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ランドルさんと従魔達

「ええ、ランドルさん。それ、もしかしてテイムしたのか!」

 驚く俺の声に、草の茂みから出て来たダチョウに乗ったランドルさんは嬉しそうに笑って頷いた。

「ええ、そうなんです。まさか、こんな強いジェムモンスターをテイム出来るとは思っていなかったので感激です。従魔達が見事な連携で協力してくれてテイム出来ましたよ。もう一羽、バッカスにテイムしてやろうとしたんだが、そんなおっかないのには乗りたくないと言われてしまって、結局、野郎の二人乗りになりました」

「俺は元々、馬に乗るのだって得意じゃないんだよ。後ろに乗せてもらえるならそれで充分だよ!」

 ランドルさんの後ろにしがみ付くみたいにしてバッカスさんも乗っている。

 そのランドルさんの背後から聞こえたバッカスさんの笑ったその声に、俺達も笑って納得した。

 バッカスさんはドワーフだから、確かに体格は良いけど人間に比べたら手足も短くて背も低いから、馬に乗るのは大変そうだ。

 だけどまあ、従魔達は力も強いから二人くらいなら乗せても余裕なんだろう。

 大きなダチョウは、二人を乗せていても平然としている。



 ゆっくりと茂みから出て来たダチョウ、じゃなくてカメレオンオーストリッチはキョロキョロと周りを見渡して、俺達のテントから少し離れた最初に作った草地を刈り取った場所へ行った。

「カメレオンオーストリッチは、非常に危険なジェムモンスターだ。一体どうやって確保したんだ?」

 感心したようなハスフェルの質問に、ダチョウの背から先に降りてバッカスさんが降りるのを手伝っていたランドルさんは、嬉しそうに両肩にいるスライムのキャンディとモモイロインコを撫でた。

「確かに、俺はテイムなんて絶対無理だと思っていたんですけれどね。出来れば足になるジェムモンスターが欲しいと言っていたのをこいつらが聞いていたらしく、それなら自分達が確保するからテイムすれば良いと言って、こいつらが素晴らしい働きをしてくれたんですよ」

「どうやったんだ?」

 ギイとオンハルトの爺さんも興味津々だ。俺も、ハスフェル達でさえ危険と判断したジェムモンスターをどうやってテイムしたのか知りたくて、ランドルさんと従魔達を見つめていた。

「まずこいつが、カメレオンオーストリッチの顔に張り付き目隠しをしたんです。そうして動きを封じたところで、巨大化したこいつが一気に上空へ背中を足で掴んで持ち上げたんです。そのまま空中で二回、落としては途中で掴むという攻撃をしてから地面に下ろしたんですが、その時にはもうすっかり怯えていて、簡単にテイム出来たんですよ」

「成る程。オーストリッチは鳥の仲間だが、走る事に特化しているので空は飛べない。そのオーストリッチを上空へ連れていき落としたとすれば、確かに怯えて抵抗しなくなるだろうから、簡単に確保出来るだろうな」

