表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
493/2067

朝食と今日の予定の相談

 いつものように、ニニとマックスの隙間のもふもふパラダイス空間に潜り込んでぐっすり眠った俺は、いつものモーニングコールチームに新たなメンバーを加えた新モーニングコールチームに起こされたのだった。


 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

 チクチクチク……。

「うん、おはよう……」

 いつもの如く無意識で返事をした直後、違和感を感じてうっすらと目を開く。



「相変わらず起きないねえ」

 呆れたようなシャムエル様の声が耳元で聞こえる。すみませんねえ、俺の朝が弱いのは、マジで筋金入りなんっすよ。

「じゃあ、起こしますか?」

「いつもみたいに、私達がやってもいいけど、せっかくだからもう一回やってみれば?」

「そうですね。じゃあ頑張ってみます」

 何やら不穏な相談が漏れ聞こえて来て、俺は慌てて起きようとした。でもまあ、無理だったのは当然だよな。

 マジで眠かったし。



 二度寝の海に沈みかけたその時、いきなり横向きに寝ていた俺の頬に、何かが突き刺さった。

「痛ってぇ〜!」

 頬を押さえて飛び起きる。

「ご主人起きた〜!」

 いっそ場違いなほどのんびりとしたエリーの声が聞こえて、俺はちょっと気が遠くなったよ。

 左の頬を押さえている手を怖くて離せない。血塗れになってたらどうしよう??

「ええと、今、何が起こった?」

 恐る恐るそう尋ねると、膝の上によじ登って来たエリーが嬉しそうに後ろ足で立ち上がった。

「こうやって、寝坊助なご主人を起こしてあげたんですよ」

 そして背中の針を俺に見せて軽く丸まった。

 その瞬間、俺の膝に激痛が走った。

「痛ってぇ〜!」

 慌てて頬を押さえていた手を離して膝を押さえる。

「ば、ば、万能薬〜……あれ?」

 だけど痛かったのは一瞬だけで、膝から血が吹き出したり滲んだりする様子は全く無い。

「はい、どうぞ。でも何に使うの?」

 右膝に飛び乗って来たサクラが、不思議そうに万能薬の入った瓶を取り出してくれる。

「いや、ええと。あれ? 全然痛く無いぞ?」

 もう一度頬を押さえて首を傾げる。針が突き刺さっていたはずの頬も左足も全然痛くも何とも無い。もちろんん血塗れにもなってない。

「ご主人に怪我なんてさせませんよ。ちゃんと針の先は丸くして突っついてますから」

 ドヤ顔のエリーの言葉に俺は驚いて、万能薬をサクラに返してエリーを抱き上げた。

「い、今のもう一回やってくれる? ああ! あんなにブッ刺さずにちょっとだけな」

 掌に乗せたエリーにそう言うと、エリーはやっぱり丸くなって、背中の一番お尻側にあるちょうど下を向いた針を、何と一本だけ伸ばして俺の手を突き刺したのだ。

 しかも、俺がお願いした通りにちょっとだけチクって感じに。

「おお、凄えな。針を一本だけ伸ばすなんて事出来るんだ」

 感心したようにそう言うと、またちょっとドヤ顔になった。

「これは危険を感じた時に勝手に出る仕組みなんです。ですがご主人にテイムしてただいたおかげで、自分で色んな事を考えられるようになって、気が付いたらこれが出来るようになっていました」

 不思議に思ってシャムエル様を見ると、うんうん、って感じに嬉しそうに何度も頷いている。

「これは、飛び地の子限定の能力だよ。だけどエリーちゃんはいきなり使い熟しててびっくりだったね」

 神様に感心したように言われて、苦笑いするしかなかった。

「そっか! うちの子達は皆優秀だもんな〜!」

 笑ってトゲに気をつけながらエリーを撫でてやり、そっと下ろしてやる。

 犬くらいのサイズになって、足元をのそのそと歩いている針山を見てちょっと笑ったよ。

 ううん、だけどエリーがいるだけで、何だかここの防御力が上がった気がするな。



「おはようさん、開けるぞ」

 外から声がして、返事をするとハスフェルがテントの垂れ幕を巻き上げてくれた。

「おはよう。じゃあ飯にするか」

 朝はいつものサンドイッチ色々とコーヒーと、激うまジュースだ。

 外を見ると、もうランドルさん達のテントが無くなっていた。

「かなり前に、そそくさと片付けていなくなったぞ。多分、ヘラクレスオオカブトのところへ行ったんだろうさ。まあ、あれが出ると聞いて黙ってる冒険者はいないよ」

「確かにそうだな。頑張って集めてるんだろうな」

 タマゴサンドの横で自己主張しているシャムエル様の尻尾を突っつき、タマゴサンドと野菜サンド、それからちょっと考えてチキンカツサンドをとった俺は、マイカップにコーヒー、ハスフェルから貰ったグラスにリンゴとぶどうのジュースを混ぜて入れた。いつもよりちょっとぶどうを多めに入れてみる。

