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西アポンでの朝のひと時

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

 チクチクチク……。

 ショリショリショリ……。

「うん、起きるよ……」

 いつものごとく無意識の返事をしながら、やっぱり二度寝の海にダイブしていってしまう俺だった。



「やっぱり寝たね。相変わらず寝汚いなあ」

「そうですね」

「どうしますか?」

「やっぱり起こしてあげないとね」

 耳元で聞こえる声は、シャムエル様とローザとブラン、メイプルの三羽だ。

 これはまずい。最終モーニングコールチームがこいつらって事は、嘴で噛まれる激痛バージョンじゃん!

 内心では大慌てですっかり目が覚めているんだが、残念ながら俺の身体は相変わらず惰眠を貪っている。



 いろいろまずい事になるって、起きろ俺!



 しばしの沈黙の後、額の生え際あたりとこめかみのあたり、それから耳たぶをちょっぴりだけ摘まれたのだ。

「痛い痛い痛い! 待って、起きる起きる!」

 叫んで飛び起き、そのままニニの腹から転がり落ちる。マックスはもう起きていなくて、そのまま転がって壁に当たって止まった。

 ベリーの吹き出す音が聞こえてくるし、シャムエル様は笑って拍手なんかしてるし。

「良かった、壁側に転がって。反対だったらそのまま床に落っこちてたところだな」

 苦笑いしながら起き上がると、また二人に笑われたよ。



 大きく深呼吸を一つしてから立ち上がって、まずは水場へ顔を洗いに行く。

 羽音がして、お空部隊が水槽の下の段から流れている部分に集まる。

「あ、そっか、やっぱり鳥だから水が好きなんだ。そりゃあ水浴びしたいよな」

 上の段から流れてくる水で顔を洗った俺は、そのまま下の段の水槽に手を入れて両手ですくって鳥達にかけてやった。

 それぞれ嬉しそうに翼を広げて水を浴びる。

「ほら、もっとかけてやるぞ」

 何度も手ですくっては水をかけてやり、それでも足りなくて最後には水槽に手を突っ込んで勢いよく跳ね上げ、鳥達の上に一気に水を撒き散らした。

 水飛沫が上がり、大喜びの鳥達が羽ばたく音や鳴く声がして俺も声をあげて笑った。

 でもその結果、俺は全身びしょ濡れになったし、水回りの床や台所の壁もびしょ濡れになってました。

 それを見て密かに思った。うん、ここには電化製品がなくて良かったね。



「ご主人綺麗にするね〜!」

 苦笑いして周りを見ていると、サクラが跳ね飛んできて一気に俺を包んでくれた。次の瞬間にはもうびしょ濡れだった服も綺麗さっぱり乾いてサラサラ、汗ばんでいた首筋もサラサラ。ううん、相変わらず完璧だね。

「ほら、久し振りだもんな。しっかり水浴びして来い」

 そう言って、サクラを捕まえてモミモミしてから水槽に放り込んでやる。

「お願いしま〜す!」

 跳ね飛んできたアクアも受け止めて、同じくモミモミしてから水槽に放り込む。次々と跳ね飛んでくるレインボースライム達も、同じように受け止めてからモミモミしてやり順番に水槽に放り込んでやった。

「周りも綺麗にするね〜!」

 水槽から出て来たアクアとサクラが、水が跳ねてびしょ濡れになっていた周りもあっという間に綺麗にしてくれた。

「羽根は素材になるから回収しま〜す」

 アクアの言葉に驚いて振り返ると、水が流れ落ちる穴の蓋の周りに、大きな風切り羽根が何本か落ちているのを見て慌ててそれぞれの鳥達の翼を見てやる。

「ええ、何もしてないのに、あんな大きな羽根が抜けて大丈夫なのかよ」

 まさか、水の勢いが激しすぎたか? それとも餌不足? いやマナ不足か?

 慌てる俺だったが、お空部隊は笑って飛んで来て俺の腕や肩に留まった。

「羽根は抜けてもすぐに生えてくるから平気。大丈夫だから心配しないでね。ご主人」

 そう言って笑ったローザが翼を広げて見せてくれたけど、確かに歯抜けになった部分にはもう次の羽根が生え始めていて、みるみるうちに大きくなってすぐに周りの羽根と変わらない大きさになった。

「あ、そっか。ジェムモンスターは怪我しないっていうアレと同じか」

「そうだよ。ジェム自体が無事なら羽根ぐらい抜けてもすぐに生えてくるよ。ファルコやプティラと違って、ローザ達の抜けた羽根は素材になるからね」

 右肩の定位置に座ったシャムエル様の言葉に、納得した俺は順番に鳥達を撫でやった。

「同じ鳥なのに、ファルコやプティラの羽根は、どうして素材にならないんだ? まあプティラは正確には恐竜で、鳥じゃあないけどさ」

「同じ鳥のジェムモンスターでも、肉食の子達は素材が鉤爪なんだよね。それで、草食の子達の素材を色とりどりの羽根にしたんだよ」

「ああ、なるほど。確かにファルコの羽根は単色だし地味な色だものな」

 プティラはやや白っぽい先端部分がメタリックな色合いだから、これなら素材になりそうだけど、確かに今までも抜けたのを見てもスライム達は知らん顔をしてたな。

「じゃあ、ローザ達の羽はやっぱり装飾品の素材になるのか?」

「そうだね。羽根は主に武器の素材として使われるね。後はそのままペンとしても使われるし、大きな羽根はそのまま装飾品として使われるよ」

「これを武器に?」

 アクアが渡してくれたブランの真っ白な羽根を見る。

「あ、あれか、矢羽根!」

 頷くシャムエル様を見て納得した。

「確か、シルヴァが持っていた弓矢にも綺麗な白い矢羽根がついていたな。成る程ね」

 羽根をアクアに返したところで、ノックの音がした。

「おおい、もう起きてるか?」

「ああ、ごめんよ。すぐ準備するから待ってくれ」

 のんびり喋っていたら、かなりの時間が経ってたみたいだ。

 跳ね飛んで行ったアクアが扉を開けてくれたので一旦中に入って待ってもらい、大急ぎで装備を整えた。



「お待たせ!」

 剣帯に剣を装着して振り返ると、立ち上がった三人と一緒にまずは屋台が出ている広場へ向かった。

 当然全員従魔達もついて来ているから、またしても大注目だ。

 気にせず広場につくと、俺は前回も買った大きな塊肉を焼いて削ぎ切りにしたのをパンで挟んでくれる屋台へ向かった。一つお願いして、それとは別に、食べている間に作れるだけ作ってもらう。

 これ、美味いしボリュームがあるからガッツリ食べたい時に有難いんだよな。

 別の屋台で本日のコーヒーをマイカップに入れてもらい、広場の隅で時折シャムエル様にも齧らせてやりながら立ったまま食べた。

 屋台のおじさんは渡した木箱に入るだけ作ってくれて、お礼を言ってお金を払った。

 タマゴサンドは見つけ次第ありったけ購入し、他にもすぐに食べられそうな物をまとめ買いさせてもらった。

 あまり種類は無いけど量は確保出来たので、これだけあればしばらくは大丈夫だろう。

 そのまま朝市へ向かい、俺はやや控えめに野菜と果物を中心にいろいろと買い込んだ。

「お待たせ。それじゃあ一度マギラス師匠の店に行こうか」

 鞄を背負い直してそう言うと、待っていてくれたハスフェル達と一緒に店へ向かった。



 さて、師匠のレシピ本には、どんな料理が載ってるんだろうな?

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