「そりゃあすごい、従魔達の見事な連携に感謝だな」

 ギイの感心したような呟きに、オンハルトの爺さんも感心したようにそう言い笑って頷いている。

「ええ、従魔のありがたみを実感しましたね。それにどの子も本当に可愛いんです。ケンさん。本当にありがとうございました」

「いやいや、俺はテイムの仕方をちょっと教えただけだから、そう思ってくれるのならテイムした従魔達と仲良くな」

 笑った俺は、ダチョウの側へ駆け寄りランドルさんを振り返った。

「それで、この子達の名前は何てつけたんですか?」

 そっと手を伸ばして、カメレオン系のジェムモンスター特有の微妙に色の替わる羽を撫でてやった。

「この子はビスケット、こいつはマカロンです」

 ダチョウを撫でながらビスケット、そしてモモイロインコを撫でながらマカロンだと言うランドルさんは、また照れて困ったような顔をしている。

 いや、良いんだけどこのおっさん、実は可愛いもの好きなだけじゃなくて、甘いものも好きと見た。

「良い名前じゃないか。良かったな」

 手を伸ばしてもう一度ダチョウのビスケットを撫でてやる。

「ええ、すごく可愛がってくれるし彼はとても優しいの。バッカスさんも嫌だとか言いつつ嬉しそうに乗ってくれてるわ」

 おお、この子も雌だったみたいだ。

「そうなのか。良かったな。良い人にテイムしてもらえて。二人の事しっかり守ってやるんだぞ」

「ええ、もちろんよ。何があっても絶対に守るわ」

 得意気なその答えに、もう一度笑って胸元のもふもふの羽を何度も撫でさせてもらった。

「おお、これまた良い手触りだな」

 人の従魔と平然と話をする俺を、ランドルさんは驚きの目で見ていた。

「あの、ケンさんは他人の従魔とも話が出来るんですか?」

「あ、ああ。実は俺達は全員樹海出身でね。特殊能力持ちなんだ。だけど俺のそれはちょっと特殊で、一応念話の能力なんだけど使える相手がすごく限定的で、同じ樹海出身者同士でしか使えなかったんだよ。それが従魔達が相手だと、テイムされていれば自分の従魔じゃなくても話が出来るんだよ。魔獣使い的には有り難い能力なんだよ」

 俺の説明に、ランドルさんだけでなくバッカスさんまでが感心したように何度も頷いた。

「樹海出身だったんですか。それならばその高い能力も必然ですね」

 感心したようなバッカスさんの呟きに俺が笑うと、ランドルさんがいきなり俺の腕にすがるようにして頭を下げた。

「あの、世話になりついでにもう一つお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか!」

「何、改まって。俺に分かる事なら何でも教えるよ?」

 慌ててランドルさんに向き直ると、顔を上げた彼は少し恥ずかしそうにビスケットを撫でた。

「今の三匹の従魔達は、俺の事を……その、どう思ってるんでしょうかね? 簡単な言葉は何と無くわかるんですが、あまり詳しい会話は出来なくて。その、こんな奴にテイムされて迷惑だなんて考えていたとしたら申し訳無くて……」

 大柄なおっさんに、消えそうな小さな声でそう尋ねられて、俺はちょっと遠い目になった。



 自分で見て分かるだろうに、こいつらが自分にどれだけ懐いているかくらいさあ!



 でもまあ、十年も全然テイム出来ずにスライム一匹だけで来て、ようやくテイム出来るようになったんだから、確かに自信がないのも頷けるけどさあ。

 苦笑いした俺は、まずはスライムのキャンディに手を伸ばして撫でてやった。

「じゃあ順番に質問するぞ。キャンディは、自分のご主人の事をどう思ってるんだ?」

 慌てるランドルさんを無視して、スライムに話しかける。

「大好きだよ。いつも優しいし撫でてくれるの。一緒にくっついて寝るのも好きです!」

 そのままの言葉を通訳してやると、真っ赤になったランドルさんがしゃがみ込んで顔を覆った。

 おお、耳まで赤くなってやんの。

「じゃあ次はマカロンだな。まだテイムされて少しだけど、お前は自分のご主人をどう思ってる?」

「大好きよ。もっと気軽に命令してくれて良いのに。私の翼は強いから、皆を乗せていくらでも飛べるのよ。もっと頼ってくださいって伝えてくれますか?」

「ああ、もちろん伝えておくからな」

 どうやらこのモモイロインコも雌だったみたいで、しかも既にランドルさんに完全に懐いているみたいだ。

 当然この返事もそのまま伝えてやったから、もうランドルさんはこれ以上ないくらいに首も手までも真っ赤になっている。

 ついでに、さっきのビスケットから聞いた言葉もそのまま伝えてやると、バッカスさんまで一緒になって真っ赤になって撃沈した。

「嫌がりもせずに乗せてくれてありがとう。改めて、これからもよろしくお願いします」

 ビスケットの言葉を聞いたバッカスさんは気を取り直して立ち上がり、真剣にビスケットに向かって頭を下げていたよ。

 そんな彼らを、俺達は笑いながら見つめていた。



 うん、良い人達と知り合えたな。

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― 新着の感想 ―
秋のレース、ランドル&ビスケットチームがダークホースかもね(*´▽`*)
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