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頼もしい仲間達と昼食

「そろそろ次が出るぞ」

 嬉しそうなハスフェルの声に、俺は小さく頷いてミスリルの槍を握り直した。

「じゃあ、確保は私達がしてあげるからね。ご主人はとどめをよろしく」

 巨大化した猫族軍団の先頭にいるニニが、そう言ってゆっくりと前に進み出る。隣にはフォールとソレイユ。タロンも巨大化して一緒に進み出た。

 俺の横ではマックスが、あ、出遅れた。って感じに思いっきりがっかりしててちょっと笑ったよ。



 ゆっくり三回呼吸したところで、また川の真ん中あたりに巨大な島が現れる。



 そう、最初に川の真ん中あたりに見えた小島か中洲だと思ったあれが、そのまま巨大なジェムモンスターだったとはね。せめて5メートルクラスくらいだったら、俺でも何とか……ならないよな。

 あの素早さでは、3メートルでも無理な気がする。いや、気がするじゃなくて絶対無理。

 頭の中で嫌な考えばかりがどんどん膨れていって、正直言ってちょっと泣きそうだ。

 小島がゆっくり動き始めたのを見て、俺は唾を飲み込んで構えた。

 鑑識眼のおかげで、川面ギリギリを滑る様にしてこっちへ向かって来るカメレオンソルティーの姿は見えている。もしこの鑑識眼が無かったら、間違いなく俺は川にこんな巨大なワニがいる事に気付かなかっただろう。

 意識してゆっくりと呼吸をする。



 その時、いきなりニニ達が動いた。



 俺に見えたのは、ものすごい水飛沫と猫族軍団の唸り声。それから何故か羽ばたく音。

 静かになるまでの十数秒間。俺は一歩たりともその場から動く事が出来なかったよ。

「な、何がどうなったんだ?」

 恐る恐る川を見ると、ニニとフォールが二匹がかりで、まだ暴れる巨大なワニを無理矢理押さえつけていた。

「うわあ……デカすぎだろ、あれ」

 思わずそう呟くくらいに、そのワニはデカかった。多分全長20メートルクラス……。

「ほら、ご主人。早く早く! 逃げられちゃうわよ!」

 何故だかドヤ顔のお空部隊が俺を急き立てる。

「おう、了解だ!」

 目標はデカいから狙うのは簡単だ。勢いよく突き出した俺のミスリルの槍は、見事にワニに突き刺さり巨大なジェムとワニ革になった。

 スライム達がジェムとワニ革を回収してくれるのを見て一歩下がる。



 ここはどうやら一匹ずつしか出て来ないらしく、一巡した後も順番に交代しながら戦う事になった。

 二度目でもやっぱり羽ばたく音が聞こえたが、水飛沫で現場を見る事が出来なかった俺は、頑張って三回目にして最初から最後までしっかりと現場を見る事が出来たよ。

 つまり、出てきたワニを猫族軍団が押さえにかかった時、何とお空部隊の新入り三羽が上空から急速降下。そのままワニの目や鼻の辺りをあの巨大な嘴で力いっぱい噛み付いていたのだ。

 ショックで一瞬だけワニの反撃が止む。もうそうなれば後は巨大化したフォールの顎で噛み付かれて一巻の終わり。

 いやあ、うちの子達って相変わらず強いなあ。あはは。

 五周したところで、ようやく出現が止まった。

「どうやら終わったみたいだな。ああ、疲れた。ちょっと休もうぜ」

 ミスリルの槍に縋りながらそう言って三人を振り返る。

「お疲れさん、じゃあ一旦離れようか」

 ハスフェルの言葉を合図に、それぞれの武器を収納した俺達は、従魔に飛び乗ってその場を後にした。



 見晴らしのいい小高い丘の上の草原に到着した俺達は、そこで食事を食べる事にした。

 確かにもう昼食の時間は過ぎてると思う。

「じゃあ、作り置きを出すから適当に食べてくれよな」

 そう言って、大きい方の机の上にパンを色々取り出して並べ、揚げ物やハムカツ、生ハムも取り出して並べておく。

 野菜も適当に並べ、飲み物はいつもの激ウマジュースとコーヒーと豆乳を並べた。

 お皿を並べながら、ちょっと違うものが食べたくなって考える。今から料理をするのは面倒なので、何かあるもので手早く作ろう。ううむ、何かあるかな?

