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今日と明日の予定が決定!

「ごちそうさま、とっても美味しかったです!」

 鼻の頭にご飯粒をくっ付けたシャムエル様に満面の笑みでそう言われて、俺は笑いながら手を伸ばしてご飯粒を取ってやった。

「気に入って頂けて何よりだよ。しかしよく食ったなあ」

 結局、おかわりに取ってきた焼きおにぎりの醤油味とおかかも半分取られてしまい、もう笑うしかない俺だった。

 シャムエル様、いくらなんでも食い過ぎっす。



「それで、午後からどうするんだ?」

 大満足の昼食を終えて後片付けをしてからそう尋ねると、ハスフェル達は満面の笑みでさっきの森を指差した。

「午後からもまだメタルブルーユリシスが出るらしいから、ありったけ集めて行こう。バイゼンへ持って行ってやれば間違い無く大喜びされるからな」

「確かに綺麗な羽だものな。あれならクーヘンのところに持って行ってやっても良いんじゃないか?」

 装飾品の素材としてもあの色は使えそうだ。単にそう思って言ったのだけれど、俺の言葉を聞いて三人が驚いたように振り返る。

「いや、あの羽は装飾品には使わないぞ」

 オンハルトの爺さんの言葉に、今度は俺が驚く。

「ええ、あんなに綺麗なのに?」

 アクアが一枚取り出して見せてくれたメタルブルーユリシスの羽は、文字通り金属のようなメタルブルーの輝きを放っている。これで装飾品とか作ったら綺麗だと思うんだけど違うのか?

「それは、バイゼンで作られている記録用の道具作りに欠かせない素材なんだ。以前バイゼンの近くにはこの蝶の出現場所が数カ所あって、相当数の羽の確保が容易だったんだが、最近は出現場所そのものがいくつか使い物にならなくなって、素材集めに苦労してると聞いている」

 ハスフェルの説明に、俺は首を傾げて手にした羽を見る。

「あれ、それって例の地脈が弱ってジェムモンスターが激減したって言うアレなんだろう? それならもう出現率は元に戻ってるんじゃないのか?」

 しかし、俺の質問にハスフェルは苦笑いして首を振る。

「この間、貴重なオレンジヒカリゴケを台無しにしてくれたモンスターの苔食いがいただろう」

 もちろん覚えていたので頷く。あれは本当にちょっとした悪夢だったもんな。

「あれと同じようなモンスターが、数年前にバイゼンの近くにも出現して大騒ぎになった事がある。あれは人の手で駆逐するのは本当に大変なんだ。しかもその時発生した場所がバイゼンの街の後ろにそびえる鉱山からだったんだが、この蝶の出現する森は、その鉱山のすぐ横にあった」

 ハスフェルの説明に俺は目を見開く。

「人の街の近くであれが出るって、それってかなり不味いんじゃないのかよ」

 ハスフェルとギイは顔を見合わせて大きなため息を吐いた。

「しかも最悪な事に、相当数の苔食いが鉱山のすぐ近くで発生したもんだから、内密に駆逐する暇が無かったんだよ。当然発見されて大騒ぎになった。その際の駆逐作戦で、その貴重な森が甚大な被害を受けたんだよ。あのオレンジヒカリゴケの繁殖地のようにな」

「それもいわゆる大発生? 何で、そんな恐ろしいモンスターを作ったんだよ」

 俺の悲鳴のような言葉に、シャムエル様がガックリと肩を落として首を振った。

「違うんだよ。あれは様々なこの多重世界(パラレルワールド)そのものにいる揺らぎの存在なんだ。私にもどうする事も出来ない。父上と違って、まだ私にはあれの存在自体を消滅させる程の安定度は出す事が出来ないんだよ。これは私の力不足なんだ。本当に申し訳ない」

「力不足な訳があるか。揺らぎがあの程度で済んでいるのは、間違いなくお前の力のなせる技だよ。揺らぎに食い尽くされた幾つもの世界を見てきた俺達が断言してやる。お前は充分頑張ってるさ」

 ハスフェルの真剣な言葉に俺が驚いて見ていると、しょんぼりしていたシャムエル様が嬉しそうに顔上げて、ハスフェル達とハイタッチをしていた。



 なるほど、つまりあれは言って見ればこの世界を作った際に出るバグみたいなもんなんだな。なので出現の予測は不可能。うん、多分この考えた方で間違ってないだろう。

「ふむふむ、つまりあの苔食いはこの世界にいるけれど、シャムエル様の手で作られた存在じゃないって事か。勝手に湧いてきて世界のどこかに不具合を発生させる。だけどその出現の予測は不可能であり、出てきたら素早くやっつけるって方法でしか対応出来ない。だけど、場合によってはその際に周りに甚大な被害を与えるって事だよな」

「凄い、今の説明だけで理解したぞ」

 揃って感心した三人とシャムエル様の視線を集めて、俺はなんだか照れ臭くなって首を振った。

「それで、その貴重な蝶の出現場所の森が壊滅的な被害を受けたわけか。それなら確かに、集められるだけ集めていくべきだな」

 納得した俺の言葉に、三人も笑顔になる。

「この世界の安定のためにも、この素材は必要なんだよ。悪いが協力してくれるか」

 ハスフェルの言葉に、俺は大きく頷いた。

「当たり前だろう。それならもう一日くらいここで頑張って集めようぜ。それでその後、例のリンゴとぶどうを収穫してからマギラス師匠のところだな」

「感謝するよ、じゃあ悪いが明日もここで集めるとしよう」

「構わないよ、これも楽しいって」

 笑った俺達は、拳をぶつけ合った。



「話がまとまったところで、ちょうど時間になったみたいだよ。じゃあ頑張って集めてください!」

 シャムエル様の言葉に振り返ると、またしても森から青い塊になった蝶の群れが吹き出してくるところだった。

「よっしゃ! それじゃあ、ありったけ集めて行こうぜ!」

 叫んだ俺は、マックスに駆け寄り一気にその背に飛び乗った。

 虫取り網を取り出して構える。

 アクアとアルファが跳ね飛んで来て俺の足をホールドしてくれた。

「よし、そう来なくちゃな!」

 嬉しそうな三人の声が揃い、全員一気に従魔に飛び乗る。

「皆、行くわよ〜!」

 ニニの嬉しそうな声に、従魔達も一斉に応えて蝶に向かって駆け出し、それを見た俺達も大きな声を上げながら虫取り網を振り回しながら蝶の群れに突っ込んで行った。



 よし、こうなったらありったけ集めまくってやるぞ!

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