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禍いを呼ぶ男再び!

「またかよ。もう勘弁してくれって……」

 情けない声で小さく呟き、せめて目を逸らすまいと俺を見下ろす巨大なダチョウを睨み返す。

『絶対に動くなよ!』

 静かなハスフェルの念話が届き、小さく唾を飲み込んだ俺はダチョウから視線を逸らさずに念話で短く応えた。

『了解』と。



 視界の隅を何か白い物がゆっくりと動くのが分かったが、顔は動かせないので何なのか分からない。

 いざとなったら剣で戦う覚悟を決めたその時だった。

 俺は吹っ飛んできた何かに、勢い良く横っ飛びに蹴っ飛ばされた。



「げふぅ!」



 いきなりの横からの衝撃に空気が抜けるみたいな悲鳴が漏れて、そのまま真横に吹っ飛ばされる。

 その直後、マックスの物凄い怒鳴るような吠え声と猫族軍団の轟く様な鳴き声と唸り声が聞こえて、その直後に何かの破壊音のようなこれまた物凄い音がした。

 だけど吹っ飛ばされた俺には何がどうなったかを確認する余裕なんて無い。



「ご主人〜!」

 跳ね飛んで一瞬で合体したスライムウォーターベッドにぶち当たった俺は、そのまま一回大きく上に跳ねて、もう一度スライムウォーターベッドに落っこちて見事に確保された。

「ご主人確保〜!」

 得意げなスライム達の声を半ば呆然と聞いていると、そのまま体がぐるっと一回転して起こされた。

「うおお、何が何だかよくわからないけど、助かった事だけは分かるよ。ありがとうな」

 慌てて手をついて起き上がった俺が見たのは、あの巨大ダチョウがマックスとシリウスによって押さえつけられ、Uターンして大急ぎで戻って来た猫族軍団によって倒された瞬間で、直後に転がる大きなジェムと素材の大量の羽根の山だった。

「あはは。助けてくれてありがとうな。でもって俺……またしても命拾いしたみたいだな」

 恐怖のあまり笑いながらそう言った俺をハスフェル達は呆れた様に見ていたが、しばらくするとそろって吹き出し、俺達は全員揃ってその場で大爆笑になったのだった。



「いやあ、ここでもやはり禍いを呼ぶ男は健在だったみたいだな」

「全くだな。しかも最後に出たはぐれが、今まで出た中でも最大だったな」

「本当に次から次へとやらかしてくれるなあ。いや、見ていて飽きん男だよ」

 面白がる様な三人の会話に文句を言おうとしたけど、よく考えたらどこにも文句を言える要素が無くてちょっと泣きそうになったけど我慢したよ。

「でもまあこれで、相当量のカメレオンエミューとオーストリッチの貴重な羽根とジェムを確保出来たな」

「そうだな。まだ時間はあるしどこへ行くかな」

 三人とシャムエル様が顔を寄せて相談を始める。まあ、行き先は三人に任せておいていいからな。

 スライムウォーターベッドはまだそのままでいてくれたので、俺は大きなため息を吐いてプルンプルンのそこに倒れ込んだ。

「うあああ、今更だけど怖くなってきたよ。あのでかいのに正面切ってガン飛ばされたらめっちゃ怖いって」

 転がりながらそう叫び、もう一度大きなため息を吐く。

「なあ、さっきの俺を吹っ飛ばしてくれたのって誰だったんだ?」

 ベリーとフランマは、別の場所に向かっていて今ここにはいない。猫族軍団は違うし、マックスやシリウスも見える位置にいたから違う。そこまで考えて白くて大きかった事と、蹴られた瞬間の衝撃を思い出して考える。

「あ! ラパン、コニー、もしかしてお前らか?」

 白かったから、多分コニーだと思ってそう尋ねると、予想通り巨大化したコニーが得意げにドヤ顔になった。

「スライム達が受け止めてくれると言うので、遠慮なく蹴っ飛ばさせて頂きました。お怪我も無いようで何よりです」

「おう、おかげで怪我も無いぞ。ありがとうな」

 笑って大きな毛玉をもふもふさせてもらう。

「おお、この柔らかい毛も堪らないな」

 抱きついてもふもふを堪能してから、手を離して立ち上がった。

「お前らもありがとうな。おかげで怪我も無く無事だよ」

 まだくっついていたスライムウォーターベッドをそっと撫でてやる。

「任せてね〜!」

「戦うのは得意じゃないけど、守るのは得意だからね!」

 バレーボールサイズになってポンポンと跳ね回るスライム達を笑って眺めていると、どうやら相談がまとまったみたいでハスフェル達が俺を振り返った。

「それじゃあ、次の場所に移動するぞ」

 早めの夕食にするのかと思っていたけどまだ一働きするみたいだ。

 返事をして側に来てくれたマックスの背に飛び乗り、それを見た従魔達が次々と定位置に収まる。

「それじゃあ行くとするか」

 笑ってそう言い、駆け出したハスフェルの乗るシリウスのすぐ後ろを走りながら、次に出るのは出来ればあんまり危険じゃない相手がいいなあ。なんて呑気に考えていたのだった。

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