たなおやつへの期待度がハンパないです。

「分かった。郊外に出たら、俺でも作れそうな簡単レシピで、おやつも作ってやるよ」

 苦笑いしながら、小さな声でそう言ってもふもふの尻尾を突っつかせてもらった。




「簡易オーブンは、これをお持ちなんですね、それならもう少し大きめのこちらをお勧めしますね」

 満面の笑みのスタッフさんの一押しアイテムは、最近バイゼンから届いたのだという最新式の簡易オーブンだ。庫内の大きさが俺が持っているものよりも更に大きく広くなり、温度の管理も簡単になったらしい。

 お菓子やオーブン料理を作るなら絶対こちらがお勧めです! と、力いっぱい断言されたのでもちろんそれもお買い上げ。しかも二台あると言うので、予備にもう一台も一緒に買っておく事にした。

 だって説明を聞くと、これで鳥の丸焼きとかも出来るって言われたからさ。

 俺達四人とクーヘンなら、丸焼きとはいえ鶏一羽では絶対に足りないだろうとの予想からだ。

 当然、内臓などは処理済みの鶏丸ごと一羽も大量にお買い上げ。

 ハイランドチキンやグラスランドチキンは、丸ごと焼くのはさすがに物理的に無理があるけど、これもオーブンで焼けばまた違った料理が出来そうだ。



 そんな感じで、どんどん届けられる大量の食材や調理道具を、俺はせっせと鞄に詰め込んでいった。

 今回、何が嬉しかったって、新鮮な魚が大量に手に入った事。白身の魚とかフライにしたら最高じゃん。しかも、魚を捌くのはあまり得意じゃないと白状したら、わざわざ台所に料理人さんが来てくれて、俺が注文した魚をめっちゃ手早く捌いたり鱗を取ったりしてくれた。ありがとう、ここまでやってもらえたら、俺でも料理出来るよ。セレブ買い、凄え。

 それ以外にも、ちりめんじゃこみたいな乾燥させた小魚も大量に手に入った。これでまた料理の幅が増えるよ。

 ああそうだ。定食屋の賄いでよく作ってた、ちりめんじゃがいもとかもこれで作れるじゃん。

 思い出したら食べたくなってきた。よし、後で作ろう。



 結局、まとめて大量注文した食材も調理道具も全部今日中に届きました。セレブ買いマジ凄え。






「それでは失礼します。また何かありましたらいつでもお呼びください」

 アルバンさんが連れてきてくれたスタッフさん達が、満面の笑みでそう言って退場して行った。

 いやあ、もう大満足です。おかげでまたしても食料在庫の品揃えは完璧に戻ったよ。

 しかも、そろそろ終わるって頃に、ホテルハンプールからも大量のデリバリーが届けられた。これはクーヘンが頼んでいてくれたものらしい。

 前回、俺が頼んでいた料理と量を参考にして注文してくれたらしく、しばしの押し問答の末、結局俺が全部貰う事になった。

 おかげで、無くなってたあの激うまビーフシチューもまた大量に確保されたよ。



「もう夕食は作らなくても良さそうだな。じゃあ好きに食ってくれ」

 机の上に並んだ大量の料理の数々を見て、苦笑いした俺達はそれぞれ好きな料理を確保してから残りを全部まとめて収納した。

「じゃあ、クーヘンはまた一旦外に出てから変化の術で姿を変えてから戻れば良いな」

「ええ、街を出たらマーサさんが追いかけてきてくれる事になっていますから、彼女と合流してまた私は街へ戻ります」

「従魔達は? よかったら一緒に連れて行くけど?」

「それも考えたんですけど、従魔達は店の護衛役を担ってくれている部分もあるんですよね。例の馬鹿の弟分の件がありますから、出来れば従魔達は店にいてもらいたいんですよね」

「そっか、クーヘンは店があるからあの馬鹿達にすればいい標的になりかねないわけだ。そっちは大丈夫なのか?」

 心配になってそう尋ねたが、笑ったクーヘンは自慢気に胸を張った。

「ええ、大丈夫ですよ。逆にこっちに手を出してくれれば奴らを捕まえるいい口実になりますよ。警備にはしっかりとお金をかけて、考えうる限り最高の警備体制を敷いています。ギルドや軍部ともしっかりと連携していますので、どうぞご心配なく」

 そりゃあ、あの店の在庫の量を考えれば、警備にはそれなりのお金を掛けるのは当然だろう。どうやら店の防犯対策はしっかり取れているようで、それを聞いた俺は安心した。



 ホテルハンプールの豪華な料理で大満足の夕食を終えた俺達は、例の激うまリンゴとぶどうをデザートに食べて、そのあとはのんびりとお酒を楽しんだ。

 明日は、噴水広場の屋台で朝食を食べた後は、クーヘンやランドルさん達も一緒に郊外へ出る事に決まった。



「それじゃあお疲れさん」

「おやすみなさい」

「お疲れさん」

「お疲れ〜」

 それぞれに挨拶して部屋に戻る四人を見送った俺は、大きなため息を吐いてすぐ側にいたニニの大きな首にしがみついた。

「もう、マジで騒動はごめんだよ。俺は平穏無事がいいんだって」

「まあ今回はご主人にとっては、確かに逆恨み以外の何者でもないわね。ギルドマスター達が頑張ってくれることを期待しましょう」

 面白そうにそう言われて、もう一度これ以上ないくらいの大きなため息を吐いたのだった。

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