 少し考えて良い事を思いついた。これなら簡単だからすぐに出来そうだ。

 って事で、大鍋に作り置きしてあるカレーを小鍋に適当に取り出して少し温めておく。

 あ、ちょっと多かったかも。余ったらこのまま収納だな。



 サクラに八枚切りサイズに食パンを切ってもらい、俺はトンカツとチキンカツを一枚ずつ取ってきた。後、トマトとおからサラダを別のお皿に取って来る。

 パンにマヨネーズを塗って、温まったカレーの具の無いところを平たいお皿に取り分ける。

「何してるんだ?」

 俺が何か作っているのに気付いて、トンカツを手にしたハスフェル達が寄って来る。

「いやあ、カレーカツサンドを作ってみようかと」

 このカレーも何度か火を入れているので、最初に作った時よりもやや固めになっている。

「このカレーをソースにしてトンカツを挟んだらどうなるか、試しにやってみようと思ってさ」

 そう言いながら、とんかつをカレーの中に沈み込ませる。

 裏返してしっかりとカレーを染み込ませたトンカツを、さっきの食パンに乗せてもう一枚を重ねる。

「チキンカツでも作るぞ」

 そう言ってお皿の残りのカレーをしっかりとチキンカツに染み込ませた。

「美味そうだな。挟むだけなら俺でも出来そうだ」

 ハスフェル達がそう言うので、小鍋に残ったカレーに追加してもう一度温めてやる。

「おお、美味そうじゃん」

 半分に切ったカレーカツサンドと、カレーチキンカツサンドは確かに美味しそうだ。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ!じゃジャジャン!」

 尻尾を膨らませたシャムエル様が、大興奮しながら味見ダンスを踊っている。

 今日のダンスは、両手に持ったお皿を左右に突き出す様にしながら下半身は何やら複雑なステップを踏んでいる。

「は、や、く! は、や、く! は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っやく!」

 一瞬で俺の右肩にワープして来たシャムエル様は、俺の頬にお皿をガンガン押し付けながら早く早くと急き立てる。

「分かった分かった。痛いから皿で押すなって」

 なんとかお皿を取り上げて、シャムエル様は机の上に戻してやる。

「飲み物取って来るからちょっと待っててくれ」

 今にもサンドイッチに突撃しそうなシャムエル様を引き止めて、真顔でそう言ってやる。

「いつもの混ぜジュースお願いします!」

 と言いつつ何故か蕎麦ちょこは二つ出ている。

 苦笑いした俺は、グラスに激ウマリンゴジュースとぶどうジュースを混ぜて入れ、マイカップにホットコーヒーと豆乳を注ぐ。

 カレーだと口の中が辛くなりそうだから、豆乳オーレで中和しよう作戦だ。



「お願いします!」

 目を輝かせて差し出す蕎麦ちょこに、俺のグラスから混ぜジュースを注いでやる。

 もう一方には豆乳オーレを入れてやったが、やっぱり入る量がどう見てもおかしい気がするんだけどなあ……。

 もう一回自分用の飲み物を取りに行き、自分のお皿をスライム達が用意してくれていた簡易祭壇にカレーサンドと一緒に並べる。

「新作のカツカレーサンドだよ。トンカツとチキンカツの二種類で作って見ました。少しですがどうぞ」

 小さくそう呟いて手を合わせる。

 いつもの収めの手が俺の頭を撫でてから、カツサンドと飲み物、サイドメニューも順番に撫でてから消えていった。

「さあお待たせ!」

 置いてあったシャムエル様用のお皿に、それぞれ真ん中の部分を一切れずつ切って並べてやる。横にサイドメニューも並べておく。

「こっちがトンカツで、こっちがチキンカツな。好きな方からどうぞ」

「うわぁい! 美味しそう! いっただっきま〜す!」

 そう言うと、まずはトンカツの方にやっぱり顔から飛びついて行った。

「相変わらず、豪快に行くなあ」

 笑いながら俺も自分の分に齧り付いた。

「お、やっぱりいけるな。よし、これも今度たっぷり作っておこう。疲れた時とか、がっつり食べたいときに良さそうだ」

 見ると、ハスフェル達もそれぞれにいろんなカツを好きに挟んで食べている。

「カレー味も好評みたいだから、ドライカレーもまた作っておこう。あ、ホットドッグにトッピングしても美味そうだな」

 俺の呟きに、シャムエル様をはじめ全員の目が輝いたのだが、その時の俺は自分の分を食べるのに夢中で三人とシャムエル様が目配せをしていた事に気がついていなかったのだった。

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