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大騒ぎ再び

「おかえりなさい!」

「おかえりなさい。もう秋の早駆け祭りの参加申し込みは始まっていますよ。早く申し込まないと良い位置は取れませんよ」

 城門にいた兵士達に満面の笑みでそう言われて、ギルドカードを返してもらった俺はもう笑うしかなかった。

 とにかく、街中が諸手を挙げて大歓迎状態だ。

 あちこちから聞こえるおかえりなさいの声と、二連覇を期待してるぞ! という声に、苦笑いしてひたすら手を振り続けた。



「ここからならギルドの方が近い。一旦ギルドへ逃げ込もう」

 大きなため息と共にそういうハスフェルの言葉に、俺達は一も二もなく頷く。

 とにかく周りはもう人で埋め尽くされていて、はっきり言って、これってもう街中の人が出て来てるんじゃないのか? と、言いたくなるくらいに物凄い人出だ。

 人波をかき分けるようにして進み、ようやく辿り着いたギルドの建物に逃げ込む。

 拍手と大歓声に追いかけられるようにして駆け込んできた俺達を見て、ギルドにいた冒険者達が笑いながら拍手で出迎えてくれた。

「おかえり」

「待ってたぞ」と。



「やあ、ようやくのお越しだね。待っていたよ」

 これまた満面の笑みのエルさんの言葉に手を上げた俺達は、苦笑いしてまずカウンターに座って早駆け祭りの参加申し込みをする事にした。

「昨日、参加申し込みをしたランドルから聞いたよ。オンハルトと彼が組むんだって?」

「ええ、そうなんですよ、飛び地で知り合いましてね」

「彼もすごい従魔達をテイムしていたからね。いやあ、今から早駆け祭り当日が楽しみで仕方がないよ」

「ああ、そういえば彼とチーム名の相談をしていなかったな。エルよ。ランドルが今何処にいるか知っとるか?」

 恐らく宿泊所に彼も泊まっているんだろう。そう判断したオンハルトの爺さんの言葉に、苦笑いしたエルさんが予想通りに隣の宿泊所の方を指差した。

「昨日の夕方頃到着したんだけどね。彼の乗っている従魔を見て、そりゃあもう街中大騒ぎだったんだよ」

 笑ったエルさんの言葉に俺達は納得した。前回はあの馬鹿二人と俺達の全面対決だったけど、今回は俺の二連覇か、それ以外の誰かが一位を取るかで盛り上がると思っていたところに、予想外の新たなる挑戦者現る! になったわけだ。そりゃあ街中大騒ぎになるだろう。

 前回の大騒ぎを思い出して遠い目になる俺を見て、エルさんは申し訳なさそうに頭を下げた。

「それでランドルにも言ったんだけど、もう既に街中が大騒ぎ状態でね。出来ればレースが始まるまで宿泊所からは出ないほうがいいと思うよ。クーヘンも、君達が来てくれたら一緒に宿泊所に泊まってもらうように言ってあるからね」

 予想通りの言葉に、俺は大きなため息を吐いてハスフェル達を振り返った。

「どうする、だけど今からレース開始までずっと宿泊所に缶詰なんて俺はごめんだぞ」

 確かまだ半月以上あったはずだ。

「それは俺も嫌だ」

 ハスフェルとギイがほぼ同時にそう言い、オンハルトの爺さんも隣でウンウンと頷いている。

「やっぱりそうなるよね。実はランドルも同じ事を言ってたよ」

 苦笑いするエルさんを見て、俺達は顔を見合わせる。

「どうする? それなら前回みたいに商業ギルドにお願いして、食材をまとめ買いしてまた郊外へ出るか? それなら、クーヘンとランドルさんも一緒でも良いし、クーヘンは店があるから、また姿を変えて先に戻ってもらっても良いよな」

「それが最善策だろうな。じゃあエル、商業ギルドのアルバンに頼んでもらって、前回同様食材の調達をお願いしたい。それが終われば、俺達はクーヘンとランドル達と一緒にまた郊外へ出るよ。祭りの開始前に戻ってくれば問題あるまい?」

「了解。そっちはすぐに手配するよ。それじゃあ申し訳ないけど、前回同様郊外へ避難って事でお願いするよ」

 顔を見合わせた俺達は、揃って大きなため息を吐いたのだった。



「ケン、おかえりなさい! 待っていましたよ!」

 その時、聞きなれた声とともにクーヘンがギルドに駆け込んで来た。

「クーヘン。あはは、ただいま!」

 振り返って笑った俺は駆け寄って来たクーヘンと手を叩きあい、拳をぶつけ合った。その後、クーヘンはハスフェル達とも手を叩き合っていた。

「もう参加申し込みはしたんですか?」

「今やってるところ。クーヘンは?」

「貴方が来るのを待っていたんですよ。じゃあエル。私にも参加申込書をお願いします」

 嬉しそうにそう言って俺の隣に座る。

「じゃあ、チームの組み合わせは前回と同じで良いな?」

 俺はチームのところにクーヘンの名前と、チーム名には愉快な仲間達、と記入した。

「ああ、来たんですね。待ってましたよ」

 その時、後ろからランドルさんの声が聞こえて俺達が一斉に振り返る。

 笑って手を上げたランドルさんは、オンハルトの爺さんの隣に座った。

「チーム名はどうする?」

「それなんですよね。どうしましょうか?」

 そう言って顔を見合わせ、むさ苦しいおっさん二人が並んで困っている。

「従魔がオーストリッチとエルクだもんなあ。さて何が良いかな?」

 ハスフェルとギイも面白がるようにそう言ったきり、腕を組んで考えている。

「おっさん二人だけど、従魔はダチョウとエルク……あ、チーム脚線美! とかどうだ?」

 手を打った俺の言葉に二人が同時に吹き出す。

「素晴らしい。ケンは名付けが得意なんだな。ではそれを頂くとしよう」

 ランドルさんも笑ってエルさんから渡された俺達よりも少し小さな申込書に、チーム脚線美! と書いた。あ、びっくりマークまで付けられちゃったぞ。

「俺達じゃなくて、従魔達の脚線美だな。これは良い」

 笑ったランドルさんの横で、オンハルトの爺さんも大笑いしている。

「よし、これで書くところは以上だな。じゃあお願いします」

 参加料の金貨二枚をそれぞれ払い、無事に参加申し込みは終了した。



「じゃあ、今夜はこのまま宿泊所に泊まってくれて良いよ。君達の安全はギルドが責任を持って保証しよう。それでアルバンと連絡がついたよ。今からスタッフ達と一緒に宿泊所に来てくれるそうだから、前回同様いるものを彼に言っておくれ。あるものは今すぐに、無くても明日までには必ず用意すると請け負ってくれたからね」

「了解です。まあそんな無茶は言いませんよ。無ければ有るもので対応してもらいますって」

 笑ってそう言い、そのままエルさん直々に宿泊所に案内されて、クーヘンも一緒に向かった。



 あれ、手続きと宿泊費は?

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