 席につくと、お皿を持ったシャムエル様が飛び跳ねている。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 今日は片足で見事に回転して見せて、最後はいつものドヤ顔ポーズだ。

「はいはい、今日も格好良いぞ」

 笑ってもふもふ尻尾を突っついてから、タマゴサンドの端を切り取り玉子の入った部分を丸ごと渡してやる。

 俺は残った耳の部分をジャムで食うよ。

「こっちは?」

「もちろんお願い!」

 当然のようにそう言われて、苦笑いしつつ野菜サンドとチキンカツサンドも真ん中の部分を切ってやる。

「飲み物は?」

「ジュース!」

 嬉しそうにそう言って蕎麦ちょこを出されて、そこにたっぷりと入れてやる。

 うん、もう一杯入れてこよう。

 しばらく各自黙々と自分の分を食べた。

 シャムエル様は、分厚いタマゴサンドを嬉々として齧ってる。

 俺は先にジュースを飲み干しておかわりを入れに行ったよ。




「それで、今日はどこへ行くんだ?」

 サンドイッチを食べ終え、ゆっくりとコーヒーを飲みながら三人を振り返る。

「カメレオンソルティが出ると聞いたので、そこへ行くつもりだったんだが、ランドルから良い話を聞いたんでな、どちらから行くべきか考えてるんだ」

 ハスフェルがそう言って、昨日書いていた地図を取り出して机に広げた。シャムエル様までが立ち上がって地図を覗き込んでる。俺も身を乗り出すようにして手書きの地図を覗き込んだ。

「今いる場所がここ、昨日行ってた巨大な一枚岩があった場所がここ、ファイヤーフライが出た川がここで、ヘラクレスオオカブトが出た場所がここだ」

 地図を見ながら何度も頷く。確かにこの飛び地は広いよ。

「そしてここが最終目的地のリンゴとぶどうの成る場所だ」

 笑ったギイが手を伸ばしてリンゴとぶどう、と書かれた場所を指差す。

「約束の半月後まであと七日。集められるだけ集めるからな」

 にんまりと笑うハスフェル達三人を見る。その意見には俺も同意しかないけど、結局今日はどこへ行くんだ?



「ええと、そのランドルさんから聞いた良い話って何だよ?」

 って事で、最初の話題に戻る。

「ランドルがテイムしていたピンクの鳥だけど、お前もテイムするのか?」

「ああ、そのつもりだよ。従魔達も増えて来たし、ベリーは自力で飛べるけど、時々一緒にファルコに乗る事もあるからさ。出来ればもう一羽くらい翼のある子がいても良いかと思ったんだ。ファルコとプティラに聞いてみたら、翼のある仲間が増えるのは嬉しいって言ってくれたから、テイムするつもりだよ」

 すると、三人はにんまりと笑った。

「ランドルによると、あのピンクの鳥をテイムした場所は、いろんな色の鳥達が出る場所らしい、色の付いた鳥の羽根も細工物として使えるからな。出来れば集めておきたい」

「なるほど、クーヘンに渡せる素材って訳か」

 納得していると、ハスフェル達が揃って俺を見ている。

「俺達も鳥の従魔が欲しいです!」

 その言葉を聞いた俺は、堪える間も無く吹き出した。

「おう、構わないぞ。テイムの上限以内なら好きなのをテイムしてやるぞ」

 さすがにもう一回心臓が止まりかけるのは勘弁してもらいたい。

 腕を組んでそう言ってやると、三人揃って吹き出し、俺達全員揃って大爆笑になったのだった。

 って事で相談の結果、先に鳥達のいる場所へ向かう事にした。それで時間があればその後にカメレオンソルティのいる場所へ、時間が無ければ明日、行くことになった。

 相談が済んだところで、ハスフェル達はテントを片付けるためにそれぞれのテントへ戻って行った。

 俺は寄って来た従魔達を順番に撫でたり揉んだりしてやる。

「じゃあ、俺もテントを片付けて出発だな。さて、今日はどんな子が仲間になるんだろうな」

 最後に、マックスの大きな首に抱きついてから、まずは机と椅子を片付ける事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